牛乳 MILK

乳牛について

国内でいちばん多い乳牛「ホルスタイン種」を例に、大きさや食事量などを見てみましょう。

注)体長は肩から尾のつけ根までを斜めに測る方法もあり、その場合の体長は約170cm(点線部分)
ミルクの量
1日に20〜30ℓ
えさ
青草・干し草・サイレージ(乳酸発酵した牧草など)などの粗飼料やトウモロコシや豆などの穀物系の濃厚飼料をバランス良く食べます。
糞と尿の量
糞:20~40Kg
尿:6~12L/日
米や野菜などの堆肥として利用されます。

乳牛の種類

日本の乳牛は、約99%が白黒模様で知られるホルスタイン種です。他にはジャージー種やブラウンスイス種など数種がわずかに飼育されています。

ホルスタイン種

体高:約140cm
体重:約650kg(成雌)
乳量:年間約6,000~8,000kg
オランダからドイツの原産。世界中で最も多く飼育され、体が大きく乳房が発達し乳量が多いです。性格は温和、寒さに強く暑さに弱いのが特徴。乳脂肪率は約3.8%前後。

ジャージー種

体高:約130cm
体重:約400kg(成雌)
乳量:年間約4,000kg
イギリス海峡ジャージー島原産。日本ではホルスタイン種のつぎに頭数が多く、約1万頭が飼育されています。乳牛の中では小型で、体色は淡い褐色。ホルスタインに比べて乳量は少ないが、乳脂肪分が約5%と高いのが特徴です。

ブラウンスイス種

体高:約130cm
体重:約550kg(成雌)
乳量:年間約4,800kg
スイス原産。日本では1,000頭強が飼育され、黒褐色で体は大型です。乳脂肪分は約4%でたんぱく質の含有量が高く、バターやチーズなどの加工乳製品に適しています。

ガーンジー種

体高:約130cm
体重:約450kg(成雌)
乳量:年間約4,000kg
イギリス海峡諸島原産。黒褐色から灰色に近いブラウンで鼻と口の周りが白いのが特長。乳量が少ないため国内の飼育数は希少ですが、乳質の良さからバターやチーズなどの加工乳製品に使われます。

エアシャー種

体高:約130cm
体重:約550kg(成雌)
乳量:年間約4,500kg
イギリススコットランド西部エア州原産。白地に赤褐色の斑紋が多い。耐寒性に優れ、貧しい草地や厳しい環境に強く、高緯度の地域で飼われています。チーズ原料乳として最適です。

ホルスタインが1日に出すミルクの量

母牛1頭は1日に約20~30リットルの生乳を作り出しています。母牛の乳房に浮き出た筋やこぶは血管です。血管を流れる血液こそが乳の源です。胃腸で消化吸収された栄養素が血液によって全身から乳房の乳腺細胞に運ばれます。乳腺細胞が血液中の栄養素を取り込んで乳の成分を作るのです。牛乳1パック分(1リットル)の乳を作るのに必要な血液は400~500リットル。1日の乳量の20~30リットルの生乳を作るには、毎日約1万リットルの血液を乳房に送り込んでいることになります。

牛には胃が4つある

乳牛の主食は牧草で、ほぼセルロースという不溶性食物繊維でできています。私たち人間と違い牛は、このセルロースを体内で分解する仕組みを持っています。それが牛の巨大な4つの胃です。牛は牧草や飼料を食べると、いちばん大きな第一胃に食べ物を送り、その後もう一度口に戻してすり潰します。この行為が「反すう(反芻)」で、牛がつねに口をモグモグさせているのはこのためです。反すうは1日に6~10時間かけて行い、牧草などを消化して小腸で吸収できるように準備します。
第一胃には数百種類の微生物がいて、食べたものを発酵させます。第二胃や第三胃でかき混ぜて砕いて、第四胃で消化液の働きにより消化します。牛は、一日の多くの時間を牧草などを食べて反すうを繰り返すことに費やしています。

乳牛の1日のえさ

乳牛の主食は牧草で、青草なら50~60kg、干し草なら約15kgを1日で食べ、水を60~80ℓ飲みます。多くの酪農家さんは、乳牛の健康管理を考え、粗飼料といわれる牧草と濃厚飼料などをバランスよく与えています。

青草:刈りたての生草状態の牧草です。新鮮で水分が多く含まれ、栄養価が高く、牛は好んで食べます。

乾草:刈った牧草を乾燥させた状態です。乾草は保存期間が青草より長く、水分を減らすことでビタミンやミネラルの成分比率を高め、唾液の分泌を盛んにして胃での分解を促進します。

サイレージ(乳酸発酵させた牧草など):牧草やトウモロコシなどの飼料作物は、乳酸発酵により消化が高まります。また、乳酸発酵により良い香りになり、乳牛の食欲増進と有機酸(乳酸など)が豊富なので乳牛の肥育にも役立ちます。乳酸菌の発酵でカビの繁殖を抑えられ、保存にも適しています。

濃厚飼料:トウモロコシや大麦、大豆、小麦の皮を原料として粉末状にしたふすまなどの高たんぱく質で高カロリーな穀物系の飼料です。

乳牛のライフサイクル

乳牛は哺乳動物なので、子牛を出産しないと乳は出ません。牛は40kgぐらいで生まれ13〜16ヶ月成長すると最初の種付け(受精)をして妊娠します。妊娠期間は約10ヶ月で、出産後300~330日間が毎日搾乳する期間です。

哺育期間:子牛は生まれるとすぐに母牛と離され、子牛用の小屋で育てられます。生後約1週間は、免疫グロブリン成分を含んだ母牛の初乳で育てられます。初乳を飲むことで、お母さん牛と同じ免疫レベルに近づき、感染症から守られます。

育成期間:子牛は生後約2カ月で離乳し、その後の12~14カ月は育成牛専用の牧場などで育てられます。そして生後1年半で初回の人工授精が行われ、280日前後の妊娠期間を経て、生後約2年半で初めての出産を迎えます。

搾乳期間:出産した牛は、その後300 ~330日間毎日搾乳します。出産から約40日後 につぎの人工授精を行い、およそ1年に1回の分娩にします。

乾乳期間: 300~330日の搾乳期間を過ぎると出産に備えて2~3カ月間体を休ませます。出産から次の出産までは12~15カ月で、1頭の牛は、この分娩・搾乳・乾乳のサイクルを3 ~4回繰り返し、5~6年間でその役目を終えます。