私たちにとって馴染み深いお菓子のひとつ、チョコレート。その原料であるカカオは、最近フルーツとしての認知が広がっているのをご存知ですか?この記事では、カカオパルプについて詳しく解説。カカオパルプを使ったいろいろな商品もご紹介します。
カカオパルプとは?
カカオパルプとは、カカオの果肉のこと。チョコレートは知っているけど、「カカオパルプ」という名前はあまり聞いたことがない、という方もいると思います。カカオパルプの解説の前に、まずはカカオの実について説明します。
カカオはフルーツ(フルーツとしてのカカオ)
カカオの樹には1年間に10~40個ほどカカオの実がなります※。カカオの実は英語でカカオポッドと呼ばれ、カカオの実を割ると中に白い果肉が入っています。カカオポッドは1個250g~1kgほどにもなる大きな果実。ラグビーボールに似た形状で、堅い殻に覆われています。カカオポッドの中には「カカオパルプ」と呼ばれる白くてヌルヌルとした甘酸っぱい果肉があります。カカオパルプの中にカカオ豆が存在し、カカオ豆は1個のカカオポッドの中に30~40粒ほど入っています※。 このカカオ豆を発酵、乾燥させたあと、様々な製造工程を経てチョコレートが作られます。
※品種や産地によります。
チョコレートの作り方・製造工程について、詳しくはこちら
カカオパルプは、カカオ豆の発酵に活用されるほか、現地で消費されたりしていますが、一般の方々にはカカオパルプの存在はあまり知られていないと思います。 チョコレートに使われるカカオ豆はカカオポッド全体からするとその一部ですが、近年、持続可能なカカオ生産への取り組みとして、カカオパルプも含めカカオポッド全体を活用する動きが出始めており、カカオはフルーツという認知が広がってきています。
カカオパルプとは
カカオパルプは前項で紹介した通り、カカオの果肉です。もともとは、人間が食べるよりもはるか前から熱帯地方で動物がカカオパルプを食べていたとされています。
カカオパルプは、パイナップルやキウイ、ライチなど南国のトロピカルフルーツを思わせる甘酸っぱい味わいで、日頃私たちが慣れ親しんでいるチョコレートからは全く想像がつかない風味。食べたり飲んだりすると驚く人も多いです。
日本ではまだあまり馴染みがありませんが、カカオ産地ではカカオパルプからジュースやお酒を作って飲んでいます。まさにカカオの実はフルーツとして活用されています。
カカオパルプの重要性
カカオパルプの概要を説明したところで、次にカカオパルプがチョコレート作りにおいてどのような重要な役割を果たすか、もう少し詳しく解説します。
カカオパルプの成分
白くてヌルヌルとしたカカオパルプ。その大半は水分(82~87%※)ですが、糖(10~15%※)やクエン酸(1~3%※)、ペクチン(2~3%※)のほかに、タンパク質やアミノ酸、ビタミン類(主にビタミンC)、ミネラル等が含まれています。ショ糖、ブドウ糖、果糖など糖類が含まれているため甘味があります。また酸っぱい味はクエン酸が含まれているためで、pHは3.5~3.8※と酸性度が高いことがわかります(pH7で中性)。
こうした成分のカカオパルプが豆の周りに付着し、カカオポッドの中に存在しています。実は、この甘酸っぱい果肉カカオパルプは、チョコレート作りに欠かせないものなのです。
※参考文献:『カカオとチョコレートのサイエンス・ロマン』佐藤清隆、古谷野哲夫(幸書房2011)
カカオパルプの発酵における役割(チョコレート作りに欠かせない重要性)
私たちに馴染みのあるチョコレートは、実は「発酵食品」と言っても過言ではありません。
その理由は、収穫した後、カカオ豆をカカオパルプごと発酵させているからです。
カカオ豆も、ワインや 日本酒、味噌、納豆といった他の発酵食品と同様に、微生物の働きによって発酵が進みます。微生物が生育する培地に最適なのが、糖分の多いカカオパルプです。カカオ産地では、収穫したカカオポッドを割り、パルプが付着した豆をかき出したあと、木箱に入れたり、バナナの葉で覆ったりして数日間置きます。カカオパルプには水分や糖分が豊富に含まれるため、空気中の微生物や木箱、葉などに付着した微生物が繁殖、熱帯の湿気と気温で自然と発酵が進みます。カカオの発酵は数日で終了しますが、この間に生成された糖やアミノ酸が、後にチョコレート特有の香味を生じるもとになります。
つまり、発酵工程によって、カカオ豆に化学変化が起こり、後のロースト工程でチョコレートの香味となる前駆体※が生成されます。
また、発酵には渋味を減らす、酸味を増やすなど味をコントロールする目的もあります。発酵はチョコレートのおいしさを左右する重要な工程で、その発酵になくてはならないのがカカオパルプなのです。
※前駆体:化学反応などによってある物質が生成される前段階の物質。
カカオパルプ活用の歴史
カカオパルプを発酵させてお酒をつくっていた
おいしいチョコレートのために欠かせない発酵工程ですが、実は歴史的には意外なエピソードがあります。
もともと古代メソアメリカの人々はカカオ酒(カカオワイン)を作っていました。カカオワインは出産や結婚など特別な日を祝うためにメソアメリカの富裕層に普及したと言われています。ちなみに、今でも中南米地方ではカカオ酒が作られているそうです。
カカオパルプは糖分を多く含むため、カカオ豆の周囲に生息するさまざまな種類の微生物が働き発酵が進みます 。(酵母の働きにより糖からアルコールが生成されます。)
古代メソアメリカの人々は、カカオワインを作る過程でたまたま豆も一緒に発酵し、それをローストしたら芳醇な香りが生まれたことを知ったと考えられています。 つまり、チョコレートのためではなく、カカオパルプからお酒をつくっているうちに、発酵したカカオ豆も利用することが発見されたというわけです。
チョコレートの香味物質と発酵過程の関係については、現代のサイエンスで解明されたこと。昔の人々は、チョコレート特有の香味成分が発酵によって発生するとは知らず、経験からそのような知識を得て、自然発酵によってカカオ豆から香り高いチョコレートを作り出したと思われます。
カカオ産地でのカカオパルプの活用方法(パルプジュースやジャム、お酒など)
カカオの発酵の過程で、はじめはカカオ豆の周囲をしっかりと包んでいた白いカカオパルプは、微生物の働きによりほとんどが液化して木箱の外に流れ出たり、消失したりします。
前項でも触れましたが、カカオ産地では、昔からカカオパルプを原料としたお酒が作られています。また、フレッシュなカカオパルプを搾ったジュースや、発酵で液状になったカカオパルプをジュースとして飲む光景はカカオ産地で良く見られます。 少しどろっとしたカカオパルプのジュースはトロピカルな香りで、カカオがフルーツだと実感できる味わいです。それを煮詰めてジャムにする場合もあります。
日本ではフレッシュの果汁は手に入りませんが、冷凍果汁を購入することは可能です。
カカオパルプを使った商品例
近年、少しずつカカオパルプを使った商品が広がってきています。いくつかの商品例を紹介しますので、ぜひ気になるものがあればチェックしてみてくださいね。
meiji ザ・カカオ カカオの果汁チョコレート
10月1日に発売された新商品「meiji ザ・カカオ カカオの果汁チョコレート」。通常のチョコレートはカカオ豆を使っていますが、この「カカオの果汁チョコレート」はカカオ豆のカカオ果汁を使用しています。製品は2層構造になっていて、ベースは花のような香りが楽しめるペルー産カカオのチョコレート、上の層はカカオパルプを絞った果汁を粉末にして加えたカカオ果汁入り生地。(※生果汁換算で12%配合)
豆だけではなくカカオの果汁も味わえる新体験!フルーツとしてのカカオを楽しめるチョコレートです。(※期間限定商品です。)
meiji カカオフラバノールドリンク
前商品でも記載した、甘酸っぱい味わいの「カカオ果汁」と、カカオ豆から抽出した独自新素材「カカオフラバノールエキス」を配合したドリンク。 カカオやチョコレートのイメージとは全く違うこの赤いドリンクは、カカオ豆に含まれるアントシアニンという成分の赤色によるもの。カカオ果汁のフルーティな味わいに、カカオ独特の爽やかな苦味、南国フルーツのようなトロピカルな余韻が楽しめます。
1日のスタートや、日中のリフレッシュ、また夜のリラックスタイムなど、シーンを問わず楽しめる、これまでに味わったことのない新しい風味のカカオドリンクです。(※期間限定商品です。)
meiji カカオフラバノールゼリー
フルーティな味わいとカカオ独特の爽やかな苦み、トロピカルな香りの赤いゼリー。カカオのイメージが覆る味わいです。
この商品は、甘酸っぱい味わいの「カカオ果汁」と、カカオ豆から抽出した独自新素材「カカオフラバノールエキス」を配合しています。 カカオフラバノールとは、カカオ豆に含まれるカカオポリフェノールの一群で、単純に抽出するだけでは美味しく取ることができない素材。明治は、フルーツとしてのカカオの魅力を最大限に引き出す製法を検討し、赤くてフルーティな味わいのエキスを開発しました。
パウチ入りのゼリーは、小腹が空いた時などにおすすめ。片手で手軽に、美容や健康にうれしい成分を手軽に摂取できます。(※期間限定商品です。)
GODIVA カカオフルーツジュース
カカオをフルーツとして楽しむ、ゴディバの新提案「カカオフルーツシリーズ」。カカオの果実、カカオパルプを新鮮なうちに果肉ごと丁寧に搾った果汁を使用したカカオフルーツジュースです。カカオ生産者の方々に対しての利益還元及び、持続可能な供給ができるカカオフルーツ原料を厳選しています。
みずみずしく、すっきりと仕上げたジュースは、トロピカルフルーツらしい甘酸っぱく爽やかな味わい。プレーンなタイプのほか、ストロベリーソースを合わせたカカオフルーツジュース ストロベリーもあります。
PACARI「カカオパルプ&ニブチョコレートバー」
エクアドルでカカオ豆からチョコレート作りを手掛けるPACARI(パカリ)。
この「カカオパルプ&ニブチョコレートバー」は、パカリで初めてカカオパルプとカカオニブを使った商品として発売されました。カカオパルプ、カカオ豆、カカオニブにきび糖を使用。きび糖が入るため“オールカカオ”ではないものの、カカオ尽くしの板チョコレートです。
カカオパルプはいろいろな柑橘系の酸味が豊かに感じられ、ニブを嚙んだ時にさらにカカオを感じるチョコレートに仕上がっています。カカオがフルーツである事が実感できる一品です。
まとめ
これまであまり一般に知られていなかったカカオの果肉、カカオパルプ。カカオ産地においては豆の発酵に欠かせないものですが、一方で、カカオパルプ自体を楽しむ動きも出てきていて、今後も商品としての活用が広がるのではないかと思われます。
カカオパルプを使った商品を見つけたら、ぜひチャレンジしてみてください!日頃食べているチョコレートとは全く違うフルーティな風味、トロピカルな香りが楽しめ、カカオはフルーツだと実感できると思います。