北の大地「北海道」。日本海、太平洋、オホーツク海と3つの海に囲まれており、近海でとれる新鮮な魚介や広大な土地で育った野菜や豆類など、豊かな自然でとれた食物はどれも美味しいものばかりです。
こちらのコラムでは“食の宝庫”である北海道の食文化や魅力を紹介していきます。
北海道の魅力
●広大な大地が美しい北海道
日本の最も北にある北海道は、都道府県の中で最も面積が広く、日本の総面積の約20%を占めています。年間を通じて冷涼な気候で、夏は短く冬は寒さが厳しいです。日本各地と比べて、約1カ月前後の気温差があり、冬にはオホーツク海沿岸に流氷が接岸して、海を覆います。また、梅雨がないのが特徴的です。
北海道内には、新千歳空港を含めて全部で12個の空港があります。北海道内が道央、道北、道東、道南の4つのエリアに分かれていて、それぞれの地域ごとに有名な観光地や特産品などがあります。知床半島と縄文遺跡群は世界遺産にも登録されています。
大自然がそのまま残されているところも多く、野生動物に遭遇することも珍しくありません。
●酪農が盛んな北海道
北海道は酪農も盛んな地域です。
2021年の国の統計によると、北海道の酪農家戸数は5,710戸で、戸数は年々減っていますが、飼育頭数は毎年増えています。
北海道内の乳牛の飼養頭数(めす)は829,900頭で、一戸あたりの飼養頭数は145.3頭です。
日本の牛乳・乳製品の利用促進は、酪農の発展に大きくつながり、日本で洋食文化が浸透した一つのきっかけと考えられます。
●北海道には日本一がいっぱい!
北海道には日本一を誇るものがたくさんありますが、例えば温泉地の数、人口10万人あたりのコンビニエンスストアの数も日本一です。
さらに、農業や漁業が盛んで、日本の食料生産の多くを担っています。
海の幸・山の幸共に豊富で、じゃがいも、鮭、玉ねぎ、てんさい、こんぶ、ほたて貝、かになど、年間を通じて様々な特産物に恵まれています。
北海道の郷土料理
●鮭のちゃんちゃん焼き(石狩地方)
- 由来
- 「ちゃっちゃと作れるから」「お父ちゃんが作るから」「焼くときにヘラが鉄板に当たってチャンチャンという音を立てるから」など、名前の由来については諸説あります。
- 歴史
- 昭和初期の石狩市で、釣った鮭を船の上で焼いて食べたのが始まりです。
- 特徴・味
- 鮭と季節の野菜をバターで蒸し焼きにして、みそ味でいただく料理です。鮭の旬である秋から冬によく食べられます。
全国で知られるようになり、簡単に作れて豪華に見えるので人気があります。
●石狩鍋 (石狩地方)
- 由来
- 石狩町から生まれた漁師料理です。江戸時代から、石狩地方では、鮭漁が行われていました。大漁のお祝いで、ご褒美として、漁師が鮭をみそ汁の鍋に入れて食べていたようです。
- 歴史
- 昭和20年代ごろ、石狩市では、鮭の地引網漁が注目されるようになり、多くの観光客が集まりました。地引網漁は、網を引き揚げるまでに時間がかかるため、その待ち時間に観光客に提供した「石狩鍋」が好評で、やがて全国に広まりました。
- 特徴・味
- 北海道の定番の鍋料理です。鮭をぶつ切りにし、あらと一緒に野菜などを加えて、こんぶだしで煮込み、みそで味付けしたものです。
みそで身体が温まる、野菜がたっぷり入った具沢山な鍋です。
家庭によって入れる具材は違いますが、バターを入れたり、山椒をふりかけてもおいしいです。
●ジンギスカン(道内全域)
- 由来
- 昭和初期、中国料理をもとにして、日本人向けに羊肉料理が考案されたのが、「ジンギスカン」の始まりとされていますが、発祥は諸説あります。
- 歴史
- 北海道で羊肉が食べられるようになったのは、綿羊飼育が本格的に始まった大正時代の頃です。その後は次第に羊肉用としての飼育が増え、羊肉の消費を増やす目的で「ジンギスカン」が定着していきました。
- 特徴・味
- 北海道では、ジンギスカン鍋を持つ家庭が多く、季節に関係なく、一年中食べられています。焼き方が2種類あり、羊肉をそのまま焼いてタレをつけて食べるものと、しょうゆベースのたれに漬けた羊肉を焼くものがあります。
ジンギスカンは観光客にも人気で、北海道にはジンギスカンが食べられる有名なお店がたくさんあります。
●いももち・いもだんご(道内全域)
- 由来
- お米がまだ普及していない時代に、じゃがいもをもち米の代わりにして餅を作ったのが始まりです。かぼちゃを使って作る「かぼちゃもち」というものもあります。
- 歴史
- 明治時代の開拓者たちのエネルギー補給になり、その後戦時中や戦後にも食べられました。
- 特徴・味
- 特産品のじゃがいもを使った定番のおやつとして親しまれています。作り方は、じゃがいもを蒸してつぶしたら、片栗粉や小麦粉をまぜて丸く成形し、両面に焼き目をつけて焼くだけなので、家庭でも簡単に作ることができます。
中にチーズを入れたり、バターをのせたり、揚げたり、汁物に入れたりと、食べ方は地域や家庭によって違います。
●三平汁(道内全域)
- 由来
- 名前の由来は、松前藩の藩主が漁師の家で食べた汁を気に入り、その漁師の名前の三平をとって「三平汁」と名付けたという説や、三平皿という有田焼の深皿に盛ることから付けられたという説など諸説あります。
- 歴史
- 江戸時代後期の見聞録「東遊記(とうゆうき)」の中に「三平汁」のことが記されていることから、200年以上前から食べられていたことがわかっています。
- 特徴・味
- サケ、タラ、ニシンなどの魚を塩漬けやぬか漬けにしたものと、じゃがいも、大根、にんじんなどの野菜をこんぶだしで一緒に煮込んだ汁ものです。
魚の頭や骨なども煮込むので旨味が強く、魚から出るだしと魚の塩分で味をつけます。
家庭によって入れる具材は違い、味付けもみそ、しょうゆ、酒粕など様々です。寒い冬の定番家庭料理で、身体が温まる一品です。
●カニのてっぽう汁(道東地域、主に根室地方)
- 由来
- 諸説ありますが、鉄砲に弾を詰める仕草と、カニの足を箸でつついて食べる様子が似ていることから「てっぽう汁」と名付けられたといわれています。
- 歴史
- 「てっぽう汁」は、昔から根室地方で漁師が食べていた料理です。
- 特徴・味
- 根室地域の家庭料理で、道東地域では、みそ汁にカニを入れる料理を「てっぽう汁」といいます。
使う食材は花咲ガニが主流ですが、毛ガニ、タラバガニ、ズワイガニなども使います。
カニと野菜をこんぶだしで煮込んでみそを溶き、最後に豆腐と長ねぎを入れる簡単な料理です。
北海道の食文化
●北海道の「100年フード」
北海道で代表的な料理といえば、ラーメン・スープカレー・ジンギスカン・豚丼・海鮮丼などが挙げられます。これらの料理の中には、文化庁が認定した北海道の「100年フード」になっているものもあります。
「100年フード」とは、世代を超えて地域で受け継がれ、長く愛されてきた食文化を、100年続く文化として継承する食文化のことです。
北海道では、「ジンギスカン」「新子焼き」「小樽あんかけ焼きそば」「なよろ煮込みジンギスカン」「とまこまいカレーラーメン」の5つが認定されています。
●地域によって変わる「ジンギスカン」の食べ方
ジンギスカンは、真ん中が山のように盛り上がった鉄製の鍋で、羊肉と野菜を一緒に焼いて食べる料理です。北海道では、昭和初期から羊肉を食ベる習慣がありました。北海道のジンギスカンは、地域によって食べ方が違い、味付け肉を焼く場合と、後から味を付ける食べ方があります。
一方、「なよろ煮込みジンギスカン」は、名寄地方のジンギスカンで、味付け肉の汁(たれ)が多いのが特徴です。名寄地方では、汁たっぷりの味付きジンギスカンを野菜やうどんなどの具と一緒に鍋で煮込む料理です。
●北海道お土産でよく見る「ハスカップ」とは?
他にも珍しいものでは、北海道のお土産の中で、ハスカップを使った商品があります。ハスカップは、クロノウグイスカグラというブルーベリーに似た紫の果実で、アイヌ語でハスカップといいます。昔から、ハスカップは、先住民族であるアイヌの人たちの間で、「体を軽くし、不老不死」に役立つものとして食べられていました。
●あらゆる食文化が交わる「北海道」
北海道の食文化は、アイヌの人たちの伝統料理や、西洋から持ち込まれた料理など、あらゆる食文化が交わったものです。
また、北海道は開拓地のため、日本中から集まった人々により、それぞれの故郷の料理をもとにして、さらに新しい食文化が生まれました。
魅力あふれる北海道の食文化は、日本全国に広く知られており、各地で開催される北海道の物産展などでも親しまれています。
北海道のお祭り・行事
北海道のお祭りといえば、さっぽろ雪まつりが全国的に有名ですが、食と関係のある行事やお祭りがたくさんあります。
●YOSAKOI ソーラン祭り
1992年から始まったYOSAKOI ソーラン祭りは、毎年6月に開催され、5日間にわたって行われます。参加者は約3万人、観客は、約200万人にもなる大きなイベントです。
北海道の民謡「ソーラン節」と、高知県の「よさこい祭り」の「鳴子」が合わさって生まれたお祭りで、「ヤーレンソーラン♪」の歌に合わせた躍動感ある演舞が見られます。
「ソーラン節」は、ニシン漁の時に北海道の漁師が歌った労働歌であるため、綱引きや網あげの力強さが踊りに表現されているのです。チームごとにお揃いの華やかな衣装を身にまとい、鳴子を鳴らしながらエネルギッシュに踊る踊り子の姿は、初夏の風物詩です。
●北海道義士祭
赤穂四十七士が吉良邸に討ち入りした12月14日前後には、「義士祭」が全国各地で行われ、北海道義士祭は砂川市の北泉岳寺で毎年12月14日に開催されています。
初代と2代目の住職が時間をかけて熱心にお願いを続けたことにより、本家の芝・高輪泉岳寺から「北泉岳寺」の名と四十七義士の墓の土をいただいたのが始まりと言われています。
お祭りでは、居合奉納や演舞奉納などの迫力ある行事のほか、墓前祭や吉祥祈願、市民が四十七義士に扮して練り歩くパレードなどがあります。雪が降る時期に47人の義士が歩く姿は壮観です。
会場では、名物の当たり矢そば、甘酒、お茶席が振舞われます。
討ち入り前に義士がそばを食べたという説にちなんで、12月14日に行われる全国各地の義士祭でも、そばを振る舞うのが恒例になっています。
●北海ソーラン祭り・花火大会
余市町は、ニシン漁の歌として全国的に有名な北海道の民謡「ソーラン節」発祥の地です。余市町最大のイベントとして、毎年7月に行われていて、地元の人をはじめ多くの観光客で賑わいます。また、北海ソーラン太鼓の演奏があり、地元住民による浴衣姿のソーラン踊りなどのパレードでは迫力のある山車も登場します。
さらに、2日間にわたり地域の特産品や地元ならではのグルメ販売など、様々な催しが開催され、祭りのフィナーレには約3,500発の花火が打ち上げられ、余市港の夜空を彩ります。
●南かやべひろめ舟祭り
函館市北部の南茅部地区で開催される豊漁祈願のお祭りです。「ひろめ」とは、こんぶの古い呼び名で、こんぶを採るための木舟を「ひろめ舟」と呼んでいました。そのひろめ舟を漕いで競うメインイベントの「舟漕ぎ競争」は迫力満点です。
また、浜に並んだ漁火船は、大漁旗や提灯で装飾され、お祭りムード一色に。さらに夜になると電飾が点灯して華やかになり、会場はさらに盛り上がります。
南茅部地域は、こんぶの生産地として知られており、こんぶの養殖も盛んなため、お祭りでのこんぶの即売も人気です。
※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、祭りの内容が変更になる可能性がございます。
北海道の学校授業
●長期休みの期間
冬の寒さが厳しく積雪が多いので、夏休みが短く、冬休みが長いです。
学校の種類や年度によっても多少の違いはありますが、例えば、小学校だと、夏休みは7月下旬から8月中旬まで、冬休みは12月下旬から1月中旬までとなっていて、共に25日間ほどあります。
●体育の授業
冬は、スキーの授業がある学校が多いです。
また、釧路・十勝を中心とした道東や、苫小牧など積雪量が少ない太平洋沿岸の地域ではスケートの授業が行われます。
太平洋側の地域の小学校では、先生や父母らが校庭にスケートリンクを手作りし、児童の授業などで使われています。
北海道民は、スキーウエアをほぼ全員持っているといわれていて、冬の子どもの雪遊びでは、必需品です。スキーをする時だけでなく、降り積もった雪の中で作業する時にも活用します。
明治と北海道
●明治と十勝
●十勝が酪農に適している理由
おいしい水と空気、豊かな自然に恵まれた十勝では、酪農が盛んです。
日本のチーズ作りの聖地である十勝は、チーズ作りが盛んなヨーロッパ地方と緯度がほぼ同じで、牛が過ごしやすい冷涼な気候です。
十勝川が流れる十勝平野は、広大で平坦な土地で、飼料用作物や牧草の生産環境にも恵まれています。
さらに、チーズ作りの職人たちによって、おいしいチーズを作るための研究が進み、「十勝ブランド」が誕生しました。
十勝でとれる新鮮な生乳から作られるチーズは、「おいしさへのこだわり」が詰まっています。
●十勝ブランドについて
1992年に誕生した「十勝ブランド」を4本のカラー線で表現しています。
これは、「太陽・水・草原・大地」を象徴していて、十勝だからこそ恵まれた豊かな環境が、互いにつながることで生みだされる「十勝ブランド」を意味しています。
●フードバレーとかち
帯広市では、「フードバレーとかち」を掲げ、十勝の経済活動に取り組んでいます。「フードバレーとかち」とは、「食」と「農林漁業」を柱として、十勝が持つ様々な「資源」を活用し、互いに連携しながら、十勝型のフードシステムをオール十勝で作り上げていく方策です。
明治では、乳の価値向上の推進を主な目的として、十勝ブランドをはじめ様々な活動を行っています。
●北海道だけで作られる「明治オーガニック牛乳」
さらに明治では、環境や乳牛の健康に配慮した酪農を支援しています。
お客様への新しい価値のご提案として、2種類の「明治オーガニック牛乳」を販売しています。
こだわりは、北海道の牧場で有機飼料により大切に育てられた乳牛から搾った生乳のみを使用していることです。
「明治オーガニック牛乳」の開発を始めて以来、有機JAS規格の認証を取得した農家は5軒から8軒に増えています。
●明治北海道十勝オーバル
「明治北海道十勝オーバル」とは、「帯広の森屋内スピードスケート場」の愛称です。
帯広市の潤いと活力ある地域社会づくりに貢献することを目的として、2009年に明治が愛称をつけさせていただきました。
帯広を元気にするためのスポーツ施設として利用されています。
●明治自然環境保全区(根室市)における活動
明治では、北海道根室市と締結した「明治自然環境保全区での共同活動に関する協定」に基づき、地域社会と連携しながら野鳥の保護や生物多様性保全活動を行っています。
アイヌの人たちや西洋から持ち込まれた料理など、あらゆる食文化が交わる「北海道」。
食と関連のあるお祭りや行事、歴史のある郷土料理もたくさんあります。
北海道へ旅行した際には、ぜひ北海道の食と文化を楽しんでみてはいかがでしょうか。
※料理の誕生時期・発祥地等は諸説あります。
ライター堀江 優子
愛媛県松山市在住。管理栄養士。岡山県倉敷市生まれ。岡山県立大学保健福祉学部栄養学科卒業。大学卒業後に愛媛県松山市で就職し、行政の管理栄養士として20年間勤務後に独立。その後、レシピ開発や執筆、トレーニングジムの個別栄養サポートなどを行う。主宰する「スマイルエプロン 食育と料理教室」では、食育や郷土料理のオンライン料理レッスンも開講しており、子どもの食育や和食・郷土料理の普及啓発に力をいれている。
- 監修協力
- ⼀般社団法⼈YOSAKOIソーラン祭り組織委員会
- 余市町役場 商工観光課
- 北海道義士会
- 参考文献
- ふるさと味の旅 講談社 1989年12月12日 第1刷発行
- 桃太郎電鉄で学ぶ47都道府県 地理・歴史攻略 学研 2022年3月8日 第1刷発行
- 参考サイト
- 農林水産省 (maff.go.jp)
- 明治北海道十勝について | 明治北海道十勝 | 株式会社 明治 - Meiji Co., Ltd.
- フードバレーとかちとは | フードバレーとかち推進協議会 (foodvalley-tokachi.com)
- 生産部会 | JAみねのぶ《峰延農業組合》 (ja-minenobu.or.jp)
- 北海道の食産業発展の歴史/札幌市 (city.sapporo.jp)
- 文化庁HP 100年フード宣言 (foodculture2021.go.jp)