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チョコレートの作り方/カカオ豆からカカオニブ、カカオマスに変化する工程も紹介

2022/03/23

チョコレートの作り方/カカオ豆からカカオニブ、カカオマスに変化する工程も紹介

チョコレートはたくさんの工程を経て、おいしい味わいとなめらかな舌触りになります。しかし、カカオ豆からどのようにしてチョコレートが作られているのか知る機会はなかなかないのではないかと思います。今回は、カカオ豆からカカオニブ、カカオマスへと変化し、チョコレートになるまでを解説します。

チョコレートの作り方①原料調達

おいしいチョコレートに欠かせないのが良質なカカオ豆。カカオ生産国で発酵・乾燥を終えたカカオ豆は、麻袋に詰められ工場に運ばれます。カカオは農産物ですので年によって気候などの様々な影響を受けますが、技術を駆使して、品質を安定させています。

カカオ豆の産地で異なる味わい・香り

原料となるカカオ豆の産地により、味や香りが異なるチョコレート。世界各国のカカオ豆にはそれぞれ特徴があります。それぞれの作り手の製法や配合により違いが出る場合もありますが、食べ比べをしてみると産地ごとの違いがわかり、新しい発見があることと思います。

※関連ページ:カカオ豆の原産地はどこ?品種別の特徴、収穫からチョコレートになるまでを紹介

チョコレートの作り方②選別

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生産国から輸入されたカカオ豆から、悪い豆や、砂、ゴミなどの異物を取り除き、良いカカオ豆だけが次の工程に進みます。機械を使う場合と手作業で選り分ける場合もあります。品種ごとに貯蔵し、次の工程へ送られます。

チョコレートの作り方③ロースト

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次に、カカオ豆は100~140℃の熱を加えてローストされ、カカオ豆独特の香りと風味を引き出します。ローストにより生じる香りの成分は、1000種類以上あると言われており、このロースト工程でチョコレートの香りが決定づけられます。また、発酵工程で生じた微生物の殺菌もロースト中、もしくはロースト前後に行われます。

求める風味で選ぶロースト法

代表的なロースト法は次の2つがあります。豆のままローストする「豆ロースト法」は、ローストによりその後の分離(シェルを豆から分離する工程)が容易になる利点があります。また、揮発性のカカオ香気がロースト中にシェルに包まれて維持されるため、繊細な香気を有するカカオマスを製造する際に多く採用される方法です。一方、カカオニブをローストする「ニブロースト法」は、豆を小さく砕いてからローストすることで、熱を内部へ伝わりやすくするロースト方法です。ローストの温度や時間の設定は、どのようなチョコレートの味わいにするかにより変わり、例えば、高温深煎りでは苦味とコクのある深い味わいに、低温浅煎りの場合はカカオ豆の特徴を残した品質になります。使用するカカオ豆の個性を見極め、それを生かしたロースト方法が選択されます。

チョコレートの作り方④分離

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左:シェル(種皮)右:カカオニブ(カカオ豆の胚乳部)

カカオ豆を粗く砕き、シェル(種皮)などを取り除いてカカオニブ(カカオ豆の胚乳部)を取り出します。種皮が多く残っていると仕上がりのチョコレートの雑味に繋がるため、きちんと分離する必要があります。

カカオニブはそのまま食べられる

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カカオニブには6~9%のポリフェノール類が含まれています。スーパーフードとしても注目されるカカオニブは、歯触りと香ばしい風味が魅力で、ヨーグルトやアイスクリームのトッピングなど、普段の食事に気軽に取り入れられる素材です。最近では、カカオニブを蜂蜜に漬けた商品なども市販されています。

チョコレートの作り方⑤磨砕

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次に、カカオニブをすりつぶしてペースト状にします。すりつぶすことでココアバターがにじみ出てどろどろのペースト状になり、これがチョコレートやココアの原料になります。

※関連ページ:カカオマスとはカカオニブをすりつぶしたもの。製造工程、含まれる成分などを解説

チョコレートの作り方⑥混合

できあがったカカオマスに砂糖やココアバター、粉乳などを混ぜ合わせます。どのような味わいのチョコレートにするかにより、配合に合わせた原材料がここで加えられます。ホワイトチョコレートの場合はカカオマスが含まれないので、ココアバターと砂糖、粉乳を混合して作られます。

チョコレートの作り方⑦微細化

次にチョコレート生地の粒子を微細化する作業に進みます。ここでは粒子を20ミクロン(1ミクロンは1/1000ミリメートル)以下まで細かくします。大きな工場では複数のロールがある機械を使いますが、中小規模の作り手は、この後の精錬という工程と同じ機械を使って微細化と精錬を同時に行う場合もあります。

チョコレートがなめらかな理由

人間の舌は一般的に20ミクロン以下ではざらつきを感じないため、この大きさまでチョコレート生地の粒子を細かくすることで、なめらかな舌触りのチョコレートになります。おいしいチョコレート作りのために重要な工程となります。

チョコレートの作り方⑧精錬

チョコレート生地を長時間練り上げる作業を、精錬またはコンチングといいます。強い力をかけて練ることで徐々にチョコレート生地に流動性が生まれ、なめらかになっていきます。また、コンチングの間にチョコレートに含まれる水分蒸発が促進され、酢酸も蒸散されていきます。酢酸の揮発もこの工程の役割のひとつです。

適度な酸味を残したチョコレートも人気

カカオ豆は発酵の過程で酢酸が生じるため、最終的なチョコレート生地にも酸味があります。酸味が強すぎれば不快に感じる場合もありますが、全く酸味がないとぼんやりした味わいになります。最近では、カカオ本来の酸味を味わうチョコレートも販売され、適度な酸味のチョコレートは好まれる傾向にあります。

チョコレートの作り方⑨調温(テンパリング)

チョコレートを固めるうえで最も大切なのはテンパリング呼ばれる工程です。これは、チョコレートの温度を調整し、ココアバターの結晶を安定させる作業で、正しくテンパリングすることでチョコレートがきちんと固まり、艶のある口どけの良いチョコレートができあがります。

※関連ページ:チョコレートのテンパリングとは?失敗による影響と成功のコツ

チョコレートの作り方⑩充填

できあがったチョコレート生地を型に流し込みます。この時、型を激しく振動させたり台に打ち付けるなどして気泡を完全に除き、型の隅々までチョコレート生地を行き渡らせるように作業します。こうすることで見た目も形もきれいなチョコレートになります。

チョコレートの作り方⑪冷却

成型したチョコレートを適切な温度で冷やし固めることで、チョコレートの表面が白くなったりざらついたりする「ファットブルーム」や「シュガーブルーム」という現象を防ぐことができ、艶のあるチョコレートに仕上げることができます。

チョコレートの作り方⑫型抜

型を裏返し、チョコレートを型からはがします。それをアルミ箔やレーベルで包装し、箱詰めします。板チョコレートはすぐに出荷せず、倉庫の中で一定期間熟成(エージング)させてから温度管理された状態で出荷されます。その後、チョコレートの保管に適した温度で店頭に並びます。

チョコレートの作り方も意識して食べてみよう

カカオ豆はたくさんの工程を経てカカオニブ、カカオマスへと状態を変化させながらチョコレートになります。何気なく食べているチョコレートも作り方を知ると、風味や食感をさらに楽しめることでしょう。使用するカカオ豆の産地や品種によってもチョコレートの味わいは異なりますので、ぜひ食べ比べしながら楽しんでみてください。

※関連ページ:【漫画で学ぶ、チョコレート③】「カカオ豆」がチョコレートになるまで