【看護師監修】哺乳瓶の消毒はいつまで必要?煮沸・電子レンジの違いも紹介

赤ちゃんの健康を守るため、哺乳瓶の消毒は欠かせません。この記事では、消毒が必要な時期や方法の違い、旅行や災害時に役立つ簡易消毒の工夫を紹介します。

この記事の監修者

  • 氏名:繁 和泉(しげ いずみ)
    経歴:看護師、予防医学士
    病院・クリニックにて外科・小児科を中心とした臨床経験を積んだのち、予防医学士の資格を取得。現在は、医療の現場で得た知見をもとに、妊娠・出産・育児に関するコラム執筆や健康啓発活動をおこなう医療ライターとして活動中。二児の母としての経験も活かしながら、日々、赤ちゃんとご家族の健やかな生活を支える情報発信に取り組んでいます。

哺乳瓶の消毒の必要性

赤ちゃんにとって、哺乳瓶は毎日の栄養源であるミルクを飲むために欠かせない道具です。しかし、正しく管理されていない哺乳瓶は、雑菌や病原菌が繁殖する原因となり、体調不良や感染症のリスクを高めます。

免疫力が未発達な新生児期から乳児期前半は、わずかな菌でも健康への影響が出る可能性もあり、洗浄だけでなく消毒も欠かせません。ここでは、なぜ哺乳瓶の消毒が必要なのかについて解説します。

赤ちゃんは免疫力が未発達だから

赤ちゃんは、生まれる前に母親から胎盤を通じて免疫物質(移行抗体)を受け取り、生後しばらくはその働きによって病気から守られています。移行免疫の効果は生後数ヵ月から徐々に弱まりますが、反対に6ヵ月頃からは赤ちゃん自身の免疫機能が少しずつ発達し始めます。

移行免疫が減り始めてから赤ちゃん自身の免疫力が十分になるまでは、抵抗力が十分ではなく、わずかな細菌やウイルスでも感染症や下痢などの症状を引き起こす可能性もあります。免疫が未発達な時期は、哺乳瓶を通じた菌の侵入を防ぐためにも、毎回きちんと消毒をおこなってください。

哺乳瓶は雑菌が繁殖しやすいから

ミルクや母乳はそもそも栄養が豊富で、雑菌が繁殖しやすいものです。加えて哺乳瓶は、パーツの隙間やつなぎ目などにミルクや母乳が残りやすく、赤ちゃんの唾液に含まれる菌も混ざることで、雑菌が繁殖しやすい環境になります。

哺乳瓶の乳首やキャップの溝、パッキン部分などは汚れが入り込みやすく、洗浄だけでは完全に菌を取り除くことが難しい構造です。人肌程度の温かさや湿度があると、短時間で菌が増えるため、洗浄後は必ず煮沸・薬液・スチームなどの方法で消毒し、雑菌の繁殖を抑えましょう。清潔に保たれた哺乳瓶は、赤ちゃんの消化器系や全身の健康を守ることにつながります。

哺乳瓶の消毒はいつまで必要?頻度は?

哺乳瓶の消毒は、赤ちゃんの健康を守るうえで欠かせない衛生管理の一つです。赤ちゃんの免疫が未発達な時期は、一般的な洗浄だけでは不十分な場合があるため、消毒までおこなうことが望ましいです。

一方で、成長とともに免疫力が高まってくると、消毒の必要性も徐々に変化していきます。ここでは、生後6ヵ月頃までの消毒の重要性と、そのあとの対応について解説します。

消毒が必要な時期の目安

赤ちゃん自身の免疫が未発達な生後6ヵ月頃までは、厚生労働省のガイドラインでも哺乳瓶の使用後には洗浄と消毒が重要である旨が明記されています。新生児期から生後6ヵ月頃までは、赤ちゃんがわずかな菌でも体調を崩すことがあるためです。

赤ちゃんの飲むミルクの残りかすは、短時間で雑菌が繁殖しやすい特徴があります。そのため、哺乳瓶や乳首、スプーンなどの調乳や授乳に使用する器具は、使用のたびに洗浄し、しっかり乾燥させたうえで煮沸や薬液、スチームなど、いずれかの方法で消毒しましょう。

生後6ヵ月頃の赤ちゃんの発育・発達については、こちらのページでも詳しく確認できます。

関連記事:ほほえみクラブ 6ヵ月の赤ちゃんの発育と発達

6ヵ月以降の対応

生後6ヵ月を過ぎると、離乳食が始まり、指をくわえたり、おもちゃを口に入れたりと、手や物を介して常在菌(日常的に体内に存在する細菌など)に触れる機会が増えます。日常的な常在菌との接触は、免疫力を高めるうえでも重要な発育過程です。

この時期は赤ちゃん自身の免疫力も高まってくる頃なので、毎回の消毒は必須ではなく、丁寧な洗浄と十分な乾燥で対応できるようになります。

ただし、体調が悪いときや外出先など衛生状態に不安がある環境では、引き続き消毒を取り入れると安心です。また、早産児や免疫力が低い赤ちゃんの場合は、医師や助産師の指導を受けながら消毒の継続の有無を判断しましょう。

哺乳瓶の基本的な洗浄手順

哺乳瓶の消毒をおこなう前に、まずは正しい洗浄が欠かせません。洗浄が不十分だと、消毒をしてもミルクの残りや汚れが残り、消毒の効果が出ないだけでなく、雑菌繁殖の原因になります。厚生労働省のガイドラインでも、器具の洗浄は「十分に洗う」ことが最初のステップとして明記されています。ここでは、安全で効果的な洗浄方法を3つのポイントに分けて解説します。

参照元:厚生労働省ガイドライン(2.1.3 哺乳及び調乳器具の洗浄と滅菌)

洗浄前に手をしっかり洗う

哺乳瓶に触れる前には、必ず石けんと清浄な流水で手を十分に洗いましょう。手指に付着した菌や汚れが器具に移らないようにするためです。爪の間や指の間まで丁寧に洗ってください。濡れた手は清潔なタオルやペーパータオルで水分を拭き取ります。

パーツごとに洗浄する

哺乳瓶は本体・乳首・キャップ・調乳に使用したスプーンなど、分解できる部分や接触する部分をすべて外して洗います。熱い石けん水などを使って粉ミルクの残りを完全に除去してください。

特に乳首やネジ部分の溝は汚れがたまりやすいので、専用ブラシややわらかいスポンジを使って隅々まで洗いましょう。

洗浄後は清潔な水ですすぐ

石けん成分やミルクの残りが器具に付着したままだと、消毒の妨げになり、汚れが赤ちゃんの口に入る恐れもあります。洗浄後は、必ず清潔な流水で丁寧にすすぎましょう。流水はパーツ全体にまんべんなくかけ、泡や汚れが残っていないことを確認します。

哺乳瓶の消毒方法と手順

哺乳瓶の消毒には、大きく分けて「煮沸消毒」「薬液消毒」「スチーム消毒(電子レンジや専用除菌器)」の3つの方法があります。

それぞれのメリット・デメリットは以下のとおりです。

方法 メリット デメリット
煮沸消毒 ・低コストで道具もシンプル
・短時間で高い殺菌効果
・火を使うため外出先では難しい
・耐熱性のない製品には使用不可
薬液消毒 ・火や加熱を使わず安全
・耐熱性のない製品にも対応可能
・外出先でも使用できる
・薬液のにおいや味が残ることがある
・薬液の交換や保管に注意が必要
スチーム消毒 ・短時間で消毒可能
・専用器なら乾燥まで一括で可能
・薬液不要で手軽
・耐熱性のない製品には使用不可
・専用容器や器具の購入が必要

参照元:厚生労働省ガイドライン(2.1.3 哺乳及び調乳器具の洗浄と滅菌)

ここからは各方法の手順とポイントを解説します。

煮沸消毒

煮沸消毒は、沸騰したお湯で哺乳瓶や乳首を一定時間煮る方法です。

鍋にたっぷりの水を入れ、哺乳瓶とパーツを完全に水に沈めてから火にかけます。水が沸騰したら5分程度煮沸し、清潔なトングやピンセットで取り出してから乾燥させます。煮沸する場合は耐熱性のある哺乳瓶かどうかを事前に確認しましょう。

薬液消毒

薬液消毒は、専用の消毒液に哺乳瓶や乳首を一定時間浸ける方法です。容器に規定量の水と消毒液を入れ、分解したパーツを完全に沈めます。通常は1時間程度で消毒が完了し、そのまま容器内で保管できる商品もあります。火や加熱を使わないため、耐熱性のないプラスチック製品にも使用可能です。

スチーム消毒(電子レンジ、専用除菌器)

スチーム消毒は、専用容器に水と哺乳瓶を入れ、電子レンジや専用除菌器で加熱し、高温の蒸気で消毒する方法です。電子レンジを使用する場合は、耐熱哺乳瓶であることを確認し、容器のフタをしっかり閉めて加熱してください。

加熱時間は機種や容器によって異なりますが、数分程度で完了するため時短に適しています。専用除菌器では消毒から乾燥まで一度におこなえる製品もあり、忙しい家庭にも便利です。

哺乳瓶を消毒したあとはどうする?

哺乳瓶をしっかり消毒しても、そのあとの扱い方が間違っていると再び雑菌が付着してしまう可能性があります。厚生労働省のガイドラインでも、消毒後は再汚染を防ぐための衛生的な管理が推奨されています。ここでは、安全に使用するためのポイントを解説します。

消毒したトングで取り出す

消毒後の哺乳瓶や乳首を素手で触ると、手の常在菌や周囲の雑菌が付着してしまいます。取り出す際は、必ず消毒済みのトングなどを使用しましょう。トングも哺乳瓶と同じように洗浄・消毒しておくことで、より衛生的に取り扱えます。

清潔な場所に保管する

すぐに使わない場合は、哺乳瓶全体にカバーをかけて清潔な場所に保管します。保管場所は、ほこりや油煙、ペットの毛などが入りにくい戸棚や専用ケースが理想です。保管する際には、瓶や乳首、乳首カバーをセットしておくことで内部の汚染を防げます。

使う直前まで保管する

消毒済みの哺乳瓶は、使う直前に取り出すのがよいでしょう。長時間放置すると、空気中の細菌やカビの胞子が付着するリスクが高まります。授乳のタイミングに合わせて、事前に準備しておくとスムーズに授乳できます。

参照元:厚生労働省ガイドライン(2.1.3 哺乳及び調乳器具の洗浄と滅菌)

旅行・災害時における哺乳瓶の消毒

旅行や災害時は、自宅のように煮沸や電子レンジで哺乳瓶を消毒することが難しい場合もあります。災害時はもちろん、外出先などでも赤ちゃんに安全な授乳環境を整えるためには、携帯しやすく簡単に使える方法や代替手段を知っておくことが大切です。赤ちゃんのための防災グッズについては、こちらの記事もぜひ参考にしてください。

関連記事:ほほえみクラブ 赤ちゃんがいる家庭の「防災対策」を考える

簡易消毒の方法

携帯用の薬液タブレットを使えば、外出先や避難所でも簡単に哺乳瓶を消毒できます。専用容器や清潔なバケツに水を入れ、タブレットを溶かして哺乳瓶や乳首を浸すだけで、雑菌を除去可能です。薬液は常温で使用できるため、電源や加熱設備が必要ありません。使用後は清潔な水でしっかりすすぎ、薬液成分が残らないようにしましょう。

使い捨て用品や液体ミルクの活用

哺乳瓶の消毒ができない場合は、使い捨ての哺乳瓶や液体ミルクを活用する方法もあります。使い捨て哺乳瓶は個包装されているため、開封直後にそのまま授乳が可能です。また、液体ミルクや粉ミルクのキューブタイプを利用すれば、調乳の手間を減らし、衛生面のリスクも軽減できます。特に液体ミルクは常温保存できるため、災害時の備蓄にもおすすめです。

関連記事:明治ほほえみ らくらくミルクの特徴

哺乳瓶の正しい消毒で赤ちゃんの健康を守ろう

哺乳瓶の消毒は、免疫力が未発達な赤ちゃんを雑菌や病原菌から守るために欠かせない習慣です。生後6ヵ月頃までは、哺乳や調乳に使用した器具を使うたびに洗浄・消毒し、清潔な状態を保つことが大切です。6ヵ月以降は発達段階や生活環境に合わせて洗浄中心のケアへと移行できますが、衛生管理の意識は持ち続けましょう。

消毒は、煮沸・薬液・スチームなどの方法を状況に応じて使い分け、消毒後は再汚染を防ぐための保管方法を徹底することもポイントです。また、旅行や災害時には携帯用薬液や使い捨て用品、液体ミルクなどを活用し、赤ちゃんにとってできるだけ安全な授乳環境を確保してください。

赤ちゃんの健やかな成長のためには、日々の小さな衛生習慣がとても重要です。ミルク作りに使用する哺乳瓶を清潔に保ち、健康に配慮した授乳ができる環境を整えてあげましょう。

乳児用ミルク「明治ほほえみ」は、こうした日常の清潔習慣をサポートします。特に、消毒が難しい状況では「らくらくミルク」が安心です。哺乳瓶不要でそのまま飲ませられる液体タイプなので、非常時にも役立ちます。また、日常使いにも便利な「らくらくキューブ」は、キューブタイプで計量が必要ありません。清潔さを保ちながらスムーズに調乳できるため、忙しい子育ての日々に最適です。乳児用ミルクも活用しながら、赤ちゃんの成長を見守っていきましょう。

明治ほほえみ