7月(文月/July)『麺』

日本で古くから作られている小麦粉のめん――そうめん、ひやむぎ、うどん。各地にさまざまな作り方、種類や食べ方があり、人々の知恵ちえ工夫くふうめられています。

糸のように細くのばして干す手延べそうめん

夏になると、冷たく冷やしたそうめんやひやむぎが食卓しょくたくにのぼる日が増えてきます。
そうめんもひやむぎも、小麦粉に水と塩を加えて練った生地きじを細くして乾燥かんそうさせたものですが、一般いっぱん的にそうめんのほうがひやむぎより細めです。どちらも、機械で作るものと、生地きじを手でのばして作る「手延てのべ」があります。機械作りの場合、そうめんは直径1.3㎜未満、ひやむぎは1.3~1.7㎜未満と、JAS規格(農林水産物の品質などについて国の定める基準)で決められています。
手延てのべそうめんは、古くから三輪みわ(奈良県)、播州ばんしゅう(兵庫県)、小豆島しょうどしま(徳島県)、島原(長崎県)など西日本のほうで多く作られています。こねた生地きじの表面に植物油をりながら糸のように細くのばし、棒にかけて干す作り方が、よく知られています。

手延べそうめん作り

手延てのべそうめん作り

細くのばしためんを「はた」という棒にかけ、さらに約2mまでのばして乾燥かんそうさせます。

日本の各地で作られてきたうどん

うどんも小麦粉を塩水でこねて作るめんです。今は、原料の小麦のほとんどが輸入されたものですが、昔は日本の各地でうどんに向く品種の小麦を育て、その小麦粉でうどんを作って食べていました。今でも香川県の「さぬきうどん」をはじめ、愛知県の「きしめん」、秋田県の「稲庭いなにわうどん」、長崎県の「五島ごとううどん」など、各地で伝統あるうどんが作られ、その地域ならではの食べ方があります。
形の変わったうどんもあります。群馬県の「ひもかわ」は帯のようにはばの広いめんです。また、耳のような形をした「耳うどん」(栃木県)、生地きじをぎょうざの皮のようにのばした「ひっつみ」(岩手県)など、すいとん(小麦粉を水で練って団子のようにした物をしるの中に入れてる料理)に似たうどんもあります。

さぬきうどん

さぬきうどん

香川県だけでなく全国に知られています。しるは、地元の瀬戸内海せとないかいでとれるいりこ(煮干にぼし)のだしがよく使われます。

ひもかわ

ひもかわ

群馬県の桐生きりゅう地域に伝わるうどんです。はばの広いものは10㎝以上あります。

耳うどん

耳うどん

栃木県佐野市の郷土料理。この耳は悪い神様の耳で、食べてしまえば厄払やくばらいや魔除まよけになるという説もあります。

みんなで分け合える具だくさんのうどん

食べ方もいろいろです。山形県の「ひっぱりうどん」は、ゆでじるに入ったうどんを囲み、各自がはしで引き上げて、納豆なっとうやさばの缶詰かんづめやねぎの入ったたれにつけて食べます。
山梨県の「ほうとう」や、埼玉県や群馬県に伝わる「おっきりこみ」は、少しはばの広いめんで、地域でとれた野菜や肉といっしょに鍋料理のように煮込にこみます。
このように具をたくさん入れて煮込にこむ食べ方は、各地にあります。大鍋おおなべで作れば大勢で分け合うことができ、栄養がとれておなかも心も温まります。

ほうとう

ほうとう

山梨県に伝わるほうとうは、かぼちゃを入れてみそ味にするのが一般いっぱん的です。

そうめんやひやむぎは、温かい料理にも

そうめんやひやむぎは、冷たくして食べるだけでなく、温かい汁麺しるめんにしてもおいしく味わえます。また、ゆでためんにトマトソースなどをかけてスパゲティ風にしたり、焼きそば風にいためたりしても、いつもとちがう味が楽しめます。沖縄では、野菜や肉といっしょにそうめんをいためる「ソーミンチャンプルー」が夏の人気料理です。

ソーミンチャンプルー

ソーミンチャンプルー

沖縄では台風が多く、そのときの非常食としても食べられます。

いろどりよい具と濃厚のうこうめんつゆで栄養満点 ずんだ白玉

牛乳ごまつゆそうめん

冷たいそうめんに市販しはんのサラダチキン、トマト、オクラなどをのせて、牛乳とごまたっぷりのつゆでいただきます。いつものそうめんも一工夫ひとくふうすれば栄養豊富なコクのある一品になります。