よくある質問

個別に当てはまらない場合があります。
くわしくは、医療機関を受診してください。

監修・アドバイス

  • 独立行政法人国立病院機構 相模原病院臨床研究センター長 海老澤 元宏先生
  • 十文字学園女子大学 人間生活学部 健康栄養学科 准教授 林 典子先生 (元国立病院機構 相模原病院 臨床研究センター アレルギー性疾患研究部)

食物アレルギーの関与する
乳児アトピー性皮膚炎について

赤ちゃんのときに発症した食物アレルギーは、いつ頃治りますか?

乳児期に発症した食物アレルギーは、専門医のもとで適切な医療を受けることで、3歳頃までに5割、小学校入学頃までに8〜9割の人が治るといわれています。定期的に食物経口負荷試験を受けて、必要最小限の食物除去にすることが重要です。

赤ちゃんに食物アレルギーの症状がみられる場合、授乳中のお母さんの食事はどんな点に気をつけたらよいでしょうか?

赤ちゃんが食物アレルギーと診断された場合、授乳中の母親も赤ちゃんの原因食物の除去が必要になるケースはあまり多くありません。除去が必要な場合でも、赤ちゃんにより除去の範囲は異なり、短期間で解除できることが多いです。例えば、赤ちゃんが鶏卵アレルギーと診断され、母親も鶏卵の除去が必要となった場合、特に重症な鶏卵アレルギー児の母親であっても、鶏卵を少量含む菓子類やパンなどの加工品は食べてよいことが多いです。また母親の除去は、赤ちゃんが離乳食を開始する頃までとなることが多いので、母親の除去が長く続いている場合には主治医に除去の必要性を確認しましょう。
食物アレルギー研究会ホームページより引用)

生まれてくる赤ちゃんが食物アレルギーを発症しないようにするためには、妊娠中や授乳中の食事は鶏卵や牛乳などを控えたほうがよいのでしょうか?

妊娠中の食事から鶏卵や牛乳など特定の食物を除去することで、生まれてくる赤ちゃんの鶏卵アレルギーや牛乳アレルギーの発症を防ぐことができるという科学的な根拠はありません。また、授乳中のお母さんが、赤ちゃんの食物アレルギー発症を予防するために鶏卵や牛乳などの食物摂取を制限することもすすめられていません。妊娠中も授乳中も栄養バランスのよい食事を偏りなく摂ることがなにより大事です。

食物アレルギーがある場合、離乳食の開始は遅らせたほうがよいですか?

食物アレルギーがあっても、離乳食の開始を遅らせる必要はありません。市区町村や病院が開催する母親学級などで指導される厚生労働省の指針(「授乳・離乳の支援ガイド」)に沿って、通常通りおかゆなどから始めましょう。医師から除去を指示された食物以外の食物は利用することができます。新鮮な食材をよく加熱して1さじずつ、赤ちゃんの体調のよいときに様子をみながら与えます。ただし、食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎の疑いがあるときには、まず医師の診断を受けて、皮膚の状態をよくしてから離乳食を開始しましょう。

即時型食物アレルギーについて

複数の食物がアレルギーの原因になる場合はありますか?

お子さんによって複数の食物アレルギーがある場合もあります。年齢が低い頃は複数の食物にアレルギーがあっても、年齢が上がるにつれて治っていくことが多いので、除去食物は成長とともに減っていくことが多いです。

今1歳の子どもが食物アレルギーです。いつ頃治りますか?

乳児期や幼児早期に発症した即時型食物アレルギーは3歳頃までに約5割、小学校入学頃までに8〜9割の人が治ってくるといわれています。治ったかどうかは、食物除去を続けているだけではわかりません。1歳くらいから(離乳食が進んである程度の量をまとめて食べられるようになったら)、定期的に食物経口負荷試験を受けて、食べられる食物や食べられる量を増やすことを目指します。

食物アレルギーの治療によい薬はないですか?

食物アレルギーの治療薬は残念ながらありません。食物アレルギー対策の基本は、症状が出ないように原因食物を除去することです。誤食などで症状が出た場合に症状を緩和させる抗ヒスタミン薬やアドレナリンの自己注射製剤(エピペン®)、湿疹を改善するステロイド外用薬などは必要に応じて処方されます。

経口免疫療法というものが注目されているそうですが、どういうものですか?

経口免疫療法とは、専門医の指示に基づき、原因食物を症状が出ない程度の量を摂取し続けることで体を慣れさせていく治療法です。ときに強い症状が出る可能性があり、一般診療として認められていないので、専門の医療機関でのみ行われています。自己流で行うことは厳禁です。治療の効果はまだ不明な点があり、さらなる研究が待たれるところです。

原因食物によって出る食物アレルギーの症状は違いますか?

食物アレルギーの症状は人によりさまざまです。たとえば、鶏卵アレルギーの場合に、皮膚に症状が出る人もいれば、消化器や呼吸器に症状が出る人もいますし、アナフィラキシーをおこす人もいます。症状から原因食物を推測することはできません。

原因食物の対応について

原因食物の除去は「必要最小限」がよいというのはなぜですか?

食物除去は必要最小限にすることで、選べる食品の選択肢が広がり、調理などでの負担が軽減されます。また、少量であっても食べて症状が出ない量まで食べ進めることは、除去を解除する時期を早めるという報告もあり、除去食物の味に慣れていくというメリットもあります。

食物除去をした結果食べられるようになった食物は、二度とアレルギーをおこす心配はありませんか?

アレルギーをおこす食物が除去解除(除去しなくてよい)になってから、また同じ食物で発症するケースは、基本的にはほとんどありません。

原因食物別の注意と調理の工夫について

どの食物もよく加熱すればアレルギーをおこす力が弱くなりますか?

食物によって異なります。鶏卵などは、加熱によってアレルギーをおこす力が弱くなる傾向がみられますが、牛乳などは加熱してもアレルギーをおこす力はほとんど変わらないといわれています。すべてのアレルゲンが加熱をすればアレルギーをおこす力が弱まるとは限りません。

アクの強い野菜や、手がかゆくなることがあるやまいもなどは、食物アレルギーがある場合は避けたほうがよいでしょうか?

食物中に含まれる化学物質(ヒスタミン、アセチルコリンなど)による症状と食物アレルギーによる反応は直接関連することはまれなので、アクの強い食物を必ずしも避ける必要はありません。

アレルギー症状を抑えるには、n-3系脂肪酸を多く含む植物油や魚油を多く摂ったほうがよいと聞きますが、そうしたほうがよいでしょうか?

食生活を変えることによってアレルギー症状を緩和できるという医学的根拠はまだありません。

アレルギー表示について

表示努力が求められている21品目の中にゼラチンがありますが、ゼラチンでアレルギーがおこるのですか?

日本では1990年代にワクチンに添加されたゼラチンによって発症したゼラチンアレルギーの報告例があります。厚生労働省の指示でメーカーがワクチンからゼラチンを取り除いた後にはゼラチンアレルギーの報告はほとんど認められなくなりました。

食品添加物や調味料に含まれているアレルギー物質は量的には少ないように思いますが、表示されていたらやはり食べてはだめですか?

その人の重症度により、食べられるかどうかは異なります。食品添加物や調味料に含まれているアレルゲンの量では症状が出ない場合が多く、食べられることが多いですが、個々の食品添加物や調味料を摂ってよいかどうかは医師に確認しましょう。

保育所や幼稚園、学校での生活について

アレルギー対応の給食を提供してもらえない場合に、お弁当を持参することになりますが、お弁当は給食の献立のコピー食を作った方がよいのでしょうか?

給食で提供される料理の外観に似せたもの(いわゆるコピー食)をお弁当として作る必要はありません。お子さんがおいしく安全に食べられるものをお弁当として持たせてあげてください。

保育所や幼稚園、学校で誤食の事故が発生したときには、どうすればよいのでしょうか?

万が一誤食の事故が発生してしまった場合を想定して、事前の面談で、症状が出たときの対応を施設側の先生、医療機関と確認しておきましょう。 

食物経口負荷試験の結果から、除去解除(除去しなくてよい)の指示が医師から出た場合には、すぐに給食でも除去解除の対応をしてもらえますか?

解除の対応は年度の途中でもしてもらえることがありますので、施設に相談してみましょう。ただし、除去解除にする場合には、給食で提供される1食分以上の量を自宅で繰り返し食べて問題がないことが確認されている、食後に運動をしても症状が出ないことが確認されている、などの条件をクリアしている必要があります。給食で除去解除の対応にしてもらっても問題ないかを、まずは医師に相談しましょう。