中高生

五大栄養素を、食べやすい調理法の知識でバランスよく食べよう!

食べ物の好き嫌いがあっても、今、成長期である中高生にはできるだけバランスのよい食事を摂ってほしいもの。
そのためにはまず、栄養の基本である「五大栄養素」を知りましょう。これを知れば、嫌いな食べ物を他の物に置き換えることができます。また、苦手食材を食べやすくする調理の工夫を覚えておくのもひとつ。好き嫌い克服に役立ちます。

まずは栄養の基本、「五大栄養素」について知っておこう

人間に必要な栄養素はたくさんありますが、体内での働きが似ているものをまとめると、大きくは「炭水化物・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラル」の5つに分類できます。これを「五大栄養素」と言い、それぞれに大切な役割があります。五大栄養素は相互に関連し合いながら体内で働き、私たちの健康を維持してくれています。五大栄養素を組み合わせて摂ることが、食事のバランスを整えるポイントです。

●五大栄養素の特徴と多く含む食品


①炭水化物

炭水化物は、体の主要なエネルギー源となる糖質(1g当たり約4kcalのエネルギーをもつ)と、消化はされないけれど、様々な有用な働きをしてくれる食物繊維で構成されています。糖質が分解されてできるブドウ糖は、脳のエネルギー源。炭水化物は人の体内では合成することができないので、食事で摂るしかありません。食事によるエネルギー摂取量の60%以上は、炭水化物から摂取するのが望ましいとされています。
【多く含まれる食品】穀類(ご飯、めん、パン)、イモ類、豆、果物、砂糖など。


②脂質

脂質は、炭水化物よりも効率のよいエネルギー源(1g当たり約9kcalのエネルギーをもつ)で、使われなかったエネルギーは中性脂肪(体脂肪)として体内に貯蔵されます。そのため摂り過ぎには要注意ですが、ホルモンや細胞膜などを構成したり、ビタミンA、D、Eなど脂溶性ビタミンの吸収を助けたりする役割もあるので、極度に控えるのはよくありません。適度な摂取が大切です。
【多く含まれる食品】植物油、魚油、バター、ラード、牛脂、ナッツ類、脂身の多い肉や魚など。


③タンパク質

タンパク質は筋肉や臓器・肌・髪・爪など、体の様々な部分を構成する主成分です。また、ホルモンや酵素などの材料となり、体の機能を調整する重要な役割もあります。さらには、全身への栄養素の運搬や貯蔵、細胞間の情報を伝達するなど、生命の維持に欠かせない重要な働きもあります。
ちなみに、タンパク質は20種類のアミノ酸から構成されますが、そのうち9種類は、体内で合成することはできないので、食事から摂るしかありません。だからこれを「必須アミノ酸」と言います。
【多く含まれる食品】肉、魚介、大豆・大豆製品、卵、牛乳・乳製品など。


④ビタミン

ビタミンは、体内でエネルギーを産生する様々な化学反応をサポートし、体の機能を維持・調節するために欠かせない栄養素です。体に不可欠なビタミンは13種類あり、脂溶性と水溶性に分かれます。種類によっては、体内で合成できないものや、合成できても充分な量を作れるとは限りません。また、摂る量が不足すると欠乏症を起こす場合もあります。
【多く含まれる食品】野菜、果物全般。


⑤ミネラル

ミネラルは体の構成成分になったり、機能を調節したりする微量栄養素で、単一の元素であるのが特徴です。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で基準設定されているミネラルは、カルシウムやマグネシウム、鉄など重要な働きをする13種類があり、体内では合成できないため食品から摂る必要があります。
【多く含まれる食品】牛乳・乳製品、海藻、大豆・大豆製品、小魚、レバーなど。

炭水化物と脂質は「エネルギー源となる栄養素」、タンパク質は「体をつくる栄養素」、ビタミンとミネラルは「体の調子を整える栄養素」とグループ分けすることができますが、栄養素は単独ではなく共同で働きます。例えば炭水化物を摂っても、ビタミンB1がなければエネルギーに変換することはできません。このように1つでも足りない栄養素があると、体の中でうまく働くことができないので、五大栄養素を意識してバランスよく摂ることが大切なのです。

気づかぬうちに偏食に?「新型栄養失調」にご用心

今、摂取カロリーは足りているのに、タンパク質やビタミン、ミネラルなどの栄養素が足りない「新型栄養失調」が大きな問題になっています。炭水化物や脂質に偏った食事を摂っていたり、ダイエットなどで食事量そのものが少なかったりすることで、必要な栄養素が不足し、体の不調につながっているのです。

特に中高生が注意したいのがファストフードによる栄養の偏り。ファストフードは野菜が少ないものが多いので、ビタミンやミネラルが不足しがちです。サイドメニューでサラダを選んだり、お昼にファストフードを食べた日は、夜に野菜をたっぷり摂ったりするなど、意識して調整していきましょう。

また、学校給食のない高校生はカルシウム不足も心配です。学校給食は、1日のカルシウム摂取推奨量の50%が摂れる基準(※)でつくられており、給食に必ずついていた牛乳を飲む機会がなくなるだけでも、高校生のカルシウム量はかなり不足してしまいます。お弁当を食べる時は、牛乳を買ってプラスするなど、意識的に飲むようにしましょう。(※)文部科学省 学校給食における児童生徒の食事摂取基準策定に関する調査研究協力者会議(令和2年12月)「学校給食摂取基準の策定について(報告)」

さらに部活動などでスポーツをしている人は、タンパク質をはじめ、炭水化物や脂質などのエネルギー源がたくさん必要となりますが、同時に、炭水化物をエネルギーに変えるビタミンB1、タンパク質をエネルギーに変えるビタミンB6も必要です。ビタミンB1は豚肉などに多く、ビタミンB6は赤身の肉や魚に多く含まれています。

栄養としては必要でも、嫌いな食べ物も……。そんな時はどうする?

栄養素の大切さは分かるけれど、嫌いな物は食べられない……。そんな時は、必要な栄養素を別の食品から摂り、栄養の偏りを防いでいきましょう。

例えば、ビタミンCやβ-カロテンが豊富なピーマン。ピーマンの苦味が苦手な人は、苦味の少ないパプリカから、これらの栄養素を摂ることもできます。ビタミンCの含有量は、ピーマンが100g当たり76mgであるのに対してパプリカは170mg。β-カロテン含有量は、ピーマンが400μgに対してパプリカは940μgも含まれています。

また、ミネラルの一種である鉄分が豊富なレバー。レバーが苦手な人は、赤身のお肉や魚など、他にも鉄分が豊富な食品を覚えておけば、それらの食品から鉄分を摂ることができます。

このように、五大栄養素の分類と豊富に含む食品を覚えておくと、食べ物の好き嫌いがあっても、必要な栄養素を過不足なく摂りやすくなります。

好き嫌いは、調理の工夫で乗り越えよう

もちろん、食べ物の好き嫌いはなるべく少ないほうがよいことは確かです。苦手な食品を克服したい時は、その素材に「旨味をプラスする」ということを覚えておくと、調理のヒントになります。代表的な旨味とは、昆布やチーズ、醤油、味噌、塩麹などに含まれるグルタミン酸、かつお節に含まれるイノシン酸など、いわゆる「だし」となるような成分のこと。

例えば、ほうれん草の苦味やえぐみが苦手な場合、濃いめのだしでお浸しにし、仕上げにかつお節をたっぷり加えることで旨味がプラスされてまろやかになります。同様に、苦みのある夏野菜の代表のゴーヤも、ゴーヤチャンプルーにすればイノシン酸が豊富な豚肉とかつお節が苦味を抑えてくれるのです。

生のトマトが嫌いな人は、トマトソースにすれば旨味が増して食べやすくなります。さらにチーズを合わせるのもおすすめです。他にもセロリの独特の香りと味が苦手な人の場合は、塩昆布とごま油であえると食べやすくなります。

このように、旨味が複雑な味の深みをもたらし、素材の苦味やえぐみを中和してくれるのです。

栄養素は、どれが欠けても体の調子を崩してしまう大切な物です。五大栄養素を知ってうまく活用し、調理の工夫で栄養素をバランスよく摂っていきましょう。

監修 舘野真知子先生 たての・まちこ 料理研究家・管理栄養士

舘野真知子先生 近影

栃木で8代続く専業農家に生まれる。
管理栄養士として病院に勤務後、2001年アイルランドの料理学校「Ballymaloe Cookery School」に留学し料理を学ぶ。校長ダリーナ・アレンに影響を受け、生産者を尊重すること、素材を生かす料理をすることをモットーにしている。
帰国後はフードコーディネーターとしてメディアなどで活動した後、レストラン「六本木農園」の初代シェフを務め、現在はフリーランスの料理家として発酵料理をキーワードに、料理の楽しさや食べることの大切さを栄養・料理・文化を通して伝える活動をしている。
また国際交流にも積極的に参加し外国人向け料理教室Kitchen Nipponにて講師を務める。2015年にはイタリア・ミラノで開催されたPeace Kitchenが実施した和食をつたえる料理教室のカリキュラム作成、講師を担当。
『からだに効く! おいしく食べる あま酒レシピ』(東邦出版)等、著書多数。

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