第2回『「たんぱく質」って、何だろう?』たんぱく質という名前は、だれでも知っているはず。でも、たんぱく質の働きや、私たちのたんぱく質摂取量が最近減っていることをご存知ですか。良質なたんぱく質をたくさん含む、牛乳や乳製品のこと、もっともっと。/【監修】東北大学大学院農学研究科 名誉教授 齋藤 忠夫先生:農学博士。東北大学大学院農学研究科・生物産業創生科学専攻・動物資源化学分野 名誉教授。アジア乳酸菌学会連合(AFSLAB)会長・日本国代表理事。日本酪農科学会(JDSA)会長・顧問。日本農芸化学会フェローを歴任。日本酪農科学会賞(1998)、日本畜産学会賞(2002)、日本学術振興会科研費優秀審査委員賞(2008)、国際酪農連盟日本委員会第3回光岡賞(2012)を受賞。東北大学農学部卒・農学研究科博士課程修了、米国プランダイス大学生化学部博士研究員(1987-1988年)。畜産食品科学、応用微生物学、糖鎖生物工学が専門。

たんぱく質とは

体をつくる最重要の栄養素。それが、たんぱく質!

たんぱく質(Protein=プロティン)という言葉は、古代ギリシア語のProteios=プロティオスに由来しますが、その意味は「第一なるもの、主要なもの」。古代ギリシア文明の時代から、たんぱく質は私たちにとって最重要の栄養素であることが認識されていました。

私たちの体は、筋肉や臓器、血液、骨、皮膚、髪など多くの部分からできていますが、水分を除くとその主成分はいずれもたんぱく質で、男性の体の16〜18%、女性の体の14〜16%を占めています。

筋肉や臓器などがきちんと働くためには、それぞれが正しく構築されていることだけでなく、さまざまな酵素やホルモンの存在が欠かせません。その酵素やホルモンも、やはりたんぱく質からできています。

つまり、私たちの体のもっとも基本となる成分であり、健康な体づくりに欠かせないもの、それがたんぱく質なのです。

たとえば、血液(血漿)に多く含まれていて栄養状態の指標にもなるアルブミン、骨や皮膚を構成するコラーゲン、毛髪や爪の主成分のケラチン、すい臓から分泌されて血糖値を下げるインスリン…。体を守る免疫グロブリン(抗体)など、私たちが健康診断や日常生活のなかでもよく耳にするこれらの成分は、いずれもたんぱく質なのです。

ケラチン(爪・毛髪)/アルブミンヘモグロビン(血液)/コラーゲン(皮膚・骨)

アミノ酸バランスの良い乳たんぱく質

たんぱく質には、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質があります。牛乳・乳製品をはじめ肉や魚、卵などに含まれるのは動物性たんぱく質です。一方、植物性たんぱく質は、豆類、穀物類、野菜などに含まれています。

両たんぱく質は私たちの健康維持に欠かせませんが、それぞれ特徴があります。たんぱく質を構成する20種類のアミノ酸のうち、9種類は体内で合成できないので、食品から摂取しなければならない「必須アミノ酸」です。この必須アミノ酸は、動物性たんぱく質に豊富です。とくに、牛乳・乳製品に含まれるカゼインやホエイプロテインは、必須アミノ酸のすべてを豊富に含む、「アミノ酸バランス」に優れた良質のたんぱく質です。また、カゼインは柔軟な分子構造となっているため、たんぱく質分解酵素(プロテアーゼ)による消化吸収性が極めて高いのが特徴です。

豆類に含まれるたんぱく質には必須アミノ酸は豊富に含まれていますが、小麦や米、野菜類に含まれるたんぱく質ではいくつかの必須アミノ酸の含有量は低く、アミノ酸バランスに優れません。また植物性たんぱく質では、食材中の含有量がそれほど高くないものが多く、消化吸収率が動物性たんぱく質に比べて低いなど、不利な点があります。ただ、植物性たんぱく質を含む食材には、体調を整えるための食物繊維やビタミン、ミネラルなどが豊富に含まれるものが多いので、体調に合わせていろいろな食材をバランスよく食べることが望ましいといえます。

筋肉の主成分は、たんぱく質

たんぱく質が関わる体の組織で、とくに注目したいのは筋肉です。

人の筋肉は約300種類で600本以上もあるといわれ、骨格筋と平滑筋に大きく分かれます。筋肉の働きは、日常活動はもちろん、生命活動を保つ基礎代謝(姿勢維持、体熱発生、血液循環、心拍、蠕動(ぜんどう)運動)を維持し、健康的な日常生活を送るための身体機能を担っています。最近の研究では、免疫を活性化して活力を上げる物質(マイオカイン)を通して、他の臓器の働きとも関わっていることが明らかになっています。

筋肉の重量は体重の約4割を占め、筋肉は水分を除くと80%がたんぱく質でできています。その筋肉の材料であるたんぱく質を、人は「食べたものから」得ています。これらのことからたんぱく質を意識的に日々の食事からしっかり摂ることの重要性が分かります。