手延べそうめん作り
細くのばした麺を「はた」という棒にかけ、さらに約2mまでのばして乾燥させます。
日本で古くから作られている小麦粉の麺――そうめん、ひやむぎ、うどん。各地にさまざまな作り方、種類や食べ方があり、人々の知恵と工夫が込められています。
夏になると、冷たく冷やしたそうめんやひやむぎが食卓にのぼる日が増えてきます。
そうめんもひやむぎも、小麦粉に水と塩を加えて練った生地を細くして乾燥させたものですが、一般的にそうめんのほうがひやむぎより細めです。どちらも、機械で作るものと、生地を手でのばして作る「手延べ」があります。機械作りの場合、そうめんは直径1.3㎜未満、ひやむぎは1.3~1.7㎜未満と、JAS規格(農林水産物の品質などについて国の定める基準)で決められています。
手延べそうめんは、古くから三輪(奈良県)、播州(兵庫県)、小豆島(徳島県)、島原(長崎県)など西日本のほうで多く作られています。こねた生地の表面に植物油を塗りながら糸のように細くのばし、棒にかけて干す作り方が、よく知られています。
細くのばした麺を「はた」という棒にかけ、さらに約2mまでのばして乾燥させます。
うどんも小麦粉を塩水でこねて作る麺です。今は、原料の小麦のほとんどが輸入されたものですが、昔は日本の各地でうどんに向く品種の小麦を育て、その小麦粉でうどんを作って食べていました。今でも香川県の「さぬきうどん」をはじめ、愛知県の「きしめん」、秋田県の「稲庭うどん」、長崎県の「五島うどん」など、各地で伝統あるうどんが作られ、その地域ならではの食べ方があります。
形の変わったうどんもあります。群馬県の「ひもかわ」は帯のように幅の広い麺です。また、耳のような形をした「耳うどん」(栃木県)、生地をぎょうざの皮のようにのばした「ひっつみ」(岩手県)など、すいとん(小麦粉を水で練って団子のようにした物を汁の中に入れて煮る料理)に似たうどんもあります。
香川県だけでなく全国に知られています。汁は、地元の瀬戸内海でとれるいりこ(煮干し)のだしがよく使われます。
群馬県の桐生地域に伝わるうどんです。幅の広いものは10㎝以上あります。
栃木県佐野市の郷土料理。この耳は悪い神様の耳で、食べてしまえば厄払いや魔除けになるという説もあります。
食べ方もいろいろです。山形県の「ひっぱりうどん」は、ゆで汁に入ったうどんを囲み、各自が箸で引き上げて、納豆やさばの缶詰やねぎの入ったたれにつけて食べます。
山梨県の「ほうとう」や、埼玉県や群馬県に伝わる「おっきりこみ」は、少し幅の広い麺で、地域でとれた野菜や肉といっしょに鍋料理のように煮込みます。
このように具をたくさん入れて煮込む食べ方は、各地にあります。大鍋で作れば大勢で分け合うことができ、栄養がとれておなかも心も温まります。
山梨県に伝わるほうとうは、かぼちゃを入れてみそ味にするのが一般的です。
そうめんやひやむぎは、冷たくして食べるだけでなく、温かい汁麺にしてもおいしく味わえます。また、ゆでた麺にトマトソースなどをかけてスパゲティ風にしたり、焼きそば風にいためたりしても、いつもと違う味が楽しめます。沖縄では、野菜や肉といっしょにそうめんをいためる「ソーミンチャンプルー」が夏の人気料理です。
沖縄では台風が多く、そのときの非常食としても食べられます。
冷たいそうめんに市販のサラダチキン、トマト、オクラなどをのせて、牛乳とごまたっぷりのつゆでいただきます。いつものそうめんも一工夫すれば栄養豊富なコクのある一品になります。