カカオマスはカカオニブをすりつぶしてペースト状にしたもの。チョコレートやココアの原料となることは知っていても、どんなものなのか、どうやって作られるのかまでは知らない人も多いと思います。この記事ではカカオマスについて、カカオやカカオニブとの違い、カカオ豆からカカオマスになるまで、チョコレートとココアの違いなどを詳しく紹介します。
カカオマスの概要
チョコレートの原材料名として書かれているカカオマス。健康への効果が期待できるポリフェノールなどの成分が多く含まれています。最近は家庭でのお菓子作りなどに使う方も。まずはカカオマスとは何か、カカオやカカオニブとの違いを紹介します。
カカオマスとはチョコレートの主原料
カカオマスは、カカオ豆の胚乳部(カカオニブ)をすりつぶしたもの。これがチョコレートの主原料で、カカオマスにココアバターや砂糖などを加えて練り上げるとチョコレートになります。胚乳部にはココアバターが約50~57%と多く含まれるため、すりつぶすとココアバターがにじみ出てきてドロドロのペースト状になります。その後冷却すると固形になるため、製菓材料店などでは固まっているカカオマスが並んでいます。
カカオマスとカカオ、カカオニブの違い
カカオマス、カカオ、カカオニブなど似た言葉が多くあり良くわからない、という方も多いかもしれません。まず、カカオは「テオブロマ カカオ リンネ」という学名を持つアオイ科の植物。この樹にカカオポッドと呼ぶ実がなり、そこから採れるのがカカオ豆という種子です。カカオ豆から種皮などを取り除いた部分が胚乳部で、これがカカオニブです。先ほどご紹介した通り、カカオニブをすりつぶすとカカオマスとなり、チョコレート原料となります。海外のチョコレート製品には、ココアリカー、チョコレートリカーと記載されていることもありますが、いずれもカカオマスと同じ意味です。
カカオ豆からカカオマスになるまで
チョコレートの主原料となるカカオマスはどのように作られるのでしょうか。ここでは、カカオ豆の選別からロースト等、カカオマスになるまでを詳しく紹介します。
輸入・選別
カカオ生産国で発酵、乾燥させたカカオ豆を輸入します。工場に運ばれたカカオ豆は、まず選別が行われます。悪い豆(カビが生えているもの、双子豆というくっ付いた豆、虫食い豆など)を取り除くほか、石や砂、ゴミなどの異物も除き良いカカオ豆だけを選びます。
ロースト
どのようなカカオマスに仕上げるか、風味を決めるうえで重要な工程のひとつにローストがあります。一般的には100~140度の熱を加えてローストし、カカオ豆独特の香りと風味を引き出しますが、温度や時間の設定によりできあがりの味わいは大きく異なります。例えば、高温深煎りローストにより苦味やコクのある味わいを引き出す、もしくは低温浅煎りによりカカオ豆の特徴を残した品質にするなど、メーカーによってカカオ豆の個性やできあがりのイメージに合わせて、ロースト条件を判断、調整しています。
分離(皮を取り除く)
まずローストしたカカオ豆を粗く砕きます。この段階ではシェル(種皮)や胚芽とカカオニブが混在しているため、ふるいによって分離する作業を連続的に行って、カカオニブを分離します。この作業にはウィノワと呼ばれる装置を使います。
磨砕(すりつぶす)
分離したカカオニブは様々な装置を組み合わせて粉砕、細かくすりつぶしてペースト状にします。これがカカオマスと呼ばれるチョコレートの原料です。
※関連ページ:チョコレートの作り方/カカオ豆からカカオニブ、カカオマスに変化する工程も紹介カカオマスの量によるチョコレートの分類と割合
カカオマスにココアバターや砂糖、乳製品などを配合して作られるチョコレート。配合量によって風味の異なる様々なチョコレートが生み出されます。ここでは、チョコレートの分類や主な成分について紹介します。
チョコレートの分類(3つ)とカカオマスの割合
カカオニブをすりつぶしたカカオマスは、いわゆるカカオ分100%の状態(正確にはカカオ分の%表示はカカオマス中の水分を除いた重量比です)。苦味や酸味が強いですが、これにココアバターや砂糖、乳製品、レシチンや香料などを配合することで、次の3分類のチョコレートが生み出されます。①ダークチョコレート:カカオマス+ココアバター+砂糖+レシチンや香料などで作られます。一般的にはカカオマスが40~60%以上のものを指し、カカオ分が70%以上のものは高カカオチョコレートと呼ばれます。スイートチョコレート、ビターチョコレートと呼ばれることもあります。②ミルクチョコレート:カカオマス+ココアバター+砂糖+乳製品+レシチンや香料などで作られます。乳製品としては全粉乳や脱脂粉乳などが使われます。③ホワイトチョコレート:ココアバター+乳製品+砂糖+レシチンや香料などで作られます。カカオマスが入らないため、白~淡黄色をしています。
チョコレートに含まれるカカオ分とは?
チョコレートのパッケージに「カカオ分○%」という表示を見かけることがあります。これは、カカオマスやココアパウダー、ココアバターなどカカオ由来の原料(水分を除く)の合計の割合を示したものです。例えばカカオ分65%の場合、ダークチョコレートなら残り35%が砂糖やレシチン、香料などとなります。尚、同じカカオ分のチョコレートでも、その中に含まれるカカオマスとココアバターの比率は製品により異なるため、その味わいは変わります。よって、カカオ分はひとつの目安として、自分の好みの味わいを探す手掛かりにすると良いでしょう。
カカオマスに含まれる成分
カカオマスの原料となるカカオニブ、その50~57%程度をココアバターという脂肪分が占めています。次いで炭水化物、タンパク質等が主な栄養素ですが、ポリフェノールが多いのも特徴です。ポリフェノールは赤ワインやお茶に含まれていることで知られていますが、実はカカオマスにも豊富なポリフェノールが含まれていることがわかっています。
チョコレートとココアの違い
チョコレートとココアは、一部の工程に違いはあるものの、実はどちらもカカオマスをベースに作られます。両者にはどのような違いがあるのかを見ていきましょう。
どちらもカカオマスが原料
カカオ豆を砕いてすりつぶしたカカオマスに、ココアバターや砂糖などを加えて練り上げるのがチョコレート。一方、ココアパウダーは、カカオマスに特殊な機械で圧力をかけ、油脂を搾り取って残った固形分「ココアケーキ」を細かく砕いて粉末状にしたものです。
違いはカカオニブに「アルカリ処理」を行う点
チョコレートとココアの大きな違いは、アルカリ処理という工程です。ココアパウダーの製造では、カカオニブにアルカリ液を用いて作用させることで、酸味を減らしたり味をマイルドしたりするほか、色調に深みが出ます。この製法が誕生する前、ヨーロッパに広められたカカオは、油脂分が多いため水やミルクと混ざりづらく、また、カカオ豆の発酵過程で生成した有機酸による酸味で飲みづらいものでした。そこで、オランダ人のC.J.バンホーテンがアルカリで処理することで酸味を中和するという大きな発明をしました。さらに、機械でココアバターを圧搾し、ココアパウダーの脂肪分を28%程度に減らして湯と混ざりやすくすることにも成功しました。このオランダ生まれの発明はダッチプロセスと呼ばれ、現代にも受け継がれています。尚、自社でココアパウダーを製造しているBEAN to BARブランドは数少ないですが、アルカリ処理をせずに製造されるココアパウダーも存在します。
※関連ページ:ココアとはカカオの別称? ホットチョコレートとの違い・おいしい作り方も紹介カカオマスを知ってチョコレートを楽しもう
チョコレートやココアの主原料となるカカオマスは、カカオ豆に様々な工程をほどこすことで作られます。私たちが日頃より親しんでいる3分類のチョコレート(ダーク、ミルク、ホワイトチョコレート)は、配合される原材料の種類で分類され、その結果カカオマスの割合に差が出てきます。カカオニブやカカオマスなど言葉の意味や違いを知り、様々なチョコレートを楽しみましょう。