【医師監修】新生児の成長曲線とは?成長曲線を下回るときの対策について

成長曲線は、新生児期に限らず赤ちゃんの発育が順調かを判断する大切な指標です。平均値や見方、曲線を下回ったときの注意点や対策をまとめました。

この記事の監修者

  • 氏名:井上信明
    経歴:医師・小児科専門医・指導医
    日本、アメリカ、オーストラリアにて診療してきました。科学的根拠に基づく医療の提供を通じ、子どもたちとそのご家族に、安全と安心を届けることを意識しています。

成長曲線とは?

まず、成長曲線の意味と、なぜその観察が重要なのか解説します。

成長曲線の基本

成長曲線の正式名称は「乳幼児身体発育曲線」といい、新生児に限らず、乳幼児期の子どもたちの身長や体重の変化を、成長過程に沿ってグラフにしたものです。横軸に子どもの年齢あるいは月齢、縦軸に身長や体重を表しており、発育の評価に用いられる基準値がわかります。
この基準値は、10年ごとに日本国内で実施されている乳幼児身体発育調査の結果をもとに作成されており、日本人特有のものです。ちなみに世界のさまざまな国で成長曲線が用いられています。

成長曲線が重要な理由

成長曲線は、すべての母子健康手帳に男女別に掲載されていますが、なぜ必要なのでしょうか?

それは、子どもの身長や体重が適切に増加しているか、評価するための基準だからです。つまり、この曲線と新生児の赤ちゃんの身長や体重の計測値を照らし合わせることで、赤ちゃんがしっかりと成長できているかが確認できます。もし体重の増え方が成長曲線から大きく外れるようなことがあれば、栄養が不足していたり、何らかの病気が隠れていたりする可能性が考えられます。

新生児の平均身長・体重の目安

新生児の一般的な身長や体重がどのくらいなのか、その目安を紹介します。

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出生時の中央値【男女別】

令和5年度に実施された乳幼児身体発育調査の結果によると、生まれたときの赤ちゃんの身長および体重の中央値は、男子:身長49.4cm・体重3.06kg、女子:身長48.8cm・体重2.95kgとなっています。
また生後30日の時点では、男子:身長53.4cm・体重4.15kg、女子:身長52.4cm・体重3.91kgとなっています。

新生児期の標準的な増え方

新生児期の赤ちゃんは、ミルクがしっかりと飲めるまで少し時間がかかります。そのため、生まれてから数日間は体重が減ってしまうのが正常です。「生理的体重減少」と呼ばれるこの現象は、生後1週間以内にみられ、通常は生まれたときの体重の10%未満でおさまります。

生理的体重減少が落ち着くと体重が増え始めます。新生児期の赤ちゃんであれば、毎日25〜30g程度の体重増加がみられ、生後1ヵ月で1kgほど増えます。それに合わせて身長は約4cm伸びています。

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母子健康手帳の成長曲線の見方

母子健康手帳に記載されている成長曲線の見方を解説します。

パーセンタイルとは

パーセンタイルとは、ばらつきのあるデータを小さい順に並べたとき、ある値が全体を100としたときの何番目にあるかを表すものです。

例えば、母子健康手帳に掲載されている成長曲線で25パーセンタイルであれば、同じ年齢の同じ性別の子どもが100人いるとしたとき、小さいほうから25番目にある、ということです。成長曲線では、最も小さい値が3パーセンタイル、最も大きい値が97パーセンタイルとなっており、真ん中の50パーセンタイルは、中央値と同じです。このように基準値で比較することで、子どもの成長の程度をより正確に判断できます。

グラフの記入方法と見方

具体的にどのように母子健康手帳の成長曲線に赤ちゃんの測定値を記入し、その推移を見るのかについて説明します。
母子健康手帳に掲載されている成長曲線には、生後12ヵ月までのものと、1歳以降のものがあります。生まれてから最初の1年間ほどは、他の年代に比べて身長や体重が増えるスピードが早く、その変化をしっかりと確認する必要があることから、1歳前後で区別して作られています。

計測した値を記入する際には、まず性別と年齢あるいは月齢から、適切な曲線の図を選びます。そのうえで、計測したときの歳(横軸)と計測した値(縦軸)が合う点に印をつけておきます。この印を成長に合わせて追うことで、身長や体重の発育の度合いを確認できます。

なお身長や体重の増加には、個人差があります。計測した時点での大きさを他の赤ちゃんと比べるのではなく、本人のペースで曲線の変化に合わせて増えていっているようであれば、基本的には心配する必要はありません。

早産児・低出生体重児の場合

妊娠37週未満で生まれた早産児、また2,500g未満で生まれた低出生体重児は、満期で生まれた赤ちゃんや2,500g以上で生まれた赤ちゃんと同じ成長のパターンをとらないことが知られています。

早産児の場合は、出産予定日(妊娠40週)から修正した月齢で考えます。例えば、妊娠30週で生まれたなら、生まれてから12週(3ヵ月)が経過しても、修正生後2週と考えて成長曲線に計測値を記録します。あるいは早産児のために開発された成長曲線を利用することもあります。合併する病気にもよりますが、一般的に早く生まれた影響は3歳から6歳くらいまでに解消されると考えられています。

低出生体重児の場合は、生まれたときの体重別に日本人用の成長曲線が作られたものもあるため、そちらを参考にするのもよいでしょう。

参照:医療機関退院後の低出生体重児の身体発育曲線(2022年)

成長曲線における体重の評価方法

成長曲線は、赤ちゃんの体重の増え方が標準的な範囲内にあるかを確認するために重要です。特に新生児期における体重の増え方の評価は、赤ちゃんの健康状態を把握するうえで欠かせません。どのような状況で注意が必要か、その評価のポイントを解説します。

体重増加不良を評価する基準

成長曲線で体重を評価する場合、体重が増えすぎる場合となかなか増えない場合が想定されます。ただ一般的に新生児期に問題となるのは、体重が増えない場合です。

体重の増え方が十分ではないと判断する基準は、生まれたときの体重によって異なります。主に次の3パターンです。

  • 出生時の体重が成長曲線の10パーセンタイル未満の場合は、体重が基準線を1つ以上横切って低下するとき
  • 出生時の体重が成長曲線の10〜90パーセンタイルの場合、体重が基準線を2つ以上横切って低下するとき
  • 出生時の体重が成長曲線の90パーセンタイル以上の場合、体重が基準線を3つ以上横切って低下するとき

またこれとは別に、体重が3パーセンタイル未満となるときは、いかなる場合であっても体重増加不良として注意が必要です。

ただし、「この基準に合致したら絶対に異常がある」というわけではありません。実際には赤ちゃんの全身の状態なども含めて判断するため、基準だけにとらわれないようにしましょう。

この基準は新生児期に限ったものではなく、授乳期の赤ちゃんに共通しています。また母子健康手帳に掲載されている成長曲線には、細かい基準線が書かれていないものもあります。実際には、医療機関で体重を計測したうえで評価することになるでしょう。

期待される体重増加量

先にもご紹介しましたが、新生児期の体重増加量は毎日25~30g程度、生後1ヵ月で1kgほど増えます。

また生後数日間は、生理的体重減少のためにどうしても体重が減ってしまいます。ただ生後1週間ほどもすれば、徐々に生まれたときの体重に戻ります。なお生理的体重減少は、生まれたときの体重の10%未満でおさまります。

評価時の注意点

新生児期の赤ちゃんを、成長曲線を使って評価する際の注意点について説明します。

新生児期の赤ちゃんの体重は、生理的に減少する期間を過ぎると基本的に毎日増加します。もし体重が増えない日々が続くのであれば、何か問題が発生している可能性があります。したがって、新生児期の赤ちゃんの体重は毎日計測することが理想です。しかし、1日の変化が25〜30g程度の体重を自宅で毎日計測することは、なかなか容易ではありません。

そこで計測は1週間程度まとめておこなったり、生まれた産院などに相談して赤ちゃん用の体重計を利用させてもらうのもよいでしょう。

何よりも赤ちゃんの全身状態をしっかりと見ることが大切です。機嫌はよいか、しっかりと授乳や排泄ができているか、眠れているかなど、総合的に赤ちゃんを見てあげて、異常を感じたらその都度体重を測り、体重の変化を確認するのが望ましいです。

体重が成長曲線を下回るときの対策

赤ちゃんの体重が成長曲線を下回っていると大きな不安を感じるかもしれません。しかし、赤ちゃんの体重の増え方には個人差があるため、まずは落ち着いて状況を把握し、適切な対策を講じることが重要です。ここでは、具体的な対処法と、必要に応じた医療機関への相談について解説します。

授乳状況を詳しく確認する

一番の原因は、授乳がうまくできていないことです。新生児期の赤ちゃんは、上手にミルクを飲むのに少し時間がかかる傾向があります。一般的には左右の乳房で合計20〜40分程度の時間がかかります。

もしそれ以上の時間がかかる、授乳していると苦しそうな呼吸をして休みながらでなければ飲めない、授乳後も乳房の張りが授乳前と変わらない、などの状況があるようなら、うまく哺乳できない原因があるかもしれません。

水分・栄養バランスなどを工夫する

もし母乳が十分に出せていないと感じるようであれば、ママはしっかりと水分を摂り、バランスのよい食事を心がけてください。また育児のストレスを軽減するために、家族の応援もお願いしてみましょう。
それでも母乳が増えない場合は、無理をせずに、乳児用のミルクを活用しましょう。

かかりつけ医に相談する

赤ちゃんに以下のような様子が見られる場合は、早めにかかりつけ医を受診することをおすすめします。

  • 体重の変化に問題がある場合
    • 出生時より体重が10%以上減少
    • 生後3週間が経過しても出生時体重より軽い
  • 赤ちゃんがうまく母乳を飲めないと感じる
  • 赤ちゃんの様子がおかしい
    • 呼吸が苦しそう
    • 活気がない

もしまだかかりつけ医が決まっていないようであれば、生まれた産院の医師や自宅から受診しやすい小児科など、今後かかりつけ医の候補となる医療機関を受診するとよいでしょう。

新生児の成長曲線はあくまで目安、不安なときは相談しよう

成長曲線は、子どもの身長や体重の変化をグラフにしたものです。成長曲線から赤ちゃんの計測値が大きく外れていれば、授乳状況を確認する、水分補給や食事バランスを見直す、かかりつけ医に相談するといった対策が必要になります。
ただし、成長には個人差があるため、大切なのは計測値だけにとらわれず、赤ちゃんの機嫌や授乳・排泄状況など全体的な様子を見ることです。不安を感じるときは、決して一人で抱え込まず、生まれた産院の医師や助産師、かかりつけ医などに相談しましょう。

また、母乳だけでは足りないと感じるときや、赤ちゃんの体重が減ってしまうようなときは、乳児用ミルクを上手に補完することも、赤ちゃんの発育を支える大切な選択です。

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