第4回 運動×ミルクプロテインで熱中症対策!

熱中症対策は、暑くなる前から始めよう

運動で1Lの汗をかくと血液中から失われる水分量は100ml。それに伴って体温を調節する働きも低下します。スポーツドリンクは汗で失われる水分や塩分、糖質などが主な成分であり、運動中など汗をかいたときの水分補給に向いています。このように、熱中症を防ぐにはこまめな水分補給が大切ですが、最近の研究からややきつい運動後に牛乳や乳製品を摂取すると体温の調節機能が改善し、暑さに負けない体になることが明らかになっています。つまり、熱中症対策には、運動中のこまめな水分補給だけではなく、本格的な夏が訪れる前から暑さに負けない体づくりをすることも大切なのです。

インターバル速歩×牛乳・乳製品で暑さに負けない体をつくろう

暑熱環境で運動すると発汗によって血液量が減り、十分な血液が心臓に戻りにくくなります。その結果、脳、筋肉、皮膚などに十分な血液が行き渡らず、体温の調節機能がうまく働かなくなり、熱中症が起こります。これを防ぐには、血液量を増やすとともに筋力を高めて、心臓に血液が戻りやすい状態にしておくことが大切です。
血液は体のすみずみまで流れて酸素や栄養を届け、老廃物を回収していますが、体内で発生した熱を皮膚の近くまで運んで冷やす、体温の調節機能も果たしています。心臓は全身に血液を送り出すポンプの役目です。しかし、人の心臓は体の上部にあるので下がった血液を心臓まで押し戻すには、収縮を繰り返す「筋肉のポンプ力」が必要です。それを高めるには、ややきつい運動と運動直後の牛乳や乳製品の摂取がおすすめです。
ややきつい運動とは、最大体力の60%以上の負荷がかかった運動です。
1日30分以上、1週間に4日以上続けると効果的といわれています。
運動は「ややきつい」と感じるなら何でもかまいませんが、体力のない人や運動習慣のない中高年、高齢者には「インターバル速歩」が適しています。早歩きとゆっくり歩きを3分間ずつ交互に繰り返し、これを1日5セット以上行います。その後、30分以内に牛乳や乳製品を摂取します。このトレーニングを10日間続けると血漿量(血液中の水分)が増加し、体温の調節機能が上昇。数カ月後には筋力もアップして、暑さに負けない体がつくられます。

インターバル速歩:ゆっくりとした歩き3分+速歩3分を5セット繰り返す

運動後の牛乳・乳製品を習慣にしよう

では、なぜ、運動後に牛乳・乳製品を摂取するとよいのでしょう? それには理由があります。ややきつい運動で筋肉に負荷がかかると糖質が燃料として使われる割合が大きくなります。運動中は筋肉に蓄えられているグリコーゲンがエネルギー源として使われますが、量が減ると筋細胞の膜の表面に「インスリン感受性グルコース輸送体」という物質が現れ、血液中のグルコース(ブドウ糖)を筋細胞に取り込もうと活発に働き始めます。ところが、運動が終了すると急速に消滅。そのため、筋肉に輸送体が出現している運動直後が栄養補給の絶好のタイミングです。運動中に消費したグリコーゲンが効率よく回復します。
また、運動中は筋線維が損傷するので、修復のために材料となるアミノ酸を筋細胞に運ぶ必要があります。牛乳や乳製品には、それらに必要な糖質とたんぱく質の両方が含まれ、効率よく吸収されて活用されるため、丈夫な体づくりに役立ちます。

さらに、糖質とたんぱく質を一緒に摂ることで血液量が増加して、汗をかきやすい体になり、暑さに対する順応性も高まります。このしくみの一つと考えられているのが血液中のアルブミンです。アルブミンは分子量が大きく、血管の内側から外側に移動しにくい性質をもっていますが、栄養補給によって血液中のアルブミン濃度が高まると浸透圧の影響で血管内に水分が引き込まれ、血液量が増えるのです。
このように、ややきつい運動をすると体内でグルコースやアミノ酸の取り込みが活発になり、牛乳や乳製品を摂取することで筋力がアップして血液量も増え、暑さに負けない体がつくられます。
大人は夏の健康維持のために、成長期の子どもは熱中症予防のおやつとして「ややきつい運動後の牛乳・乳製品」を習慣にしてみませんか。

熱中症のきっかけになる体調不良に注意!

熱中症の発生には、個人の体力や暑さに対する耐性、体調なども大きく影響します。疲れている、熱がある、風邪ぎみなど体調がよくないときは、体温を調節する機能も低下します。胃腸の調子を崩して食欲がない、下痢ぎみのときは、脱水を起こしやすくなります。運動は控えて無理をしないようにしましょう。また、夏の脱水は脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすこともあります。運動するときは、前日から体調に気をつけましょう。
また、運動後は体力が消耗しています。大量に汗をかくと体が冷えて夏風邪の原因になることもあります。牛乳や乳製品に含まれるたんぱく質(ミルクプロテイン)は、免疫細胞の栄養にもなります。運動後、30分以内に摂取すると筋肉の回復を早めるだけでなく、体の抵抗力も増します。運動した翌日に疲労や不調を残さない体のケアに役立ちます。