〜四季折々、日本の食〜秋に食べたい日本のごはん

「秋の味覚」とばれるように、秋は食べ物が美味しい季節です。
こちらのコラムでは、秋にしゅんむかえる美味しい食べ物を地域ちいき別でご紹介していきます。
自分の住んでいる地域ちいきでは、どんな食べ物がしゅんなのか調べてみましょう。

日本の秋といえば「食欲しょくよくの秋」

日本には四季があり、その中でも秋は、イネや果物くだものなどが実をつけて収穫しゅうかく時期をむかえるため、「実りの秋」ともばれています。こよみの上では9月から11月が秋の季節です。

食欲しょくよくの秋」という言葉もあり、秋は多くの作物が実り、気候も良くなって食欲しょくよくすという意味で広く知られています。
その起源きげんは中国で、とうの時代の「秋高く馬肥ゆ」という言葉が日本へ伝わり、「天高く馬肥ゆ(る秋)」ということわざとして使われるようになりました。

「秋は空が高く晴れて澄み渡り、馬は食欲しょくよくが増して肥える」という意味で、秋のよい時節を表しています。

代表的な秋の食材

暑い夏が終わり、秋の気配を感じるころから、日本全国で秋の味覚とばれる食材がしゅんむかえます。
しゅんとは、野菜や魚・果物くだものなどが、一番美味しい時期のことです。

秋野菜は夏野菜にくらべて水分が少ないので、味があまみが強いのが特徴とくちょうです。
また、秋にしゅんむかえる魚は、産卵さんらん前などであぶらがのった青魚が多く、秋刀魚さんま(サンマ)や鰍(イナダ)のように、漢字に秋という字がつく魚は秋がしゅんの魚です。
他にも、秋がしゅんの魚では、秋さけ、秋さばなど秋の字が付いた魚のび名もあります。

そこで、秋を代表する食材を地域ちいき別に見てみましょう。

北海道地方

海の幸

さけ(アキサケ)
秋鮭(アキサケ)

北海道はさけ漁獲ぎょかく量が日本一です。産卵さんらん前の秋さけは身が引き締まっています。
あぶらひかえめなので、あっさりした塩焼きより、バター焼きやフライ、ムニエルなどにして食べると美味しいです。
和食だけでなく、洋食にも使われ、料理の種類も豊富ほうふです。

さけ漁獲ぎょかく(2019年)
1位
北海道
2位
青森県
3位
岩手県
さけを使ったおすすめレシピ

山の幸

じゃがいも、かぼちゃ、玉ねぎ、ブロッコリー
じゃがいも、かぼちゃ、玉ねぎ、ブロッコリー

北海道は日本の都道府県の中で最も面積が広く、農作物の収穫しゅうかくさかんな地域ちいきです。
秋がしゅんのじゃがいも、かぼちゃ、玉ねぎ、ブロッコリーは、北海道の収穫しゅうかく量が日本一です。
10月のハロウィンや12月の冬至とうじなど、日本では秋から冬にかけてかぼちゃを食べる風習もあります。
かぼちゃには様々な品種がありますが、一般いっぱん的によく見かける西洋かぼちゃや小ぶりサイズの坊ちゃんかぼちゃは、あまくてほくほくした食感が楽しめます。

じゃがいもの収穫しゅうかく(2020年)
1位
北海道
2位
鹿児島かごしま
3位
長崎ながさき
かぼちゃの収穫しゅうかく(2020年)
1位
北海道
2位
鹿児島かごしま
3位
長野県
玉ねぎの収穫しゅうかく(2020年)
1位
北海道
2位
佐賀県
3位
兵庫県
ブロッコリーの収穫しゅうかく(2020年)
1位
北海道
2位
埼玉県
3位
香川県
じゃがいもを使ったおすすめレシピ

東北地方

海の幸

秋刀魚さんま(サンマ)
秋刀魚(サンマ)

あぶらが美味しい青魚で秋の味覚の代表かくです。おもに北海道や東北地方、関東おきれます。
塩焼きが定番ですが、刺身さしみやフライなどいろいろな料理で食べられています。

サンマの漁獲ぎょかく(2019年)
1位
北海道
2位
岩手県
3位
宮城みやぎ
サンマを使ったおすすめレシピ
鮪(マグロ)

マグロは世界中でれる魚で、日本では青森県や北海道などで多く水げされます。
日本人にとってなじみがあるマグロは、1年中食べられていますが、本来は秋から冬がしゅんの魚です。
日本では、一般いっぱん的にクロマグロ(本マグロ)、ミナミマグロ、メバチマグロ、キハダマグロ、ビンナガマグロの5種類が食べられています。
部位ごとに味わいがちがうので、生で食べる刺身さしみやヅケ(刺身さしみをタレにんだもの)の他、ステーキ、煮付けなどで食べられます。

マグロ漁港ぎょこう別水げ量(2018年)
1位
宮城みやぎ塩竈しおがま
2位
鳥取県(堺)
3位
長崎ながさき長崎ながさき

※都道府県別総水げ量だと上位が東北ではありませんが、宮城みやぎ塩竈しおがま港は、キハダマグロ以外のマグロの水げ量がトップ3に入る日本で有数の生マグロの水げ港です。

マグロを使ったおすすめレシピ

山の幸

ごぼう(青森)・りんご(青森)
ごぼう(青森)・りんご(青森)

青森県は、ごぼうとりんごの出荷量が日本一です。
青森県のごぼうは、品質ひんしつが良いとされていて、かおりや風味が強いです。
また、食感がシャキシャキしていて身が詰まった美味しいごぼうです。
青森県はりんごの産地としても有名で、全国の約60%の収穫しゅうかく量です。
涼しい地域ちいきがりんごの栽培さいばいてきしており、東北地方全体でりんごの生産がさかんです。
りんごの品種は50種類ほどあります。

ごぼうの収穫しゅうかく(2020年)
1位
青森県
2位
茨城県
3位
北海道
りんごの収穫しゅうかく(2020年)
1位
青森県
2位
長野県
3位
岩手県
ごぼうを使ったおすすめレシピ
りんごを使ったおすすめレシピ

関東地方

海の幸

さば(アキサバ)
秋鯖(アキサバ)

春から夏にかけて北上していたサバは、秋の産卵さんらん期に南下し、東北から関東の太平洋おきで水げされます。
この時期のサバはあぶらがのったおいしいサバで、身がしまっています。黒い模様もよう特徴とくちょう的で「秋さば(アキサバ)」とばれています。
塩焼きや味噌みそ煮などが定番料理ですが、どんな食べ方でも美味しいです。

さば(アキサバ)の漁獲ぎょかく(2019年)
1位
茨城県
2位
長崎ながさき
3位
静岡県
さばを使ったおすすめレシピ
もどかつお(モドリガツオ)

カツオは、春と秋がしゅんの魚です。春にれる「初ガツオ」は九州から太平洋側を北上します。
もどりガツオ」は青森県沖合あたりまで北上して秋に南下します。三陸沖や千葉県などで水げされるもどりガツオは、「トロガツオ」とばれ、あぶらがのっています。
一番美味しさが伝わるのはお刺身さしみですが、たたきや煮付けなどにしてもおいしく食べられます。

もどかつお(モドリガツオ)の漁獲ぎょかく(2019年)
1位
静岡県
2位
東京都
3位
宮城みやぎ

山の幸

さといも(埼玉・千葉)・れんこん(茨城)くり(茨城)・梨(千葉・茨城・栃木)
さといも(埼玉・千葉)・れんこん(茨城)・栗(茨城)・梨(千葉・茨城・栃木)

関東地方の中では、茨城県が特に農業がさかんです。
れんこんは、茨城県が日本一の生産量で、全国の約50%を占めています。
水温が高いことと土壌が肥えているという条件が揃っているため、繊維せんいが細かくて、肉厚のおいしいれんこんができます。
また、関東地方は梨の産地です。千葉、茨城、栃木の3県で全国の約3わりを占めています。

さといもの収穫しゅうかく(2020年)
1位
埼玉県
2位
千葉県
3位
宮崎県
れんこんの収穫しゅうかく(2020年)
1位
茨城県
2位
佐賀県
3位
とく島県
くり収穫しゅうかく(2020年)
1位
茨城県
2位
くま本県
3位
愛媛県
梨の収穫しゅうかく(2020年)
1位
千葉県
2位
茨城県
3位
栃木県
さといもを使ったおすすめレシピ
れんこんを使ったおすすめレシピ
くりを使ったおすすめレシピ

中部地方

海の幸

鰍(イナダ)
鰍(イナダ)

ブリの幼魚です。見た目はブリにていますが、「大きさ」がちがいます。
体長80cm以上は「ブリ」、35cmから60cmくらいの大きさは「イナダ」とばれます。
北海道から九州にかけての日本海沖や千葉県、茨城県沖などで水げされます。
イナダはブリよりもあぶらが少なく身が引き締まっています。さっぱりとした味で、刺身さしみ物、焼き物、しる物などがおすすめの食べ方です。

鰍(イナダ)の漁獲ぎょかく(2021年)
1位
鳥取県
2位
石川県
3位
島根県

山の幸

(新潟)・きのこ(長野・新潟)・ぶどう山梨やまなし
米(新潟)・きのこ(長野・新潟)・ぶどう(山梨)

新潟県は、日本一長い川として知られる信濃川がある、日本一のお米の産地です。
新潟県は豪雪地域ちいきのため、雪解ゆきどけの水が豊富ほうふで、昼と夜の寒暖差が大きいことから、お米作りにてきした地域ちいきです。
また、長野県と新潟県ではきのこ生産がさかんで、この2県で日本の総生産量のうちの約50%を占めています。

米の収穫しゅうかく(2021年)
1位
新潟県
2位
北海道
3位
秋田県
きのこの収穫しゅうかく(2019年)
1位
長野県
2位
新潟県
3位
ふく岡県
ぶどうの収穫しゅうかく(2021年)
1位
山梨やまなし
2位
長野県
3位
岡山県
きのこを使ったおすすめレシピ

近畿地方

海の幸

伊勢エビ(三重)
伊勢エビ(三重)

エビは種類によって、しゅんや産地がちがいます。
また、天然ものと養殖ようしょくものでもしゅんちがいますが、エビの多くは、秋冬がしゅんの時期です。
伊勢エビは、産卵さんらん期がぎる10月から1月ごろしゅんむかえます。三重県や千葉県などで多くれます。

伊勢エビの漁獲ぎょかく(2019年)
1位
三重県
2位
千葉県
3位
和歌山県

山の幸

かき(和歌山)
柿(和歌山)

和歌山県は日本一のかきの産地で、和歌山と奈良ならの2県で日本全国の収穫しゅうかく量の約35%を占めています。
日照時間が長く、気候が温暖おんだんな和歌山県は、昼と夜の寒暖差が大きいです。
そのため、かきがよく色づき、高品質ひんしつあまかきを作ることができます。

かき収穫しゅうかく(2021年)
1位
和歌山県
2位
奈良なら
3位
ふく岡県
かきを使ったおすすめレシピ

中国・四国地方

海の幸

ズワイガニ(兵庫・鳥取)
ズワイガニ(兵庫・鳥取)

ズワイガニのしゅんは11月ごろから翌年よくねんの3月までです。広い範囲で水げされますが、鳥取県の境港さかいみなとは、日本一の紅ズワイガニの水げ量を誇ります。
紅ズワイガニは、水げされてすぐにでる、冷凍れいとうする、加工するなどの下処理しょりをして、日本全国にとどけられます。
ちなみにカニの漁獲ぎょかく量だとトップは北海道です。

ズワイガニの漁獲ぎょかく(2019年)
1位
北海道
2位
兵庫県
3位
鳥取県

山の幸

なす(高知)
なす(高知)

高知なすとして市場に出回っています。
高知県はなすの生産量日本一で、ハウス栽培さいばいに力を入れています。
皮も果肉も柔らかいのが特徴とくちょうで、いろいろな料理にして楽しめます。

なすの収穫しゅうかく(2022年)
1位
高知県
2位
くま本県
3位
群馬県
なすを使ったおすすめレシピ

九州・沖縄おきなわ地方

海の幸

鯵(アジ)
鯵(アジ)

産卵さんらん前がアジのしゅんです。初夏から夏ごろにかけて、日本沿岸えんがんのアジがしゅんむかえます。
また、九州地方の3月ごろから三陸沖の9月ごろまでにれるアジは、外海(外洋)を回遊します。あぶらののったアジは刺身さしみや塩焼き、フライなどでおいしく食べられます。

アジの漁獲ぎょかく(2019年)
1位
長崎ながさき
2位
島根県
3位
宮崎県
アジを使ったおすすめレシピ
車エビ沖縄おきなわ鹿児島かごしま

天然ものと養殖ようしょくものでしゅんの時期がちがいます。夏は天然もの、冬にかけては養殖ようしょくものがしゅんになります。
出回っているエビの多くは養殖ようしょくものです。天然ものは大変貴重きちょうで、愛知県や愛媛県が主な産地になっています。

車エビの漁獲ぎょかく(2019年)
1位
沖縄おきなわ
2位
鹿児島かごしま
3位
くま本県

山の幸

さつまいも鹿児島かごしま
さつまいも(鹿児島)

鹿児島かごしま県は、日本一のさつまいも生産地です。
鹿児島かごしま県にはさくら島があるため、土地は火山の火砕かさい流によりシラス台地になっています。米を作るにはてきさない水はけの良すぎる土地ですが、さつまいも栽培さいばいてきしているため、さつまいもがさかんに栽培さいばいされています。
料理以外にも、いも焼酎やでんぷんの原料、飼料しりょうなどにも利用されています。

さつまいもの収穫しゅうかく(2021年)
1位
鹿児島かごしま
2位
茨城県
3位
千葉県
さつまいもを使ったおすすめレシピ

代表的な秋の料理と歴史・文化

秋は新米が美味しい季節です。きたてのご飯とともにしゅんの食材を味わいましょう。お米そのものが美味しいので、白米だけでなくみご飯やお寿司すしもおいしいです。

また、主食のご飯ものに合わせるおかずとして、しる物・焼き物・物・げ物・し物など素材そざいを生かした様々な調理法で自然のめぐみをいただきましょう。

北海道地方

  • さけのチャンチャン焼き

    鮭のチャンチャン焼き

    秋がしゅんさけを野菜と一緒いっしょし焼きにしてみそ味で食べる北海道の郷土きょうど料理です。
    発祥はっしょう石狩いしかり地方の漁師町とわれています。昭和初期に、漁師たちが釣ったさけを船の上で焼いて食べたのが始まりとされています。
    簡単かんたんに作ることができて、豪華に見え、栄養バランスもよいので、全国的に知られるようになりました。
    切り身でホイル焼きにするなど、より手軽な調理法で楽しむ人も多く、仕上げにマヨネーズをかけてもおいしいです。

東北地方

  • さんまの塩焼き

    さんまの塩焼き

    秋がしゅんのさんまは塩焼きが定番料理です。
    たっぷりとあぶらがのっているので、焼くだけで美味しく食べられます。大根だいこんおろしやかぼすなどを添えることで、またちがった味わいも楽しめます。
    しかし、江戸えど時代の初期から中期では、さんまのあぶら行燈あんどんなどの油として使っており、さんまを食べる習慣しゅうかんはありませんでした。
    また、武士はさんまの形が刀を連想させ、あぶらは体に悪く、下品な魚であるとの考えから、食べなかったようです。
    時代をて、さんまが栄養豊富ほうふであることが広く認知にんちされ、現在げんざいでは広く親しまれるようになりました。

  • 茶碗ちゃわん(青森)

    茶碗蒸し

    茶碗ちゃわんしには、銀杏ぎんなんが入ることが多いですが、青森県の津軽地方の茶碗ちゃわんしには、くりが入ります。
    くり甘露煮かんろにしるが入ったあま卵液らんえきに、くり甘露煮かんろにや根曲がり竹などが入り、具沢山なのが特徴とくちょうです。
    年越としこしやお正月だけでなく、普段ふだんから家庭で作られている料理です。

関東地方

  • サバの味噌みそ神奈川かながわ

    サバの味噌煮

    神奈川かながわ県の三浦半島は、太平洋に面していて豊富ほうふな魚が水げされます。松輪まつわ漁港ぎょこうでとれる松輪まつわサバは、地域ちいきのブランドとして登録されており、あぶらがのって鮮度せんどがよいことで知られています。
    サバのみそ煮は、代表的なさば料理です。サバの切り身をみそと砂糖さとう、酒、みりん、生姜などで煮込にこみます。みそや生姜を使うことで、さばの生臭みを消し、いめのみそ味で白米がすすむおかずです。
    サバの煮付けは、日本の東西で味付けが二分される傾向けいこうにあり、みそ煮は、東日本で多く食べられていて、西日本では醤油煮しょうゆににして食べられることが多いようです。

  • くりごはん神奈川かながわ

    栗ごはん

    神奈川かながわ県の津久井地区では、くり栽培さいばいさかんです。
    渋皮しぶかわまでむくと実が小さくなってしまうので、包丁で渋皮しぶかわをむかずに、すり鉢でこそげとる程度ていどで使うこともあります。
    渋皮しぶかわを少し残して炊いてもしぶみはなく、くりの旨味が逃げずに風味ゆたかなおいしいくりご飯ができます。
    日本には五つの節句があり、そのうちのひとつに重陽ちょうようの節句(9月9日)があります。行事食としてその日にくりご飯を食べる風習があり、重陽ちょうようの節句はくりの節句ともばれています。

  • きんぴらごぼう(群馬)

    きんぴらごぼう

    ごぼう料理の代表かくといえばきんぴらごぼうです。
    ごぼうを千切りやささがきにして、しょうゆや砂糖さとう、酒などの調味料で甘辛あまからた料理です。いろどりでにんじんや他の具材が入ることもあります。
    群馬県民にとっては、作り置きのおかずとして、またお祝いや法要、行事のさいのおかずにも欠かすことはできません。
    うどんの具やそばのつけじるにも入れます。
    ちなみに、ごぼうを食べるのは日本だけで、平安時代の末期からごぼう料理が食卓しょくたくにのぼるようになりました。日本では、古来から「黒い」色の食材は健康によいとされ、黒豆や黒ごまなどの食材と同様にごぼうも食べられてきました。
    「きんぴら」の語源ごげんは、坂田金時きんときの息子が金平きんぴらという名で、源頼光の四天王の1人で大変強かったことから、その力にあやかりたいと「きんぴら」とばれるようになったといわれています。

  • けんちんしる神奈川かながわ

    けんちん汁

    根菜類を油でいため、だしで煮んで豆腐とうふを加えたしるもので、全国で食べられている具沢山のおしるです。
    しょうゆなどで味付けし、お肉が入らないのであっさりした味です。
    少しずつ寒くなり始め、里芋さといもや根菜類がしゅんむかえるころ、家庭料理で普段ふだんから作られる料理です。
    神奈川かながわ鎌倉かまくら市にある建長寺の禅師によって、鎌倉かまくら時代に中国から伝えられました。
    食材を無駄むだなくすべていただくという意味合いから、精進しょうじん料理としても食べられています。

  • 野菜のかき(東京)

    野菜のかき揚げ

    野菜のかきげは、野菜を小さく切って、小麦粉を溶いた衣にぜ、油でげた料理です。
    かきげの語源ごげんは、「かきぜてげる」ことからきています。
    日本ではお馴染みの天ぷら料理ですが、その起源きげん室町むろまち時代です。南蛮料理として、天ぷらの調理法が長崎ながさき県に伝わりました。
    江戸えど時代には、天ぷらは庶民しょみんの味として、また高級料理としても広がり、江戸えどの料理として定着し、やがて全国で食べられるようになりました。

  • すいとんしる(群馬・栃木)

    すいとん汁

    全国各地に、各地域ちいき特有の「すいとん」があります。
    群馬県や栃木県では、郷土きょうど料理として昔から食べられてきました。
    小麦の生産がさかんな地域ちいきやお米が育ちにくい地域ちいきでは、お米の代わりに小麦粉や米粉こめこを練ってお団子だんごにし、野菜と一緒いっしょにみそしるに入れて食べる風習がありました。
    今でも季節のしゅんの野菜を入れて、今でも一年中食べられている家庭の味です。

  • 大学いも

    大学いも

    大学いもは、砂糖さとうとしょうゆを合わせた糖蜜に油でげたさつまいもを絡めた料理です。
    おやつとして食べられることが多いですが、関東地方では、ご飯のおかずとしても食べられています。
    名前の由来は諸説しょせつありますが、大正から昭和にかけて、東京の大学生がよく食べていたことから「大学いも」と名付けられたといわれています。

中部地方

  • きのこのみごはん(長野・新潟)

    きのこの炊き込みごはん

    みご飯は、五目飯、かやくご飯といったび名でも知られているお米料理です。
    お米に具材やだし、しょうゆなどの調味料を加えてきます。
    きのこ類と一緒いっしょむので「きのこのみご飯」です。きのこと一緒いっしょむことで、ご飯にもきのこの旨味が染み、ゆたかな風味が味わえます。
    その他にも、くりみご飯(くりごはん)、松茸のみご飯(松茸ごはん)などが秋の料理ではよく知られています。
    奈良なら時代には、食事の量をやすために「あわ」を米にぜる「あわご飯」が食べられていました。また、お米を節約するために、ひえ等の雑穀ざっこくや野菜、大根だいこんいもなどをぜて炊いたものが「みご飯」の始まりとされています。

  • くりおこわ(岐阜)

    栗おこわ

    岐阜県の中津川市は、くりの名産地です。くりの季節になると赤飯にくりを入れたくりおこわを作ります。
    くりは生のまま冷凍れいとうできるので、年間を通しておもてなしの時にくりが利用されています。
    また、この地方では、くりおこわは誕生たんじょう日や入学などのお祝い、秋祭りなどのハレの日にも作られる定番のごちそう料理となっています。
    出回っているくりは、ほとんどが栽培さいばいされたものですが、昔は山にくりを拾いに行き、かちくりにしたり、ご飯にんだりして食べていました。
    ちなみに、おこわとは、古語では御強おこわと書き、由来は強飯こわめしという言葉です。強飯こわめしとは、こわい飯を意味していて、もち米を使うことで噛み応えのあるもちもちとした食感を楽しめる料理です。
    中津川地方の家庭では、「力が出る」ということで、運動会のお弁当べんとうの定番メニューにもなっているようです。

  • 里芋さといもの煮っころがし(里芋さといものころ煮)ふく井)

    里芋の煮っころがし(里芋のころ煮)

    全国で知られている里芋さといもの家庭料理です。里芋さといもは切らずにそのまま使うことで、里芋さといも特有のねっとりした食感を味わえる料理です。
    ふくめるだけですが、材料がシンプルなので、素材そざいの味と調理技術ぎじゅつによって出来栄えがかなりちがいます。里芋さといもの皮をむかずにこそげとるのが上手じょうずに作るコツです。
    ふく井県大野おおの市では「上庄かみしょう里芋さといも」が有名です。大野おおの市にはおいしい里芋さといもが育つ条件が揃っていて、雪が多く、寒暖差があり、土が豊富ほうふで、水はけがよい扇じょう地になっています。
    浄土真宗各派じょうどしんしゅうかくはの年中最大行事である報恩講ほうおんこうでは、精進しょうじん料理の一つとしても振る舞われます。また、里芋さといもは親いもの周りにたくさんの子いもがつき、さらに子いもから孫いもと続いていくことから、子孫しそん繁栄はんえい縁起えんぎ物としてお祝い事でも食べられ、おせち料理にも使われます。

近畿地方

  • かやくご飯(根菜のみご飯)(大阪)

    かやくご飯(根菜の炊き込みご飯)

    かやくご飯は、みご飯、五目飯、しょうゆご飯、いろご飯ともわれています。
    にんじん、ごぼうなどの野菜を入れて、しょうゆ味でみます。煮干にぼしを入れて炊くと出しるの代わりになっておいしいですが、鶏肉とりにくを入れるほうが多いようです。
    具沢山なので、おかずを作る手間が省けて、重宝ちょうほうされています。
    かやくご飯が好きな大阪人にとっては身近な料理で、かやくご飯とうどんを一緒いっしょに食べる定食も好まれています。
    大阪には、明治時代から続く、かやくご飯の老舗のお店もあります。また、大阪は江戸えど時代から薬の問屋とんやが多く存在そんざいする薬の街です。漢方では、効能こうのうを上げるために主成分に加える補助薬を「加薬」といい、ぜることを「かやく」とわれていたため、その名がついたという説があります。また、1939年には、宮内ちょうの全国郷土きょうど料理調査ちょうさで、日本五大名飯の中の一つにも選ばれました。

中国・四国地方

  • なす田楽(高知)

    なす田楽

    秋に出回る米なすは、普通ふつうのなすよりも丸くて大きいです。
    アメリカが原産国なので、米国からとって米なす(べいなす)とばれています。焼いたりたりしても身や皮がしっかりしています。
    なすはみそとの相性あいしょうがよく、なす田楽はよく知られているなす料理です。
    なす田楽の発祥はっしょうは、初夏の京都に出回る賀茂なすを田楽にしたものといわれています。
    元々田楽とは、田遊びや伝統でんとう芸能げいのうのうのことを表しますが、江戸えど時代の川柳せんりゅうには「田楽は、昔は目で見、今は食ひ」とまれていることから、このころには田楽といえば味噌みそ田楽を想像そうぞうしていたと考えられます。

  • 焼きなす(高知)

    焼きなす

    「秋なすは嫁に食わすな」ということわざがあるくらい、秋はなすがおいしい時期です。
    焼きナスは、皮が付いたまま丸ごと焼いてから、皮をむき、食べやすく裂いてしょうゆやポンで食べる料理です。なすのあまみととろっとした食感が楽しめる食べ方です。
    ちなみに新潟県では、焼きなすのために改良された「やきなす」という品種のなすがありますが、希少な品種のため、ほぼ新潟県内でのみ食べられています。
    なすは日本の食生活になじみ深いもので、「一富士二鷹三茄子いちふじにたかさんなすび」という言葉にあるように、初ゆめにみると縁起えんぎが良いものとしても挙げられています。諸説しょせつありますが、富士は「無事」、鷹は「高い」、茄子は「~を成す」に通じ、縁起えんぎが良いとしてとく川家康が好んだともいわれています。
    また、奈良なら時代にはなすを食ベる習慣しゅうかんがありましたが、水分が多く日持ちがしないので、主に保存食ほぞんしょくとして味噌漬みそづけや粕漬かすづけなどの漬物つけものにしていました。

九州・沖縄おきなわ地方

  • 焼きいも鹿児島かごしま

    焼きいも

    焼きいもは、さつまいもの品種や作り方によっても味がちがいますが、お店で売られている焼きいもは、濃厚のうこうあまさで、しっとりした食感のものがえているようです。
    低温でじっくりと時間をかけて加熱することで、さつまいもの持ち味を最大限に引き出し、濃厚のうこうあまさの焼きいもになります。
    日本では、戦後の高度成長期に石焼きいもが大人気で、独特どくとくの売り声とともに屋台で売り歩く姿すがたは懐かしい光景です。
    世界で食べられているさつまいもは、日本の品種ほどあまくないので、あまい焼きいもを作るなら日本の品種が一番てきしています。さつまいもは、江戸えど時代の初期に、琉球りゅうきゅう国や薩摩さつま藩から日本各地に伝わりました。江戸えどでは焼きいも屋が大繁盛はんじょうし、その後の明治時代が最盛さいせい期だったようです。
    さらに、戦後の高度成長期には石焼きいもが大人気となり、独特どくとくの売り声とともに屋台で売り歩く姿すがたは懐かしい光景です。

  • さつまいもの天ぷら(がねげ)くま本・鹿児島かごしま

    さつまいもの天ぷら(がね揚げ)

    さつまいも料理の定番といえる天ぷらですが、地域ちいきによって、見た目も作り方も様々です。
    九州地方のくま本県や鹿児島かごしま県では、さつまいもを千切りにしてかきげにする料理が郷土きょうどの味として親しまれています。
    九州地方では、方言でかにのことを「がね」といい、出来上がりがかにの足にていることから「がねげ」「がね」とばれています。
    昔から、法事の時には近所の人が集まり、大人数分の大きな「がねげ」を作る風習がありました。今では、お正月や冠婚葬祭かんこんそうさいだけでなく、おかずやおやつとして年中食べられています。
    また、さつまいもは鹿児島かごしま県の食文化には欠かせない食材です。鹿児島かごしま県の黒豚は、さつまいもを餌にぜて育てられ、いも焼酎はさつまいもが原料です。鹿児島かごしま県には、「がねげ」の他にも、さつまいもを使った郷土きょうど料理がたくさんあります。

  • 筑前ちくぜんふく岡)

    筑前煮

    ふく岡県筑前ちくぜん地方で伝わる郷土きょうど料理です。
    鶏肉とりにく、にんじん、れんこん、ごぼう、こんにゃくなど根菜類を中心にいろいろな具材が入り、砂糖さとうとしょうゆなどの調味料で甘辛あまからく味付けします。
    具材を先に油でいためてからるので、味にコクが出ます。
    また、いためることで油が具材をコーティングするので、る時にアクが出にくくなります。
    ふく岡県北部は、昔「筑前ちくぜんの国」とばれていたので、「筑前ちくぜん煮」として全国に知られていますが、ふく岡県では「がめ煮」とばれ、お正月やお祭り、結婚けっこん式といったお祝い事でよく作られます。

地域ちいき別に、秋がしゅんの食材を使ったお料理をご紹介しました。
しゅんの食材は自然環境かんきょうで生きていくための成分を持っているので、その時期に体に必要な栄養をたくさんふくんでいます。
美味しいだけでなく、栄養もたっぷりな“秋の味覚”をぜひ楽しんでください。

※料理の誕生たんじょう時期・発祥はっしょう地等は諸説しょせつあります。

ライター 堀江 優子

ライター堀江 優子

愛媛県松山市在住。管理栄養士。岡山県倉敷市生まれ。岡山県立大学保健福祉ふくし学部栄養学科卒業。大学卒業後に愛媛県松山市で就職しゅうしょくし、行政の管理栄養士として20年間勤務後に独立どくりつ。その後、レシピ開発や執筆、トレーニングジムの個別こべつ栄養サポートなどを行う。主宰する「スマイルエプロン 食育と料理教室」では、食育や郷土きょうど料理のオンライン料理レッスンも開講しており、子どもの食育や和食・郷土きょうど料理の普及啓発に力をいれている。


参考文献
小学新国語辞典 改訂版 光村教育図書株式会社  2012年12月15日 改訂版第5刷発行
桃太郎電鉄で学ぶ47都道府県 地理・歴史攻略  学研 2022年3月8日 第1刷発行
全集 伝え継ぐ 日本の家庭料理 年取りと正月の行事 2021年12月10日 第1刷発行 (一社)日本調理科学会 企画・編集/(一社)農山漁村文化協会 発行
全集 伝え継ぐ 日本の家庭料理 汁もの 2021年12月10日 第1刷発行 一般社団法人 農山漁村文化協会
全集 伝え継ぐ 日本の家庭料理 魚のおかず 2021年12月10日 第1刷発行 一般社団法人 農山漁村文化協会
全集 伝え継ぐ 日本の家庭料理 魚のおかず 地魚・貝・川魚など 2020年11月10日発行 第1刷発行 一般社団法人 農山漁村文化協会
全集 伝え継ぐ 日本の家庭料理 魚のおかず  いわし・さばなど 2019年11月10日発行 第1刷発行 一般社団法人 農山漁村文化協会
全集 伝え継ぐ 日本の家庭料理 野菜のおかず 秋から冬 2019年11月10日発行第1刷発行 一般社団法人 農山漁村文化協会
全集 伝え継ぐ 日本の家庭料理 どんぶり・雑炊・おこわ 2021年12月10日 第1刷発行 一般社団法人 農山漁村文化協会
全集 伝え継ぐ 日本の家庭料理 炊きこみご飯・おにぎり 2019年11月10日 第1刷発行 一般社団法人 農山漁村文化協会
全集 伝え継ぐ 日本の家庭料理 いも・豆・海藻のおかず 2021年12月10日 第1刷発行 一般社団法人 農山漁村文化協会
参考サイト
農林水産省 (maff.go.jp)
日本でりんごを多く作っている都道府県(とどうふけん)は? - あおもりりんごforキッズ (aomori-ringo.or.jp)
りんご:東北農政局 (maff.go.jp)
れんこん特集 | 旬のうまいもの特集 |茨城をたべよう いばらき食と農のポータルサイト(ibaraki-shokusai.net)
柿の概要 | 和歌山県 (wakayama.lg.jp)