ヨーグルト YOGURT

ヨーグルトとは?

ヨーグルトは「発酵乳」の一種で、乳を乳酸菌や酵母で発酵させたものです。日本国内では、ヨーグルトとしての規格は無く、パッケージの種類別表記は「乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令)」で「発酵乳」と定義された乳製品です。国際規格ではヨーグルトの規格が定められています。

発酵乳・乳酸菌飲料・ヨーグルトの規格

発酵乳・乳酸菌飲料の規格

種類別 ⁄ 項目 無脂乳固形分
(SNF)
乳酸菌数
または酵母数
(cfu ⁄ ml)※1
大腸菌群
発酵乳 生菌タイプ 8.0%以上 1,000万以上 陰性
殺菌タイプ※2 8.0%以上 陰性
乳製品
乳酸菌飲料
生菌タイプ 3.0%以上 1,000万以上 陰性
殺菌タイプ 3.0%以上 陰性
乳酸菌飲料 3.0%未満 100万以上 陰性

※1 CFU(Colony forming unit) シャーレ上のコロニー数
※2 発酵後に75℃以上で15分間殺菌するか、またはこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で殺菌したものは、この限りではない。

ヨーグルトの規格

国連食糧農業機関(FAO)および世界保健機関(WHO)により設置された政府間機関が定める国際食品規格(CODEX:コーデックス)では、「乳酸桿菌のブルガリア菌(ラクトバチルス・ブルガリカス:Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)と乳酸球菌のサーモフィラス菌(ストレプトコッカス・サーモフィラス:Streptococcus thermophilus)の2種類で乳酸発酵しているもの」としていましたが、世界的なトレンドを受けて「あらゆる乳酸桿菌属と乳酸球菌のサーモフィラス菌」により発酵したものもヨーグルトの1種とするようになりました。

サーモフィラス菌
ブルガリア菌

ヨーグルト作りに欠かせない2種類の大切な乳酸菌

欧米では、ヨーグルトと書かれた商品は、必ずブルガリア菌とサーモフィラス菌で乳を発酵することが決められています。前者は長細い「桿(かん)菌」であり、後者は連鎖状の「球菌」です。
これらの乳酸菌はお互いが助けあって短時間に増殖する性質を持っています。生育の早いサーモフィラス菌がまず増殖して、ブルガリア菌の生育(細胞壁の合成と菌体の分割)に必須のギ酸を作ります。ギ酸を取り込んで増殖したブルガリア菌は、サーモフィラス菌の増殖を促すアミノ酸やペプチドを沢山作ります。このように、2種類の乳酸菌は「共生関係」にあり、この作用によって乳糖を短時間に分解利用して乳酸を大量に生成します。この乳酸がヨーグルトに爽やかな酸味を与え、乳たんぱく質のカゼインを固めて独特の滑らかな舌触りを生み出します。すぐれた品質のヨーグルトを作るのには、この2種類の乳酸菌の組み合わせが欠かせません。

発酵乳の起源・歴史

紀元前数千年前の人類が牧畜を始めた時期から、発酵乳の歴史は始まったといわれています。世界中で、牛、山羊、羊、水牛、馬、ラクダなどの乳からさまざまな発酵乳が作られました。日本に伝わったのは奈良時代で、「酪(らく)」と呼ばれた乳製品がヨーグルトのようなものだったといわれています。その後、日本で発酵乳の食文化は定着しませんでしたが、明治時代になって乳牛が輸入され、牛乳を発酵させた「凝(ぎょう)乳」が売り出されます。大正時代にヨーグルトという名称が使われるようになり、本格的に生産されるのは1950年に当社が「ハネーヨーグルト」を発売してからです。プレーンタイプのヨーグルトは、さらに後の1971年に当社が発表した「明治プレーンヨーグルト」が日本初のものです。

発酵乳の種類

市販されている発酵乳には、固形のヨーグルトや液状ののむヨーグルトなどがあります。のむヨーグルトは、発酵した固形のヨーグルトに圧力をかけて液状にしており、薄めたり牛乳を混ぜているのではありません。

プレーンヨーグルト

砂糖や香料、安定剤(寒天・ゼラチン・ペクチンなど)などの添加物を一切加えず、乳を乳酸菌で発酵させただけのヨーグルト。

ハードヨーグルト

乳を発酵させ、安定剤を加えてプリン状に固めたヨーグルト。果汁、甘味料、香料を加えることもある。

のむヨーグルト

発酵して固まったカードを砕いて液状にしたもの。甘味料、果汁、香料などを加えて飲みやすくしたものが多い。

ソフトヨーグルト

発酵して固まったカードをかき混ぜて滑らかにし、甘味料、果汁、果肉、安定剤などを加えてやわらかくしたもの。

フローズンヨーグルト

乳を発酵させたものを攪拌し、アイスクリームと同様に凍結させたもの。

TOPICS

世界にはどんな発酵乳があるの?!

世界中には乳を乳酸菌で発酵させたさまざまな「発酵乳(fermented milk)」があります。有名なものには、黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス地方で作られる「ケフィール」や、東欧からアジアで馬乳から作られる「クミス」、中近東で牛乳や羊乳から作られる「レベン」や「ラバン」、インドやネパールで牛、水牛、ヤク牛や羊の乳から作られる「ダヒ」、西スマトラに伝わる竹筒でバナナの葉をふたにして作られる「ダディヒ」などがあります。
現在、世界中で発酵乳が「ヨーグルト(yogurt)」と呼ばれているのはどうしてでしょうか?これは、1900年代の初め、ロシアの微生物学者のメチニコフが、研究でブルガリア地方を調査した際に、長寿の人が多いことに気付きました。現地では「ヨーグルト」という名前の発酵乳が多食されていたことからメチニコフは、ヨーグルトこそが腸内の腐敗菌の活動を抑制し人々を長寿に導いている食品に違いないと考えました。この「ヨーグルト不老長寿説」の発表により、ヨーグルトの名前は世界中に知れ渡ることになりました。もし、メチニコフが他の地方に出かけていたら、ヨーグルトは全く別の名前になっていたことでしょう。