食物アレルギーの診療や社会的対応は、2000年頃からたいへん大きな変貌を遂げています。2002年には、わが国で世界に先駆けてアレルギー物質を含む食品表示が始まり、2005年にはアナフィラキシーの患者さんたちが自己防衛できるように、自己注射用のアドレナリン製剤(エピペン®)も認可されました。最も大きな出来事は、食物経口負荷試験が2006年に入院で、2008年には外来で保険適用の検査として承認されたことです。食物アレルギー診療の手引きとガイドラインも2005年に刊行され、改訂され進化し続けています。
最近では、食物アレルギーと乳児期に診断されても鶏卵などの原因食物を完全除去せずに、できるだけ早期から症状が出ない範囲で少量の摂取を行うことが、重症化させない対策として重要であると考えられています。最新の食物アレルギーの「診療ガイドライン2021」「診療の手引き2023」「栄養食事指導の手引き2022」では、その理念をさらに押し進め、“原因食物を安全に可能な範囲で摂取させる”方向に加えわかりやすい食事指導を目指しています。
食物アレルギーの原因となる食物や発症状況は、時代とともに変化しています。2002年から、国の委託を受けて全国の食物アレルギーの診療に当たる医師の協力による即時型食物アレルギーの全国調査を3年ごとに実施しており、その最新の結果をふまえての検討が、診療・治療研究だけでなく、消費者庁による市販加工食品のアレルギー物質表示や、保育・教育施設等での注意指導などにも反映されています。
本サイトは、食物アレルギーの患者さんや保護者の方に食物アレルギーの正しい知識をお届けしたいと、(株)明治のサポートで立ち上げたものです。こちらの内容も最新の情報・知見を盛り込んで、このたび更新いたしました。
インターネットには、個人の経験だけに基づく情報発信、根拠のない過剰な「除去食療法」の紹介や、特殊な食品を売りつけるようなサイトも未だに見受けられます。そのようなネット上の誤った情報に惑わされないように、このサイトをお読みいただき、食物アレルギーに関する正しい知識を身につけ、適切な対応にお役立ていただければ幸いです。
2024年9月