新生児とはいつからいつまでの期間を指すのでしょうか?この記事では、乳児や幼児との違いや新生児に見られる特徴、育児のポイントについて解説します。
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赤ちゃんが生まれてからの毎日は、喜びとともに、小さな不安や戸惑いもつきものです。特に生まれてすぐの時期には、「どのくらいの期間を“新生児”と呼ぶの?」「乳児や幼児とはどう違うの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。この章では、「新生児期」とはどのような時期を指すのか、また乳児や幼児との違いについて、解説していきます。
新生児とは、生後0日から28日未満の赤ちゃんを指します。この時期は「新生児期」と呼ばれ、赤ちゃんが胎内の環境から外の世界へと適応していく、大きな変化の時期です。
新生児期はさらに細かく、「早期新生児期(生後0日〜6日)」と「後期新生児期(生後7~27日)に分けられます。これは、生後すぐの赤ちゃんの体は、呼吸や体温調節、心臓の動きなどが急激に変化し、特に最初の数日間は体の状態が不安定であるためです。
このため、医学的にも状態の変化を注意深く見守る必要がある期間として、段階的に分類されています。この時期の赤ちゃんは、まだ体の機能が十分に整っておらず、授乳や睡眠、排泄も不規則に繰り返します。まさに、外の世界に慣れていくための準備期間ともいえるでしょう。
赤ちゃんの成長にともなって、その呼び方や特徴も少しずつ変わっていきます。新生児期が終わると「乳児」さらに成長すると「幼児」と呼ばれるようになります。
こうした呼び方の違いは、成長の段階に応じた関わり方やケアの目安として設けられています。
新生児期の赤ちゃんには、体重が一時的に減少したり、肌が黄色っぽくなったりと、驚くような変化がいくつか見られます。
特に初めての育児では、「これって大丈夫?」と不安になる場面も少なくありません。しかし、こうした変化の多くは、生まれたばかりの赤ちゃんが外の世界に順応していく過程で、ごく自然に起こるものです。
あらかじめ知識として理解しておくことで、赤ちゃんの成長を落ち着いて見守ることができるでしょう。この章では、新生児期に見られる代表的な特徴について、医学的な視点を交えながら、解説していきます。
生まれて間もない赤ちゃんは、数日間で一時的に体重が減ることがあります。これは生理的体重減少と呼ばれ、赤ちゃんに特別な異常があるわけではなく、出生後の自然な適応反応として見られる現象です。
●経過と見られる変化
生理的体重減少は、生後2~3日頃にピークを迎えたあと、7~14日程度で出生体重に戻り、そのあとは安定して体重が増加していきます。特に生後1週間程度で体重が回復していく流れが一般的であり、これは赤ちゃんが授乳やミルクの量を少しずつ増やし、体のリズムが整ってくるためです。
●原因(メカニズム)
出生後の赤ちゃんは、皮膚や呼吸によって水分が多く失われるうえに、排泄も頻繁です。一方で、授乳はまだ安定しておらず、摂取量が排出量に追いつかない状態にあります。このような状況から、一時的に体重が減少するのは自然な流れといえます。
参照元: 愛媛県庁/赤ちゃんの特徴(新生児黄疸、生理的体重減少について)
生後まもない赤ちゃんの肌や白目が黄色く見えることがあります。
これは生理的黄疸と呼ばれるもので、多くの赤ちゃんにみられる自然な変化です。特別な治療を必要としないことがほとんどで、赤ちゃんが生まれてきた環境に適応していくなかで起こるものとされています。
●経過と見られる変化
黄疸は、生後2~3日頃からあらわれ、生後4~5日でピークに達することが多いとされています。そのあと、生後7~10日頃までに自然とおさまっていくのが一般的な経過です。
●原因(メカニズム)
赤ちゃんは胎内にいるあいだ、胎盤を通して酸素を取り込むために大量の赤血球を持っています。出生後はその一部が不要となり、赤血球が分解される過程でビリルビンという黄色い色素が生じます。
このビリルビンは本来、肝臓で処理されて便と一緒に排出されますが、新生児の肝臓は未熟なため、処理が追いつかず一時的に体内に蓄積され、肌や白目が黄色く見えるのです。
●観察のポイント
黄疸が強くなったり長引く場合は、母乳性黄疸やその他の病的な黄疸の可能性もあります。肌や白目の色だけでなく、赤ちゃんの機嫌・哺乳力・尿や便の回数・色など、全身の様子を併せて観察することが大切です。元気がない、哺乳力が弱いといった場合は、早めに小児科を受診するようにしましょう。
生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ表情に大きな変化が見られない時期です。ですが、ふとした瞬間に、にっこりと笑ったような表情を見せてくれることがあります。これが新生児微笑(しんせいじびしょう)と呼ばれるもので、医学的には反射による無意識の表情とされています。お世話をしている方にとっては、赤ちゃんが初めて見せてくれた笑顔のようにも感じられる、とても特別な瞬間です。
特に、慣れない育児のなかでこの表情に出会えたときは、思わず笑顔になったり、ホッと心が和らいだりする方も多いのではないでしょうか。こうした表情も、赤ちゃんが少しずつ外の世界に順応していくサインの一つです。
新生児には、生まれつき備わっている原始反射と呼ばれる反応がいくつかあります。これらは赤ちゃんが生きていくために必要な、無意識に起こる動きで、成長とともに自然に見られなくなっていくのが特徴です。
原始反射にはさまざまな種類があり、それぞれに発現する時期や消失の目安が決まっています。反射の出現や消失の状態は、赤ちゃんの神経系の発達をみるうえでも一つの指標となります。ここでは、新生児期に見られる代表的な原始反射を4つご紹介します。
モロー反射は、新生児に見られる原始反射の一つで、急な音や体の動きに反応して、両腕を大きく広げたあと、抱きつくように腕を閉じる動きが見られます。驚いたような様子に見えることから、驚愕反射とも呼ばれます。
この反射は出生直後から見られ、生後4〜5ヵ月頃までに自然に消失するのが一般的です。反応に左右差がある、極端に弱い、まったく見られないといった場合には、神経系の発達に何らかの異常がある可能性もあります。そのため、こうした傾向が見られた際には、早めに医療機関を受診することがすすめられています。
探索反射は、赤ちゃんが本能的に母乳や哺乳瓶を探すための反応で、赤ちゃんの頬や口の周りを軽く触れると、刺激のあった方向に顔を向け、口を開けて吸いつこうとするのが特徴です。
この反射はルーティング反射とも呼ばれ、授乳の際にスムーズに乳首を探して吸いつくために役立つ大切な反射です。探索反射は生後すぐから見られ、通常は生後3〜4ヵ月頃までに自然に消失します。
吸てつ反射は、口に触れたものに自然と吸いつこうとする動きのことで、赤ちゃんが母乳やミルクを飲むために必要な、もっとも基本的な原始反射の一つです。
赤ちゃんの唇や口のなかに乳首や指などが触れると、自動的に吸う動作をおこなうのが特徴です。この反射は、出生直後から見られ、生後4〜6ヵ月頃までに自然に消失します。
把握反射は、赤ちゃんの手のひらに指などが触れると、自動的にギュッと握り返す動きのことで、手掌把握反射(しゅしょうはあくはんしゃ)とも呼ばれます。
この反射は、本能的に母親などにしがみつくための原始的な動きとされており、新生児期の赤ちゃんによく見られます。通常は出生直後から見られ、生後3〜4ヵ月頃までに自然に消失します。
新生児の視力は未発達で、生まれたばかりの赤ちゃんがはっきりと見えるのは、20〜30センチ程度のごく近い距離とされています。これは、抱っこをしたときにちょうど見える、お世話をする人の顔との距離です。視線が合ったり、じっと見つめたりすることもありますが、遠くのものや細かい形・色などはまだ認識できません。生後しばらくは、光や大きな動きへの反応が中心で、視力はゆっくりと発達していきます。赤ちゃんが視線を動かしたり、見つめたりする様子は、視覚の成長のサインとして優しく見守っていきましょう。
新生児は、視力や聴力こそ未熟なものの、触覚や嗅覚、味覚などの感覚は生まれつき敏感に働いており、外部からの刺激にしっかりと反応する力をもっています。例えば、肌に触れる感覚や、周囲のにおい、母乳の味などに対して敏感であり、これらの刺激を「心地よい」「不快」などと感じとり、泣いたり表情を変えたりといった反応につながっていきます。また、こうした感覚刺激への反応は、前の章で紹介した原始反射にも表れます。
頬に触れると吸いつこうとする探索反射や、口に触れたものを吸う吸てつ反射などは、赤ちゃんが感覚を通して周囲と関わっていく大切な働きといえるでしょう。
新生児期の赤ちゃんは、授乳・睡眠・排泄を短い周期でくり返しながら、少しずつ外の世界の生活リズムに適応していきます。ここでは、それぞれの目安についてご紹介します。
新生児の授乳回数は、1日に8〜12回程度が目安とされています。これはおよそ2〜3時間おきの授乳に相当し、昼夜問わずこまめに授乳が必要です。赤ちゃんはおなかがすくと泣いて知らせてくれるため、欲しがったときに与えるというスタイルが基本となります。個人差はありますが、赤ちゃんのサインに合わせて無理なく授乳をおこなうことが大切です。特に母乳育児では、頻回授乳(ひんかいじゅにゅう)が母乳分泌の促進にもつながりますので、赤ちゃんのペースに合わせた授乳を心がけましょう。
ミルクをあげる間隔については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
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新生児は、1日のうち16~20時間ほどを眠って過ごすといわれています。
ただし、この時期の睡眠は未熟で、2〜3時間おきに目を覚まし、授乳や排泄をするサイクルが基本です。眠る時間が細切れになるため、「思うように寝てくれない」「夜中に何度も起きる」と不安になるかもしれませんが、新生児にとって自然なリズムです。成長とともに、少しずつ昼と夜の区別がつきはじめ、生活リズムも徐々に整っていきます。最初は不規則でも、赤ちゃんのペースに合わせて見守っていくことが大切です。
新生児の赤ちゃんは、消化機能や膀胱のコントロールが未熟なため、排泄の回数も多いのが特徴です。うんちは1日に5〜10回ほど、おしっこは1日15〜20回程度が目安とされています。授乳のたびに排泄することも多く、特に母乳育児では便の回数が多くなりやすい傾向があります。この時期の排泄は、赤ちゃんの体の働きが順調であるサインでもあるため、回数が多くても心配はいりません。おむつの交換はこまめにおこない、肌トラブルを防ぐようにしましょう。
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参照元: 八戸市立市民病院/新生児の赤ちゃん
生まれたばかりの赤ちゃんとの生活は、喜びとともに戸惑いや不安もつきものです。特に初めての育児では、「これでいいのかな?」と迷うことも少なくありません。だからこそ大切なのは、赤ちゃんのお世話だけでなく、育てる人自身の心と体をいたわること。一人で抱え込まず、まわりに頼ることも大切です。ここでは、毎日を少しでも安心して過ごすために、意識しておきたい育児のポイントをご紹介します。
新生児期の育児では、昼夜を問わず赤ちゃんのお世話が続き、気付かないうちに心身の負担が蓄積していきます。特に夜間に十分な睡眠がとれなかったり、慣れない育児への緊張が続いたりすると、少しずつ体調を崩してしまうことも少なくありません。無理をしてがんばりすぎてしまうと、産後の回復が遅れたり、不調につながったりすることもあります。赤ちゃんのケアを優先することはもちろん大切ですが、育てる人自身が健康であることも、同じくらい大切です。赤ちゃんと向き合う毎日のなかで、周囲の手を借りながら、休めるときにしっかり休むことを心がけましょう。
新生児期の育児は、どうしてもママ一人で抱え込んでしまいがちです。休む暇もなく続くお世話に、心身ともに疲れを感じることもあるでしょう。ですが、育児はひとりで頑張りすぎなくて大丈夫です。家族やパートナー、周囲の人に頼れるところは遠慮せずにサポートをお願いしてみましょう。ほんの少しでも、だれかと役割を分担できることで、気持ちにも余裕が生まれます。育児は、ママだけの責任ではありません。赤ちゃんをみんなで見守っていくという意識をもつことで、負担が軽減され、よりあたたかい育児環境が整っていきます。
新生児の赤ちゃんは、空腹や眠気、不快感など、すべてを泣くことで伝えようとします。どうしたらよいのか戸惑うこともあるかもしれませんが、まずは落ち着いて様子を見守りましょう。泣き方や表情を観察しているうちに、少しずつ赤ちゃんの気持ちがわかるようになっていきます。すべてに過剰に反応しなくても大丈夫です。赤ちゃんのペースに寄り添いながら、ゆっくり向き合っていきましょう。
新生児期は、赤ちゃんがこの世界に少しずつ慣れていくための、大切な準備期間です。体の機能が未熟なため、授乳や睡眠、排泄なども不規則になりやすく、赤ちゃんの様子に戸惑うこともあるかもしれません。ですが、こうした変化や特徴の多くは、赤ちゃんの健やかな成長の一環として見られるものです。
不安なときには、一人で抱え込まず、まわりの人や専門家を頼りながら、少しずつ赤ちゃんとの暮らしに慣れていきましょう。「明治 ほほえみクラブ」では、育児に関するお悩みを電話でご相談いただける「明治 赤ちゃん相談室」を設けています。
不安なとき、誰かに聞いてほしいときに、ぜひご利用ください。
また、赤ちゃんの健やかな成長を支えるミルクとして、「明治ほほえみ」をご用意しています。母乳が足りないときや、育児をサポートする一つの手段として、ぜひお役立てください。