インドの食事といえば、まっさきに思いうかぶのはカレーかもしれません。でもインドで日常的に食べられているのは、ターメリック(ウコン)やクミン、コショウなどのこうしん料を使って作るスープとにこみ料理、油でいためたおかずです。これらは日本でよく食べられているカレーとはだいぶちがうもので、名前もそれぞれの料理名で呼ばれています。
国土が広いインドでは、地方によって味つけや素材もさまざまです。北インドではガラムマサーラーと呼ばれるこうしん料がよく使われ、「タンドゥール」というつぼ形のオーブンでタンドゥリーチキンやナーンなどが作られます。南インドではから味の強い料理が好まれ、ココナッツミルクで風味をそえます。また、東インドのベンガル地方では、パンチフォロンという配合調味料をよく使います。熱した油にパンチフォロンを入れ、かおりを出してから野菜や魚を調理すると、さっぱりした上品な味に仕上がります。
かつてポルトガルによる植民地支配のきょ点だった西インドのゴア州では、魚やぶた肉を使ったにこみ料理などポルトガルのえいきょうを受けた料理も残っています。
肉を使わない菜食料理
インドには肉を食べない、菜食主義者(ベジタリアン)と呼ばれる人たちがたくさんいます。肉類を口にしないのは宗教上の理由からで、なかには卵など、動物由来の食品は一切食べない人もいます。そのため野菜や豆類を材料にした菜食料理が発達し、専門のレストランも数多くあります。
料理のかくし味にヨーグルト
インドには「ダヒー」と呼ばれるヨーグルトがあり、家庭で牛乳から手作りすることが多いです。ダヒーはそのまま食べるだけでなく、肉や野菜のにこみ料理に入れたり、タンドゥリーチキンなどのグリル料理の味付けに使われたり、直接お料理にかけて食べます。また、ダヒーに牛乳や砂糖、果実などを入れてあわ立てたあまい飲み物「ラッシー」や塩味のラッシーも乳酸飲料として人気です。同様に家庭では牛乳からバターを手作りしたり、バターを精製(水分やたんぱく質を取り除く)して「ギー」という油も作ります。
食事は、右手で食べる!
〜「浄」と「不浄」の考え方〜
インドでは宗教にもとづく、「浄(清らかなもの)」と「不浄(けがれたもの)」という考え方があり、それが生活習慣にも結びついています。右手が「浄」で左手が「不浄」とされることから、食事の時は右手を使います。スプーンやフォークを使わずに指先を使って手で直接口へ運ぶのが伝統的な食べ方です。自然のものを使用することがよいともされていて、バナナの葉っぱをお皿の代わりにすることもあります。