行事と食事 次の年も作物が豊かに実るように、健康でいられるように、幸せがおとずれるようにと願い、人々は自然の神様に、感謝の気持ちを表して1年を通してさまざまな行事をしてきました。

行事と食事の結びつき

季節の行事やお祭りの時に、いつもとちがう特別な料理を食べる習わしがあります。たとえばお正月やひな祭りやこどもの日には、ごちそうや特別な食べ物を用意します。季節の変わり目や人生のふし目に、食べ物への感謝かんしゃをこめて神様にごちそうをおそなえし、神様と同じ物を食べてわざわいをはらい、農作物がたくさん実ること、健康でいられること、幸せがおとずれることを願ってきました。また、行事の日にはしゅんの物を食べて季節感を味わうことも大きな楽しみでもありました。

神社と日本人の食事

神社のお祭りは、神様へ感謝かんしゃすると共に、その地域ちいきの人々を結びつける大切な行事の1つです。神社で行われるお祭りのあとには、地域ちいきの人々がいっしょに食事をする「直会なおらい」とばれる会があります。直会なおらいはもともと神様へのおそなえ物を参列者がいただくことで、人と神様が一体となり、神様に守ってもらうという意味がありました。直会なおらいをして近所の人たちが仲よくなり、結びつきが強くなりました。

お供え物

行事食カレンダー 地域ちいきによって食べる物はことなります)

1月

お正月

雑煮ぞうに、おせちなど

七草ななくさ

七草ななくさがゆ

鏡開き

おしるこ

黒豆/鏡餅

2月

節分

福豆

節分

3月

ひな祭り

さくらもち・はまぐりのい物、ちらしずし

春の彼岸ひがん

ぼたもち、おはぎ

お花見

弁当べんとう・だんご

ひな祭り/ぼたもち/ちらしずし、はまぐりのお吸い物

5月

子どもの日端午たんご節供せっく

かしわもち、べこもち、
ささもち、ちまきなど

かしわもち、ちまき/鯉のぼり

7月

七夕たなばた

そうめん

七夕

7月終わり~8月初めごろ

土用どようのうしの日

うなぎのかば焼き

うなぎのかば焼き

8月

おぼん

そうめん、だんご、もちなど

おぼん/そうめん

9月

十五夜

だんご

秋の彼岸ひがん

ぼたもち、おはぎ

十五夜のおだんご

12月

冬至とうじ

かぼちゃ

大みそか

そば

そば

お正月料理

お正月には、幸せを願っていろいろな意味をこめたおせち料理が用意されます。料理の種類やその意味は地域ちいきや時代によってさまざまですが、新しい年の福をまねく歳神様としがみさまを家にむかえ、神様と家族がいっしょに料理を食べることで、人々はその年の健康と豊作ほうさくをいのってきました。そのさい、祝いばしを使って食べます。両側が細くなっていて、一方を神様が、もう一方を人が使うことを意味しています。祝いばしは、おせちやお雑煮ぞうに結婚けっこん式などの祝いの席で使います。

おせち料理

料理や食材にそれぞれ願いがこめられています。

数の子

数の子はニシンのたまご。ニシンのように子どもがたくさん生まれて、家族がはん栄しますように。

ごまめ(田作り)

農作の肥料ひりょうとして小魚が使われていたことから、豊作ほうさくになりますように。

黒豆

まめに(まじめに元気で)ごせますように。

れんこん

多数のあなで、将来しょうらいを見通せますように。

えび

背中せなかが曲がっていることがお年寄としよりにているため、長生きしますように。

たけのこ

一晩ひとばんで一気に成長するたけのこのように子どもがすくすくと育つように。天に向かってのびるので、出世したり、運勢うんせいが上がったりしますように。

お雑煮

雑煮ぞうには、お正月に神様におそなえした鏡もちを下げたあと、て食べたのが始まりともいわれています。
その地域ちいきでとれる食材を使ったいろいろなお雑煮ぞうにがあります。

〈北海道〉さけといくらの雑煮。海の幸、山の幸などその土地で取れる食材を使って作ることが多い。〈岩手県〉くるみ雑煮。すまし汁のもちをくるみのたれにつけて食べる。〈東京都〉しょうゆ味のすまし汁。とり肉、野菜、かまぼこなどを入れる。〈京都府〉京風雑煮。白みそを使い、さといも、金時にんじんなどを入れる。〈鳥取県・島根県〉しょうゆや砂糖で味を付けた、ぜんざいのようなあずき汁。〈香川県〉あんもち雑煮。白みそを使い、あまいあんを包んだもちを入れる。〈長崎県〉具雑煮。海の幸、山の幸を盛りこんだ具だくさんの雑煮。正月だけでなく、ハレの日にも食べられる。

監修 : 江原絢子えはらあやこ(東京家政かせい学院大学名誉教授めいよきょうじゅ