中高生

集中力に影響が大きい「朝ごはん」! 中高生必見です!

毎日しっかり朝ごはんを食べていますか? 中高生の皆さんの中には毎日勉強や部活動などで忙しく、朝はなかなか起きられずに、朝ごはんを抜いてそのまま学校へ行く人もいるかもしれません。けれども、朝ごはんは学力とも関係があることが文部科学省の調査で明らかになっています。勉強の集中力をアップさせるためにも、朝ごはんはしっかり食べましょう。

朝ごはんは学力と関係あるの?

文部科学省が日本全国の小学6年生と中学3年生全員を対象に行っている「全国学力・学習状況調査」によると、朝食を食べている生徒(中学3年生)は、食べていない生徒に比べて学力調査の平均正答率が高いことが分かりました。

2019年度(令和元年度)の中学3年生の学力調査の正答率と朝食の摂取状況を分析した結果が上のグラフです。国語の平均正答率で比較すると、「毎日食べている」と答えた生徒と「全く食べていない」という生徒では、正答率に14.2%も差が出ました。さらに、数学や英語のグラフに顕著なように、「毎日食べている」と答えた生徒は突出して正答率が高くなっています。朝ごはんを食べたり食べなかったりするのではなく、毎日食べることが大切です。

脳はエネルギーをたくさん使う臓器です。脳の重さは体重の2%ほどしかありませんが、全身で使うエネルギーのうちの18~20%も消費します。脳の主なエネルギー源はブドウ糖ですが、夕食を食べてから睡眠中も脳は働き続けます。10時間近く経過した朝には、ブドウ糖も消費されて脳は“空腹状態”。つまりエネルギー欠乏状態なので、午前中の学習にも影響が出てしまいます。朝ごはんを食べて、脳にしっかりと栄養を補給しましょう。

朝ごはんは、炭水化物+ビタミンB群で脳を活性化

脳を朝から活性化させるためには、どのような栄養を朝ごはんで摂ればよいのでしょうか? 脳の主なエネルギーであるブドウ糖は、ご飯やパンなどの炭水化物や果物に多く含まれています。しかし、炭水化物が分解されて脳のエネルギーとなるためには、酵素による代謝が不可欠です。ビタミンB1を始めとしたビタミンB群は、このエネルギー代謝を進める酵素を助けます。朝食では炭水化物と一緒に、ビタミンB群も摂るようにしましょう。

<代表的なビタミンB群の働きと多く含まれる食品>

●ビタミンB1

・主な働き……炭水化物をエネルギーに変える酵素の働きを助ける重要なビタミンで、脳の栄養補給には不可欠。
・主な食品……豚肉、ウナギ、タイ、玄米、全粒粉(強力粉)、カシューナッツ、ピスタチオ、えのきたけ、えんどう豆など。

●ビタミンB2

・主な働き……3大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)の代謝にかかわっているビタミンで、体の発育を助ける。
・主な食品……レバー(豚・牛・鶏)、チーズ、卵、ウナギ、サバ、ブリ、納豆、アーモンド、モロヘイヤ、菜の花、豆苗など。

●ビタミンB6

・主な働き……タンパク質の代謝にかかわり、脳の神経伝達物質をつくるために必要。不足すると集中力が低下する。
・主な食品……マグロ、カツオ、イワシ、サケ、サバ、牛レバー、鶏ささみ、にんにく、パプリカ、モロヘイヤ、ピスタチオ、くるみ、玄米など。

バランスのよい朝ごはんが集中力を持続させる!

炭水化物のご飯やパンを中心に、ビタミンB群を加えた「集中力アップ朝ごはん」のアイデアをご飯派・パン派に合わせてご紹介しましょう。

朝ごはん「ご飯派」におすすめの集中力アップ食材

ご飯は粒状なので、消化吸収に時間がかかるため腹持ちがよく、集中力のアップと維持におすすめの主食です。朝ごはんは「和食派」の人が、さらに集中力をアップさせる工夫として、以下のメニューや食材も加えてみましょう。

  • 玄米……白米を玄米に変えるだけでもビタミンB群の摂取量が増やせる。また、食物繊維も多いため腹持ちがよくなる。
  • みそ汁……野菜など様々な具材を入れられるので栄養バランスが高まり、腹持ちもよくなる。体温アップにも。
  • 豚肉……ビタミンB1が豊富な豚肉。肉巻きおにぎりにしたり、豚肉のそぼろをご飯にかけたりするのもおすすめ。
  • 納豆……豆類の糖は血糖値が上がりにくい。また、腸内の善玉菌を増やすことができる。腸と脳は密接に関連しているので、腸を元気にしておくことも脳にとっては大切。
  • 漬物……野菜の食物繊維がたくさん摂れ、発酵食品なので腸内の善玉菌も増やせる。
  • 果物……果糖は消化吸収が早いが、果物には食物繊維も入っており消化吸収が穏やかになる。ビタミンCは骨の成長に欠かせない。

朝ごはん「パン派」におすすめの集中力アップ食材

パンは簡単に食べられるので朝食に取り入れやすいですが、おかずが少なくなりがちで、栄養が偏りやすくなるので注意しましょう。朝ごはんが「パン派」の人は、ご飯ほど腹持ちがしないので、タンパク質や食物繊維などを加えて品数を増やすことを心がけてみましょう。以下のメニューや食材を加えるのもおすすめです。

  • 全粒粉のパン……パンを全粒粉に変えるだけで、ビタミンB群の摂取量がアップ。
  • ハムエッグ……良質なタンパク質が摂れる。また、ハムはビタミンB1が摂れる。
  • ヨーグルト……腸内環境を整えることで、腸と関連がある脳も元気に。
  • 牛乳、チーズ、サラダチキン……手軽で栄養価が高く、一品加えるだけでタンパク質が増え、バランスがよくなる。
  • ナッツ入りサラダ……野菜で食物繊維やビタミン・ミネラルをアップ。カシューナッツなどのナッツ類を加えるとビタミンB1も摂れる。ミックスナッツなどを利用すると手軽。
  • スープ……キャベツと豚肉やハムのスープは、食物繊維とビタミンB1が摂れておすすめ。

ブドウ糖が摂れるなら、お菓子やジュースを朝ごはんにしてもいいの?

「脳のことを考えれば、ブドウ糖が入った甘いお菓子やジュースを朝ごはんにするのが最も効率的なのでは?」と思われるかもしれません。しかし、ここで問題になるのが「血糖値(血液中を流れるブドウ糖の量)」です。お菓子やジュースに含まれるブドウ糖や果糖ブドウ糖液糖などは消化吸収が早いので、血糖値が急激に上昇し、30分~1時間程度でピークに達します。すると血糖値を下げるホルモンのインスリンが働き、今度は急激に血糖値が低下してしまいます。

つまり、ブドウ糖が入った甘いお菓子やジュースを朝食代わりにしても、その後、急激に血糖値が下がるので、登校して授業が始まる頃にはすでに血糖値が低く、糖が足りない状態になって集中力が低下してしまうのです。このようにジェットコースターのような血糖値の乱高下が続くと、集中力の低下や眠気、イライラなどが起こりやすいことが分かっています。このように、朝ごはんは何でもいいわけではなく、集中力アップのためにはどんなものを食べるかも大切になってくるのです。

血糖値の乱高下を防ぐ糖質で、集中力が持続!

糖質には、大きく分けて「単糖類」「二糖類」「多糖類」があります。これは分子構造の違いで、最もシンプルな形が単糖類です。単糖類が2個結合すると二糖類、11個以上結合すると多糖類になります。食べた糖は、最終的に最小単位の単糖類にまで分解されて小腸から吸収されるので、構造が単純なほど消化吸収が早く、複雑なほどゆっくりになります。

つまり、穏やかに血糖値を上げて、穏やかに下げてくれるので、集中力を切らさずに午前中の授業を受けることができます。また、食物繊維やタンパク質など、消化に時間のかかる物と組み合わせることでも血糖値の上昇速度は緩やかになります。多糖類であるご飯やパンを中心に、食物繊維やタンパク質などを組み合わせたバランスのとれた朝食が、集中力をアップし、持続させてくれる朝ごはんだといえるでしょう。

バランスのよい「集中力アップ朝ごはん」を毎日食べて、勉強や運動をがんばっていきましょう。

監修 舘野真知子先生 たての・まちこ 料理研究家・管理栄養士

舘野真知子先生 近影

栃木で8代続く専業農家に生まれる。
管理栄養士として病院に勤務後、2001年アイルランドの料理学校「Ballymaloe Cookery School」に留学し料理を学ぶ。校長ダリーナ・アレンに影響を受け、生産者を尊重すること、素材を生かす料理をすることをモットーにしている。
帰国後はフードコーディネーターとしてメディアなどで活動した後、レストラン「六本木農園」の初代シェフを務め、現在はフリーランスの料理家として発酵料理をキーワードに、料理の楽しさや食べることの大切さを栄養・料理・文化を通して伝える活動をしている。
また国際交流にも積極的に参加し外国人向け料理教室Kitchen Nipponにて講師を務める。2015年にはイタリア・ミラノで開催されたPeace Kitchenが実施した和食をつたえる料理教室のカリキュラム作成、講師を担当。
『からだに効く! おいしく食べる あま酒レシピ』(東邦出版)等、著書多数。

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