チョコレートを使ったスイーツのひとつ、チョコレートタルト。これまでに食べたことがある、またはケーキ店などで見かけたことがある方も多いと思います。本記事では、チョコレートタルトの概要と歴史や、簡単なレシピをご紹介します。
チョコレートタルトとは?
チョコレートタルトは英語、フランス語ではタルト・オ・ショコラと言います。パイ生地かサブレ生地などで作られたタルト台の中に、チョコレートガナッシュを流し込んだもので、比較的シンプルな構成のチョコレート菓子のひとつです。濃厚な風味が楽しめることもあり、チョコレート好きに人気があります。
フランスではポピュラーな菓子で、パティスリーのショーケースやスーパーなどでも売られています。小型のものはタルトレット、さらに小さく一口で食べられる大きさのものは、タルトレット・フールと言います。
チョコレートタルトの歴史
チョコレートタルトは、いつ、どのように生まれたのでしょうか?その歴史を掘り下げる前に、まずは土台となるタルトについて解説します。
タルトの発祥
タルトは、パート・シュクレというサブレ生地やフィユタージュというパイ生地で器を作り、中にクリームやフルーツ、チーズ、チョコレートなどをベースにしたアパレーユ(中に流す生地種)を詰めた菓子です。
タルトの名前は、古代ローマ時代のパイ菓子(皿状のお菓子)の一種、トゥールト(tourte)に由来するそう。「この菓子の原形は古代ギリシア、古代エジプト時代にまで及ぶ。食べられる素材で皿状のものを作り、中に美味な何かを詰めるという手法は、形をなさないものをひとつにまとめあげる方法である。」(1) つまり、液状やペースト状のものを食べやすくする「食べられる器」として誕生したのがタルトです。
焼成法としては2通りあり、生地を空焼きしてからフィリング(詰め物)を詰めるものと、フィリングを詰めた後に共焼きするものがあります。
(1)引用:洋菓子百科事典 吉田菊次郎著
チョコレートタルトの歴史
まずはチョコレートがフランスに伝わった時期です。それには2つの婚姻が関連しており、1つは1615年にフランス国王ルイ13世とスペイン国王フェリペ3世の娘アンヌが結婚、カカオを好んだ王妃によってチョコレートが初めてフランスに持ち込まれたと言われています。もう1つは、1660年にルイ14世と結婚したフェリペ4世の娘マリア・テレサがスペインからチョコレートの調理人を連れてきたこと。これを機に、フランス王室や上流階級にチョコレートが急速に広まり、流行しました。
この時代はまだ飲料としてのチョコレートであり、固形のチョコレートとして食べられるようになったのは1847年のこと。しかしながら、天才菓子職人と称されたアントナン・カレーム(1784~1833)が残した著書の中には、チョコレートが飲料だった時代に、バヴァロワやスフレ、マカロン、焼き菓子等のお菓子の副材料として利用していたことが記されています。また一方で、ガナッシュ作りに欠かせない生クリームの登場は、17世紀に入ってからという説があります。
残念ながら、チョコレートタルトの歴史として明記されたものはありませんが、チョコレートがフランスに伝わった後に誕生したと推測すると、17世紀以降のことではないかと考えられます。
チョコレートタルトの簡単レシピ
タルトの概要がわかったところで、最後に明治のミルクチョコレートを使った、おうちでできる簡単レシピ(生地を空焼きしてからフィリングを詰めるタイプ)をご紹介します。
<タルト生地(直径6㎝のタルトレット型16個分)>
・バター(食塩不使用):95g
・粉糖:35g
・卵黄:2個分
・薄力粉:160g
・打ち粉用の強力粉(なければ薄力粉):適量
<フィリング(16個分)>
・明治ミルクチョコレート4枚(200g)
・生クリーム:200cc
・バター(食塩不使用):20g
<飾り用>
・お好みのフルーツ(キウイ・オレンジ・ブルーベリーなど):各適量
・ミント(お好みで):適量
【下準備】
・フィリング用のチョコレートはそれぞれ細かく刻んでおく。
・バターは室温に戻してやわらかくしておく。
・オーブンは180℃に予熱しておく。
【作り方】
①まずタルトを作る。ボウルにやわらかくしたバターと粉糖を入れ、白っぽくなるまで泡立て器でしっかり混ぜる。
②卵黄を1個ずつ加えその都度よく混ぜ合わせる。薄力粉をふるい入れ、ゴムべらで粉っぽさがなくなるまで混ぜ合わせる。
③ひとまとめにしたらラップに包み、冷蔵庫で2時間以上生地を休ませる。
④作業台の上に強力粉(なければ薄力粉)で打ち粉をして、めん棒で生地を厚さ2~3mmにのばしてタルトレット型に合せてカットし、それぞれタルトレット型に敷き込み余分な生地は切り落とす。
⑤型に敷き込んだタルト生地の上にオーブンシートを敷き、その上に重石をのせ180℃のオーブンで約10分焼く。重石とシートを取りさらに約5分焼き、全体がきれいなキツネ色になったらオーブンから出し、型のまま粗熱を取る。
※重石がない場合は、生地の表面にフォークで穴をあけ、オーブンで10分間焼く。
⑥次にフィリングを作る。細かく刻んだミルクチョコレートと生クリームとバターを一緒に小鍋に入れる。
⑦小鍋を弱火にかけて木べらでかき混ぜながらチョコレートをとかし、ガナッシュ状にする。
⑧空焼きしたタルト型の中にフィリングを流し入れ、冷蔵庫で30分以上冷やす。
⑨型からはずし、好みでフルーツやミントを飾る。
もしタルト生地を作るのが大変な場合は、市販のタルト型を使うのも良いでしょう。チョコレートと生クリーム、バターがあれば作れるので、家庭でも手軽にチョコレートタルトが楽しめます。また、チョコレートの種類を変えれば、異なる風味のチョコレートタルトも作れます。
まとめ
街の菓子店などで見かけることが多いチョコレートタルト。何気なく食べていたタルトも、実は「食べる器」として誕生し、長い年月を経て今に続く菓子という背景を知ると、お店で選んだり食べたりする時の楽しみが広がりますね。ショコラティエと呼ばれるチョコレート専門店でも、それぞれのこだわりを表現したチョコレートタルトに出会うことができます。また、チョコレートタルトは簡単な工程で作れますので、ぜひお好みの板チョコレートをセレクトし、家庭でもチャレンジしてみてください。