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貧血解消の強い味方!ビタミンCやタンパク質が鉄分の吸収率を上げる

月経がある女性の半数以上が、貧血あるいは貧血予備群といわれるほど、貧血は身近な病気です。まず、そもそも貧血とは何かを確認しましょう。
そして、貧血と深いかかわりのある鉄分ですが、日本人の多くが十分な量を摂れていません。体内に吸収されにくい鉄を効率よく摂取するためのポイントをご紹介します。

実はそれ、貧血かも!? こんな症状はありませんか

貧血とは、全身に酸素を運んでいる血液中のヘモグロビンがうまくつくれなくなり、体が酸素不足になる病気です。貧血の症状は多岐にわたりますが、主な症状には、「顔色が悪くなる」「爪が変形する」「息切れ・動悸がする」「めまいがする」「疲れがとれない・全身がだるい」などが挙げられます。また、鉄は皮膚のコラーゲン線維の生成にも必要なミネラルのため、鉄が不足すると肌荒れなども起こしやすくなります。貧血の症状について詳しく見ていきましょう。

①貧血の主な症状:顔色が悪くなる

ヘモグロビンは赤血球に含まれている赤い色素。貧血でヘモグロビンがつくられなくなると、皮膚や粘膜の赤味がなくなり、黄色っぽいくすんだような顔色になる。また、まぶたの粘膜も赤味がなくなり、白っぽくなる。


②貧血の主な症状:爪が変形する

貧血になると、爪が割れやすかったり、爪の表面が凸凹してきたりする。さらにひどくなると、爪がスプーンのように反り返る「さじ状爪」の症状が現れる場合も。


③貧血の主な症状:息切れ・動悸がする

体中に酸素を運んでいるヘモグロビンが不足すると、足りなくなった酸素を体に取り入れようとして息切れや動悸などの症状が現れる。


④貧血の主な症状:めまいがする

貧血によって脳に酸素が十分行き届かなくなると脳は酸素不足を起こし、脳のエネルギー源であるブドウ糖をうまくエネルギーに変換できなくなってしまい、めまいや頭痛などの症状が起きる。


⑤貧血の主な症状:疲れがとれない・全身がだるい

貧血によって筋肉に酸素が十分に行き届かなくなると、筋肉が酸欠状態となり、疲れがなかなかとれなかったり、全身のだるさが生じたりする。

貧血の多くは「鉄欠乏性貧血」。鉄分不足です

貧血には様々な種類があり、骨髄中の造血幹細胞が障害されて起こる「再生不良性貧血」、ビタミンB12や葉酸が不足して起こる「巨赤芽球性貧血」などもありますが、貧血の多くは、体内の鉄が不足することで起こる「鉄欠乏性貧血」です。鉄は赤血球中のヘモグロビンの中心となる成分で、鉄が不足するとヘモグロビンがうまくつくれなくなり、体の酸素欠乏を招きます。

鉄欠乏性貧血は、月経によって毎月、血液を失う女性に起こりやすく、初経から閉経までの期間の女性は、半数以上が貧血、あるいは貧血予備群とも言われています。

鉄欠乏性貧血の原因としては、次のようなものが挙げられます。

■鉄欠乏性貧血の原因


①月経・妊娠・分娩・授乳

女性は、月経による出血で鉄分が不足しがちです。妊娠中は血流量が増加し、自身と胎児に必要な鉄分、分娩時の出血によるもの、授乳期は血液から母乳が作られるため鉄分が不足しがちです。妊婦が貧血の場合、赤ちゃんが低体重児として産まれてしまったり、早産になったりする可能性があるとされています。


②偏った食習慣

ダイエットなどで食生活が偏っていると、鉄はもちろん、赤血球をつくるのに必要なタンパク質、ビタミンB群、鉄の吸収をサポートするビタミンCなども不足しやすくなります。ファストフードなどに偏った食生活でも、鉄や、鉄の吸収を助けるビタミンCなどが不足しやすく、貧血の原因に。


③過多月経、子宮筋腫、痔などの病気

過多月経の人は、鉄の補充が追いつかなくなってしまいます。また、子宮筋腫や痔があると少量の出血が長く続くため、鉄不足に陥りやすいです。


④運動

運動している女性ほど鉄欠乏性貧血に注意をする必要があります。運動すると汗と共に鉄が排出されます。また、運動すると末梢組織の酸素需要が増加し、酸素を運ぶヘモグロビンの消費が増加します。このような理由で、激しい運動を日常的にしている人は鉄が欠乏しやすく、鉄欠乏性貧血になりやすいと言えます。

ヘモグロビンが正常でも注意したい、「隠れ貧血」とは?

貧血かそうでないかは、一般的に血液検査のヘモグロビン濃度でチェックできます。しかし、ヘモグロビンが正常値であっても、貯蔵鉄の「フェリチン」が不足していると、「隠れ貧血(潜在性鉄欠乏性貧血)」の可能性があります。フェリチンはタンパク質の一種で、血液中の鉄が不足しないように補給をする役割があるため、このフェリチンの値が低いと蓄えている鉄が不足していることになり、そのまま鉄を補わないでいると鉄欠乏性貧血につながってしまいます。健康診断などの血液検査ではフェリチンの値を測ることは少ないので、気になる人はかかりつけ医などに相談してみるとよいでしょう。

鉄分が多い食べ物は?「ヘム鉄」「非ヘム鉄」の違いも知ろう

鉄欠乏性貧血の解消には、鉄分の摂取が欠かせません。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1日あたりの鉄の推奨量は、成人男性(30~74歳)7.5mg、月経のある成人女性(18~64歳)10.5~11.0mg(月経なし6.5mg)とされています。妊娠や授乳期にはこの基準よりもさらに多くの鉄が必要になります。鉄分は一度に大量に摂るのではなく、食事を通して毎日コツコツと摂取することが必要です。

鉄には、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があり、ヘム鉄は、貧血対策の代表的な食品であるレバーをはじめ、赤身の肉や魚などの動物性食品に多く含まれています。一方、非ヘム鉄はほうれん草などの青菜、ごま、海藻、穀類など植物性食品に多く含まれています。ヘム鉄のほうが体内で効率よく吸収できるという特徴があるため、鉄不足解消には、ヘム鉄が多く含まれる赤身の肉や魚を積極的に摂取するとよいでしょう。非ヘム鉄の場合は、一緒に食べる物によって吸収率を高めることができます。次の項を参考にしてください。

ビタミンCとタンパク質は、鉄分吸収率アップの強い味方

非ヘム鉄の体内への吸収率を高めるためには、他の栄養素を組み合わせるのがポイントです。次のような栄養素をプラスしてメニューを考えましょう。

【+ビタミンC】

非ヘム鉄はビタミンCと一緒に摂ると体内に吸収されやすくなります。ただし、ビタミンCは加熱すると失われやすいので、いちご、グレープフルーツ、キウイフルーツなど生で食べられる果物を食後のデザートなどにプラスするか、じゃがいもやピーマンなど加熱してもビタミンCが壊れにくい食品を組み合わせるとよいでしょう。


【+タンパク質】

動物性タンパク質(肉類・魚介類・牛乳や乳製品)と一緒に摂ると、鉄の吸収率が高まります。特に赤身の肉や魚は、タンパク質と鉄が一緒に摂取できるので貧血の予防・改善におすすめです。

鉄は食品だけでなく、鉄製のフライパンで調理することでも摂取できるので、調理器具などを工夫してみるのも一案です。

ちなみに、せっかく摂った鉄も、胃腸の働きが悪ければ体内に吸収することができません。胃腸への負担を和らげるためにも、食事はよくかんで食べることが大切です。タンニンを多く含む緑茶や紅茶、コ-ヒ-などは、鉄と結合して鉄の吸収を悪くすると言われています。通常は問題ないですが、貧血気味の人は食事中に飲むのは避けるようにしましょう。

鉄欠乏性貧血の予防・改善は、毎日の食事から。鉄分が多い食品や、鉄分の吸収率を高める食品を意識して摂るようにしましょう。

監修 田中 明先生 たなか・あきら 女子栄養大学名誉教授、女子栄養大学臨床栄養医学研究室教授/栄養クリニック所長

田中 明先生 近影

医学博士、糖尿病専門医、糖尿病研修指導医、元東京医科歯科大学医学部臨床教授、元日本健康栄養食品協会学術委員。
1976年東京医科歯科大学医学部医学科卒業後、東京都立府中病院内科(糖尿病)医長、東京医科歯科大学第3内科講師などを経て、2007年より現職。栄養クリニックでは生活習慣病の診察と予防教育を行う他、各種健康雑誌、テレビ番組などで監修を行う。著書多数。

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