地形や気候のちがいから、ペルーは大きく3つのエリアに分かれます。太平洋沿いの海岸地帯、アンデス山脈が横たわる山がく地帯、そしてアマゾンのジャングル地帯です。
海岸地帯では豊富な魚かい類がとれ、日本人と同じようにタコやイカ、エビなどをよく食べます。代表的な料理は、白身魚やタコ、エビ、貝などをレモンやライム、赤玉ねぎ、トウガラシでマリネにした「セビーチェ」。セビーチェの専門店があったり、6月28日が「セビーチェの日」になっていたり、国民から愛されている料理の1つです。
空中都市遺せきのマチュピチュがあるアンデスの山がく地帯では、原産のじゃがいもやとうもろこしの料理がたくさんあります。この地域では、地面をほった穴に焼いた石を入れ、肉やじゃがいも、野菜、ハーブ、キャッサバイモなどを入れて蒸し焼きにする「パチャマンカ」という料理が生まれました。今ではペルー全土に広がっています。
アマゾンのジャングル地帯では、じゃがいもの代わりにバナナ(野菜の仲間。あまくない調理用のバナナ)やユカイモ(キャッサバイモの一種)をよく食べます。ナマズやピラルクという魚もよく食べられていて、たん水魚のピラルクは大きいものだと全長3mもあるといいます。
また、ペルーには明治時代にたくさんの日本人が移住したため、日系移民が独自にアレンジした料理が「NIKKEI料理」として広まりました。
ペルー原産の作物が世界中へ
じゃがいも、トマト、かぼちゃ、ピーナッツ、トウガラシはどれもペルーが原産地です。16世紀にスペインの植民地になったことで、スペイン人がこれらの食材を持ち帰り、世界に広めました。この歴史がなかったら、トマトのないイタリア料理、トウガラシのないインド料理になっていたといわれています。
じゃがいもが日本に伝わったのは江戸時代。オランダ人がジャカルタ(今のインドネシアの首都)経由で長崎に持ちこんだのですが、当時のジャカルタは「ジャガタラ」と呼ばれていたので、ジャガタラ→ジャガタライモ→ジャガイモになったそうですよ。
ペルーのとうもろこしは、色も形もバラエティー豊か。山がく地帯の都市クスコ産のジャイアントコーンは「ペルーの白いとうもろこし」と呼ばれ、ひとつぶの直径が約2㎝もあります。見た目が真っ黒に見えるむらさきとうもろこしは2500年も前からさいばいされており、栄養満点。国民的ジュースといわれる「チチャ・モラーダ」は、このむらさきとうもろこしを使ったジュースです。ジュースの色は黒ですが、りんごやパイナップル、シナモンといっしょににこんだり、レモンや砂糖で味付けしているので、子どもたちも大好きです。
南米発のスーパーフードが世界で注目
ここ数年、日本でも話題になっているスーパーフードの多くはペルー古来の植物や作物。ダイエットに効く、美容にいい、栄養バランスがいいといった理由で再発見され、各国でブームになりました。昔は原産地であるペルーの人々が食べていましたが、今では多くが外国へ輸出され、現地での価格も高とうしたため、いっぱん的には食べられなくなっています。
栄養価の高い穀物「キヌア」はペルーやボリビアが原産地。ペルーのアンデス山脈で作られていて、色が黒いほどポリフェノールが多く、栄養があるといわれています。お米といっしょにたいたり、サラダやスープに入れたり、おかしの材料になったりといろいろな使い方ができるのも特ちょうです。ほかにも栄養素のつまった根菜の「マカ」、スーパーグレイン(きょう異の穀物)といわれる「アマランサス」、キウイフルーツの40倍のビタミンCをふくむ果物「カムカム」などがあります。
ペルー産カカオ豆を使ったチョコレート
チョコレートの原料となるカカオ豆は、もともとメキシコ南部から南アメリカが原産です。カカオは赤道をはさんで北緯20度と南緯20度の間の高温多しつな土地がさいばいに適しているといわれていて、ペルーは世界第8位の生産地です。ペルーの人たちは、チョコレートが大好きで、カカオの名産地クスコや首都リマなど国内のあちこちに、チョコレートの歴史をしょうかいしたり、いろいろなチョコレートをはん売する博物館があります。毎年クリスマスになるとホットチョコレートを飲むのが習慣になっているそうですよ。
チーズやヨーグルトがおいしい町カハマルカ
ペルー北部の街、カハマルカは標高2750mの山々に囲まれたぼん地で、インカ帝国が栄えた街です。ここは温泉の街として知られており、郊外の広大な土地にはらく農風景が広がっています。乳製品の製造が盛んで、チーズやバター、ヨーグルトがおいしいと評判。特にヨーグルトの種類が豊富です。ペルーの人たちは、ゆでたとうもろこしをチーズといっしょに食べたり、さまざまな料理にチーズやヨーグルトを使います。