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コーティングチョコレートとは?その特徴、使い方などを解説

2023/08/09

コーティングチョコレートとは?その特徴、使い方などを解説

私たちが日頃スーパーや専門店などで購入する板チョコレートなどと、性質が異なるコーティングチョコレートというものがあります。意外にも身近なスイーツに使われているコーティングチョコレート。この記事では、その特徴や使い方、その他注意点などを解説します。

コーティングチョコレートとは

Coating(コーティング、英語で覆う、塗るなどの意味)という名前がついたコーティングチョコレートとは一体どのようなものでしょうか。まずはその特徴や、他のチョコレートとの違いを見ていきましょう。

コーティングチョコレートの特徴

テンパリング不要でコーティングがしやすいという製造適性や、カカオマスやココアバターの使用が少ないため価格面でのメリットがあるとされているコーティングチョコレート。別名「パータグラッセ」とも呼ばれます。油脂(ココアバター以外のヤシ油など)分が非常に多いため、艶が良く、安定度が高いこと、お菓子やパンなどにかける際の作業性が良いことなどから、チョコレートの代用品として利用されています。テンパリングをせず、湯煎でとかしてそのまま使用できます。

通常のチョコレートとコーティングチョコレートの違い

通常チョコレートはカカオマスとココアバター、砂糖、粉乳を主な原料として製造されています。その割合は様々ですが、油脂はココアバターを主成分としているため、常温では固形になります。例えば、アイスクリーム(氷点下)や洋菓子(チルド)のコーティングに使うには固すぎるという点があります。
コーティングチョコレートはカカオマスやココアバターを使用せず(もしくは使用量が少ない)、ココアパウダーを融点の低い植物油脂(ヤシ油、パーム油など)と混合して味や物性を調整したものです。ヤシ油やパーム油は、ココアバターとは異なり、一種類の形で結晶化する性質があります。こうした植物油脂を混ぜ合わせることでよりなめらかになり、テンパリングなしでかけて固まるという利便性があります。冷たいアイスクリームをはじめ、ケーキ、パンなど様々なものを薄くコーティングでき、広く使われています。外観はチョコレートに似ていますが、チョコレートが持つ味わい、香りは弱いのもコーティングチョコレートの特徴です。

コーティングチョコレートの使い方

テンパリング不要のため、洋菓子店やパン店など業務用の用途から、家庭でのお菓子作りまで広範囲に使われているコーティングチョコレート。製菓材料店などではパータグラッセの名前で販売されています。

湯煎でとかす

とかすだけで使える利便性の高さが特徴のコーティングチョコレート。鍋と同じくらいか少し大きめのボウルにコーティングチョコレートを入れ、鍋には水を入れて温めます。沸騰直前で火を止め、その上にボウルを乗せてゴムベラでチョコレートをかき混ぜながらとかします。この時、ボウルの中に水分が入らないようにすることと、あまり高温にすると焦げてしまうため注意が必要です。冷えて固まってきたら、再び鍋の水を温めてとかして使います。

コーティングする

チョコレートをとかしたら、コーティングしたいものにかけます。例えば、オレンジピール、クッキー、マドレーヌ、ドーナツなど手で持ってチョコレートに漬けることができる場合は、チョコレートの中に入れて引き上げる際に、ボウルの縁で余分なチョコレートを落とすときれいにコーティングできます。1/3または1/2だけコーティングするなど、おしゃれな仕上げも可能です。
パウンドケーキなどある程度の面積があるものの場合は、直接かけるのがおすすめです。クッキングシートなどを敷いた上にケーキを置き、手早く全体にチョコレートを流します。周囲に流れたチョコレートが固まる前に、パレットナイフなどで別の皿やトレーなどに移すと、ケーキの下部がきれいに仕上がります。

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固める

コーティングチョコレートをかけたら、徐々に固まるのを待ちます。もし刻んだナッツやドライフルーツ、カカオニブなどトッピングをしたい場合は、ドーナツやケーキ、パンなどをコーティングしたあと、完全にチョコレートが固まる前に乗せましょう。表面にくっつきやすく、様々な仕上げが可能です。

コーティングチョコレートの注意点

簡単に使えるコーティングチョコレートですが、注意すべき点もあります。これらに気を付けて、ぜひコーティング用として使ってみてください。

水分に注意

多くの油脂分でできているコーティングチョコレートは、水分との相性が悪く、水分が入ると分離してボソボソの食感になったり、ブルームができたりしてきれいに仕上がりません。湯煎する際には、鍋から湯気や水滴が入らないようにボウルのサイズに注意しましょう。

温度に注意

とかすときの温度が高すぎるとチョコレートが焦げたり、粘度が高くなったりします。一旦、焦げたチョコレートは元に戻すことができませんので、とかす際に高温になりすぎないよう35~40度くらいで作業しましょう。

コーティングチョコレートを使うスイーツ

コーティングチョコレートの基礎知識がわかったところで、使い方の一例として私たちの身近なスイーツを紹介します。使い方のヒントとしても参考にしてください。

エクレア

エクレアとはシュー生地を使った菓子のひとつ。その名前はフランス語の「エクレール」に由来し、「稲妻」を意味します(諸説あります)。シュー生地を細長く絞って焼き、チョコレートまたはコーヒー風味のカスタードクリームを詰め、表面にフォンダンという砂糖掛けをしているのが伝統的なスタイルです。しかし、最近はチョコレートをテンパリングしてかけたり、コーティングチョコレートをかけたりしたタイプも多くあります。

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ドーナツ

アメリカを中心として世界各国で広く親しまれているドーナッツは、基本は発酵生地で作る揚げ菓子です。形は様々ありますが、リング状のものが多く一般的とされています。その語源は、ドウ(dough:生地)とナット(nut:木の実)という言葉の合成語という説があります。粉糖を振って仕上げるほか、コーティングチョコレートをかけたものも多く見かけます。

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ケーキ

パウンドケーキやクグロフ型という型で焼いたケーキなどにチョコレートをかけて仕上げたものを、お店で見たことがある方も多いと思います。コーティングチョコレートの場合はテンパリング不要のため、家庭でも使いやすく、パウンドケーキのような焼きっぱなしの菓子を少し豪華な仕上げにすることができます。例えば、パウンドケーキにコーティングチョコレートをかけ、ドライフルーツやナッツをトッピングするほか、クグロフにホワイトのコーティングチョコレートをかけ、ベリー系のドライフルーツやピスタチオなどでクリスマスリースのようにデコレーションするなど、ケーキ表面の彩りに役立ちます。

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コラム:チョコレート利用食品の一種 チョコレートコーチングについて

チョコレートの規格基準を定めた「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(以下、規約)が、業界の自主ルールとして1971年に規定されました。その規約では「チョコレート利用食品」というカテゴリーがあり、チョコレートコーチングの定義があります。コーティングチョコレートのうち、以下の条件を満たしたものがチョコレートコーチングと呼ぶことができます。
この規約において、「チョコレートコーチング」とは、「チョコレート類を原料とし、必要により糖類、食用油脂、乳製品、香料その他の可食物を加え精錬、調温して製造し、カカオ分が全重量の8%以上又はココアバターが全重量の2%以上のものをいう」と定義しています。また、乳製品を加えたものについては、「カカオ分が全重量の5%を下らず、かつ乳固形分との合計が8%を下らない範囲で、カカオ分の代わりに、乳製品を使用することができる」としています。

まとめ:コーティングチョコレートを使って手軽にスイーツを作ろう

とかすだけで使えるという手軽さが特徴のコーティングチョコレートは、家庭でのスイーツ作りにもぴったりです。最近は、抹茶やストロベリー風味などコーティングチョコレートにもバリエーションがあり、茶色以外のコーティング以外にも様々なデコレーションで仕上げられたスイーツが販売されています。
一方、通常のチョコレートに比べると、チョコレート特有の風味は少ないため、作りたいスイーツや作業性などで好みのチョコレートを選ぶのがおすすめです。これまでチョコレートといえばテンパリングが必要、と思っていた方は、コーティングチョコレートの特徴や扱い方を知ったうえで活用してみてください。