バター BUTTER

バターとは?

バターとは、生乳などからつくられたクリームを攪拌し、生じた脂肪粒を集めて固め、練り上げたものです。クリームには脂肪球皮膜たんぱく質(MFGM)に包まれた脂肪球が浮遊し、攪拌すると脂肪球同士がぶつかりあい、MFGM膜が破れた脂肪滴が集まって固まります。

バターの起源・歴史

バターの歴史は古く、起源は定かではありませんが、紀元前2000年ごろのインドの経典や旧約聖書にバターらしきものが記述されています。紀元前500年ごろにギリシャのへロドトスという歴史家が、「馬や牛の乳を木の桶に入れ、激しく振動させ、表面に浮かび上がった脂肪部分をすくい取ってバターをつくった」と記述しており、食用バター製造がこの時代にあったことがうかがわれます。日本への伝来は、仏教とともに渡来したようで、乳を煮詰めた酥(そ)と呼ばれたものが、現在のバターやチーズといわれています。その後の武士の時代には途絶え、18世紀になって長崎の出島にあったオランダ商館でバターが食べられ、明治時代になって日本で初めてのバター製造が始まり、一般的に利用されるようになりました。

バターの種類

バターは、製法の違いと食塩添加の有無で種類が分かれます。

製法による分類

非発酵バター
非発酵バターは、乳酸菌による発酵をさせないクリームを原料としたものです。クセがなく、日本国内で市販されているものの多くはこのタイプです。
発酵バター
原料となるクリームを乳酸菌で発酵させてからつくったものです。昔のヨーロッパの技術では、原料乳からクリームを分離するまでに自然に乳酸発酵が進むため、ヨーロッパでは発酵バターが主流となりました。特有の芳香があり、最近では日本でも増えています。

食塩添加による分類

有塩(加塩)バター
家庭で一般的に利用されているのは加塩タイプのバターで、バターを練圧する工程で1.5%前後の食塩(NaCl)が加えられます。食塩を加えることで風味を良くし、保存性も高まります。
無塩バター
食塩が添加されていない生乳由来の成分だけのバターです。主に製菓用や調理用に利用されています。保存期間は有塩バターより短くなります。無塩で製造しても生乳に由来する塩分が微量に含まれることから、パッケージには「無塩」と表示できなくなり、現在は「食塩不使用」と表示されています。

他にもパンなどに塗りやすいように気泡を含ませてやわらかくしたホイップバターや、バターと表示されていても種類別「バター」ではなく、種類別「乳または乳製品を主要原料とする食品」に分類されるカロリーを抑えたものや、レーズンあるいはガーリックを添加したタイプもあります。
TOPICS

バターは神聖なもの?!

インドをはじめ、ヒンドゥー教徒にとって牛はシヴァ神の乗り物であり、神聖視されています。乳製品は単なる食品以上の役割があり、特にインドの溶かしバターである「ギー」は、食用だけでなく神々に捧げられるなど、宗教的な儀式に用いられます。また、インドの伝承医療法として知られるアーユルヴェーダでは、無塩バターを煮詰め水分やタンパク質を取り除いた純粋な乳脂肪であるこの「ギー」が使われています。

MEMO

バターの定義

バターは、乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令)では、「生乳、牛乳又は特別牛乳から得られた脂肪粒を練圧したもの」で「大腸菌群陰性」のものと定義されています。成分は乳脂肪分80.0%以上、水分17.0%以下と定められ、種類別「バター」と表示されます。