
チョコレートの好きの間では“幻のカカオ”と評されることもある「ホワイトカカオ」をご存知ですか?一般的に、紫色である生のカカオ豆の中身が白いものを「ホワイトカカオ」と言います。世界のカカオ生産量全体のうちわずか0.002%で、希少なものとされています。 (株)明治は、ホワイトカカオの中でも100%白豆という非常に希少なホワイトカカオの品種を守り育て、持続可能な栽培をしていくために、2016年からメキシコ南部で農園づくりに取り組んでいます。 2026年バレンタインに向けて、シェフやショコラティエ、パティシエの皆さんが、メキシコホワイトカカオのチョコレートを使い、様々な商品を作られています。本記事では、各ブランドの魅力的な商品やシェフの想いについてご紹介します。
メキシコホワイトカカオのチョコレートはどんな特長?
ホワイトカカオという名称とはいえ、1つのカカオ樹から収穫できる豆には紫色と白色のものが混在することもあり、全ての豆が白いというのは希少。
明治は、メキシコ政府の調査により古代種を継承している品種としてのホワイトカカオを単一で栽培するという農園づくりに2016年から挑戦しています。
※ホワイトカカオに関する詳細は過去のハロチョコ記事をご覧ください。
希少なホワイトカカオとは?産地からチョコレートの味わいまで解説
各シェフ、ショコラティエ、パティシエの方々へのインタビュー
・Toshi Yoroizuka(トシ・ヨロイヅカ)/ショコラ ホワイトカカオ

シェフ 鎧塚俊彦氏

1965年、京都府宇治市に生まれる。
スイス、オーストリア、フランス、ベルギーと8年間ヨーロッパで実績を積み、パリでのコンクール優勝。
ベルギーでは日本人初の三ツ星レストランシェフパティシエに就任。
帰国後、2004年に「Toshi Yoroizuka」をオープン。2010年、エクアドルに「ToshiYoroizuka Cacao Farm」、2011年には小田原石垣山山頂に約2000坪の農園を併設したパティスリー&レストラン「一夜城Yoroizuka Farm」を開設するなど、地方と農家の方々との共存共栄や、素材を活かした「美味しい菓子の製造、提供」を手掛けている。
Q1:明治のメキシコホワイトカカオのチョコレートを使おうと思った理由は何でしょうか?また、特長や魅力、他のチョコレートと違う点などはありますか?
鎧塚:以前よりホワイトカカオには興味を持っており、(株)明治によりメキシコホワイトカカオが安定供給される事が決まり是非使ってみたいと思いました。
食べてみると雑味が少なくピュアなショコラの味わいを感じました。
トシ・ヨロイヅカではエクアドルに自社管理農園「エクアドル・ヨロイヅカ・カカオファーム」を開設し、そこで収穫したカカオを使用しています。このカカオは雑味が強く、この雑味がうま味となり、これはこれでトシ・ヨロイヅカのエクアドルカカオの特徴となっています。ピュアな味わいの「メキシコホワイトカカオ」と雑味が味わい深い「エクアドル」、その対比がおもしろいと感じました。
Q2:メキシコホワイトカカオのチョコレートを使った今回の商品やメニューの特長、味の組み立て、その他こだわりなどがあれば教えてください。
鎧塚:ホワイトカカオのピュアな味わいを活かすためにもお酒なども入れずにシンプルに生チョコレート(商品名:ショコラ ホワイトカカオ)として数年前から販売しており、定番人気商品となっています。
Q3:メキシコホワイトカカオのチョコレートの魅力について、特に商品に生かした点はありますでしょうか?
鎧塚:希少なメキシコホワイトカカオですから、私は捻らずにその美味しさをお客様に伝えていく事が大切だと考えています。
ですから敢えてこのカカオにはフルーツやスパイス、リキュールなどを全く入れずに2026年も「ショコラ ホワイトカカオ」を継続販売します。
・PATISSIER eS KOYAMA(パティシエ エス コヤマ)


シェフ 小山進氏

大阪あべの辻調理師専門学校を卒業、その後1983年に神戸「スイス菓子ハイジ」に入社。カフェのフロアスタッフからキャリアを重ね、実績が認められてパティシエに昇格。各種の洋菓子コンクールで多数優勝するなど技術を磨き、2000年に独立し(有)パティシエ エス コヤマを設立、2003年には兵庫県三田市に自らの店「パティシエエスコヤマ」をオープンさせた。
2011年にはフランス・パリにて開催されたチョコレートの祭典「SALON DU CHOCOLAT Paris」に初出展し、同年のC.C.Cで最高位ならびに外国人最優秀ショコラティエ賞を受賞。
Q1:明治のメキシコホワイトカカオのチョコレートを使おうと思った理由は何でしょうか?
小山:私はこれまで、さまざまな国のカカオをオートクチュールでクーベルチュールに仕立てていただき、それぞれのカカオが持つ個性と、自分が表現したい素材とのマリアージュによって生まれる“味わいの化学変化”を大切にしたモノづくりを行ってきました。
以前、メキシコ・チアパス州を訪れ、実際にカカオ農園を見学し、自ら植樹もさせていただく中で、その土地の自然環境の素晴らしさはもちろんのこと、明治の皆さまによる長年にわたる栽培・管理への真摯な取り組みに強く心を打たれ、「ぜひこのカカオを使いたい」と思うようになりました。
特に、カカオ農園としては最上級と言えるほど丁寧に整えられた環境の中で、決して強健な品種ではないホワイトカカオが健やかに育っていることは、明治の高度な栽培技術と細やかな管理、そしてカカオそのものへの深い理解と敬意の賜物だと感じています。
そのような環境から生まれるメキシコホワイトカカオの味わいは、これまで私が出会ってきたカカオにはない個性を持ち、その繊細さと奥行きが、私の創作の可能性を大きく広げてくれる存在だと感じました。
Q2:メキシコホワイトカカオのチョコレートを使った今回の商品のメニューの特長、味の組み立て、その他こだわりなどがあれば教えてください。
小山:「小山ぷりん スペシャリティカカオ~メキシコホワイトカカオ74%~」
メキシコホワイトカカオが持つ、ナッティでクリーミーな要素に加え、ほのかなフルーティーさを併せ持つ非常にバランスの良い特性を、小山ぷりんの最大の魅力である「ミルク」と融合させたいと考えました。
カカオの個性を前に出しながらも、ぷりんとしての一体感と余韻を大切にし、やさしく溶け合う味わいを目指しています。
「小山チーズ+ショコラ メキシコホワイトカカオ74%」
メキシコホワイトカカオの持つ繊細なナッティさ、クリーミーさ、そして穏やかな酸味は、クリームチーズのナチュラルな乳味と非常に相性が良いと感じました。
互いの個性が主張しすぎることなく、自然に寄り添い合うマリアージュを表現するため、この商品を開発しています。
Q3:メキシコホワイトカカオのチョコレートの特長や魅力、他のチョコレートと違う点、また特に商品に生かした点があれば教えてください。
小山:メキシコ・チアパス州のカカオ農園は、私自身が実際に訪問した場所でもあります。その環境で育ったメキシコホワイトカカオは、ナッティさやクリーミーさに加え、フルーティーな酸味も感じられる、非常にバランスの取れた味わいが特長だと思います。
また、ポリフェノール(苦味・渋味の要因)の含有量が比較的少ないため、苦味が穏やかで、全体としてクリアで繊細な印象を持っている点も、大きな魅力だと感じています。
メキシコホワイトカカオの持つナッティさ、クリーミーさ、穏やかな酸味、そして苦味の少ないクリアな味わいを、ミルクやチーズといった乳素材と組み合わせることで、その魅力が最も自然に引き立つよう設計しました。素材同士が対立するのではなく、互いを高め合う関係性を意識しています。
・FORTISSIMO H(フォルテシモ アッシュ)



シェフ 辻口博啓氏

クープ・デュ・モンドなどの洋菓子の世界大会に日本代表として出場し、数々の優勝経験を持つパティシエ、ショコラティエ。現在はオーナーパティシエ・ショコラティエとして、モンサンクレール(東京・自由が丘)をはじめ、コンセプトの異なるブランドを多数展開。2014年には初の海外店舗「モンサンクレール ソウル」をオープン。
スイーツを通した地域振興、企業とのコラボレーションやプロデュース、講演や著書出版など積極的に活動する他、低糖質スイーツの第一人者として数々のロカボスイーツの開発・監修に取り組む。
また、スーパースイーツ製菓専門学校(石川県)の校長、一般社団法人日本スイーツ協会の代表理事を務め、後進育成やスイーツ文化の発展に取り組む。日本スイーツ協会では、「スイーツコンシェルジュ検定」を実施する他、お菓子作りを通して人を育てる「スイーツ育」を提唱。
※「辻」の字は「一点しんにょう」です。
Q1:明治のメキシコホワイトカカオのチョコレートを使おうと思った理由は何でしょうか?
辻口:私もペルーでカカオ農園を運営しており、ホワイトカカオと言えばピウラにあるカカオブランコが有名なのですが、メキシコにもカカオブランコがある事に驚き、ぜひ使ってみたいと思ったことがきっかけです。
Q2:メキシコホワイトカカオのチョコレートを使った今回の商品やメニューの特長、味の組み立て、その他こだわりなどがあれば教えてください。
辻口:「キュイエールフォンダン」は1月にホワイトカカオ・バナナ、2月はホワイトカカオ・オレンジを発売します。スプーンですくって食べる、とろけるような口どけのフォンダンショコラ。ホワイトカカオと相性の良いバナナやオレンジ使い、カカオの発酵の香りを最大限引き出したフォンダンショコラを作りました。(ジェイアール名古屋タカシマヤ限定)
「ユニコーンのTSUNO ホワイトカカオ」
ホワイトカカオのなめらかなクリームとタブレットショコラを出来たてのコルネ生地に閉じ込めました。(ジェイアール名古屋髙島屋限定 実演)
「王冠カヌレ ホワイトカカオ」
ホワイトカカオを使ったアパレイユを焼き上げた外はカリッ、中はもっちりのカヌレ。仕上げにホワイトカカオのガナッシュを絞り、更なる美味しさを表現しました。(ジェイアール名古屋髙島屋限定 実演)
Q3:メキシコホワイトカカオのチョコレートの特長や魅力、他のチョコレートと違う点はありますか?
辻口:発酵の香りの中に感じるフルーツやスパイスのような表情が複雑に混ざり合いながら、ワイルドな味わいを作り上げている点です。
・LE CHOCOLAT DE H (ル ショコラ ドゥ アッシュ)


シェフ 辻口博啓氏

前述の「フォルテシモ アッシュ」と同じく、「ル ショコラ ドゥ アッシュ」も辻口博啓氏のブランドです。(プロフィールは前ブランドを参照)
Q1:メキシコホワイトカカオのチョコレートを使った今回の商品やメニューの特長、味の組み立て、その他こだわりなどがあれば教えてください。
辻口:「カカオブラウニー」
メキシコホワイトカカオを贅沢に使ったブラウニー生地にホワイトカカオのガナッシュをサンドし、ショコラノワールでコーティングしたブラウニー。エアリーでムースのような食感のスフレブラウニーを作り、通常のブラウニーにはないような軽やかな口溶けを表現しました。
「ハッサンダ ショコラフランボワーズ」
ハッサンダはロングダックワーズ。メキシコホワイトカカオの香りをしっかりと打ち出したクレーム・オ・ブールとフランボワーズのコンフィチュール、そしてホワイトカカオのタブレットをダックワーズ生地でサンド。クレーム・オ・ブールのなめらかさとフランボワーズの爽やかな酸味、カカオハスク入りのタブレットの食感が織りなす味わいと多彩な食感をお楽しみいただけます。(ジェイアール名古屋タカシマヤ限定、時間限定商品)
Q2:メキシコホワイトカカオのチョコレートの魅力について、特に今回の商品に生かした点があれば教えてください。
辻口:ムースのように軽やかに仕立てても味わいの力強さは変わらないし、個性的な発酵の香りも魅力的です。
・MUSÉE DU CHOCOLAT THÉOBROMA(ミュゼ ドゥ ショコラ テオブロマ)/フィナンシェ ホワイトカカオ

オーナーシェフ 土屋公二氏

静岡県清水市(現静岡市)出身。
フランスで6年間、「ラ メゾン デュ ショコラ」や「ダロワイヨ パリ」などトップクラスのショコラティエやパティスリーで修行。
1999年に東京・富ヶ谷に「ミュゼ・ドゥ・ショコラ テオブロマ」をオープン。現在はほかに2つの支店も運営している。
フランスのコンクールCCCをはじめ様々な賞を受賞、テレビへの出演、カカオ産地で農家への技術指導なども行っている。
Q1:明治のメキシコホワイトカカオのチョコレートを使おうと思った理由を教えてください。
土屋:ホワイトカカオは世界的にとても貴重な品種で、そのホワイトカカオだけで作っているチョコレートを他には知らないため、是非使いたいと思ったからです。
Q2:メキシコホワイトカカオのチョコレートを使った今回の商品やメニューの特長、味の組み立て、その他こだわりなどはありますか?
土屋:今回はチョコレート味のフィナンシェ「フィナンシェ ホワイトカカオ」を作りました。フィナンシェは焼菓子ですが、使用する原材料が少ないため、チョコレートの味がダイレクトに伝わります。ホワイトカカオの爽やかなフルーティーさとクリーミーでナッティな味わいを感じていただけるよう作ったフィナンシェショコラです。
Q3:メキシコホワイトカカオのチョコレートの特長や魅力、他のチョコレートと違う点や、特に商品に活かしたポイントがあれば教えてください。
土屋:通常はホワイトカカオと言っても、紫のカカオ豆が混じっていたりすることもありますが、これは全てホワイトカカオで作っており、唯一無二のチョコレートであることが魅力です。
ごまかしの利かないフィナンシェで、しっかりとホワイトカカオの良い特長が出せたと思います。
・LES TROIS CHOCOLATS PARIS(レ・トロワ・ショコラ・パリ)/レトロワショコラ

ショコラティエ 佐野恵美子氏

パリを拠点に活躍する親子三代のショコラティエ、佐野恵美子。
CCC三年連続金賞受賞、各国のサロン・デュ・ショコラに出展し、世界から高く評価されるほか、G20や日本政府、地方自治体の公式PRなど、国内外のイベントでもチョコレートを制作。
香りと素材を生かしたストーリーテリング型ショコラは、チョコレートに厳しいパリジャンからも愛され、環境にも配慮したショコラ作りで親しまれている。
Q1:明治のメキシコホワイトカカオのチョコレートを使おうと思った理由は何でしょう?
佐野:私たちは、チョコレートを素材の背景や物語ごと味わっていただくものだと考えています。明治のメキシコホワイトカカオは、希少性だけでなく、その土地の環境や文化、生産に関わる人々への丁寧な向き合い方に強く惹かれました。香りがとてもクリーンでやさしく、日本人の繊細な味覚とも相性が良いと感じ、使用を決めました。
Q2:今回の商品やメニューの特長、味の組み立て、こだわりについてお聞かせください。
佐野:今年は、バイマックルー(こぶみかんの葉)というアジアの香りを合わせました。メキシコホワイトカカオが持つやさしく透明感のある香りに、バイマックルーのフレッシュで奥行きのある柑橘のニュアンスを重ねることで、遠く離れた土地同士が香りによってつながるような表現を意識しています。
メキシコホワイトカカオを使った商品は今回で3回目となります。1回目は、ワイン醸造の過程で廃棄されてしまうブドウの搾りかすを使用し、素材を循環させる「サイクルアップ」をテーマにしたタブレットを制作しました。
2回目は、シュトーレンをショコラティエの視点で再構築した商品を発表し、いずれも大変ご好評をいただきました。
その流れを受け、今年は少し挑戦的に、アジアの食材を取り入れながら、メキシコホワイトカカオとリンクさせるという新しい試みに取り組みました。
文化や香りの違いを超えて、自然に調和する味わいを目指しています。
Q3:メキシコホワイトカカオのチョコレートの特長や魅力、他のチョコレートとの違い、また特に商品に生かした点はありますか?
佐野:渋みや苦味が穏やかで、ミルキーさやナッツのような丸みがあり、後味がとても軽やかな点が大きな魅力だと感じています。主張が強すぎないため、素材同士の調和を取りやすく、表現の幅が広いチョコレートです。
レシピはあえて複雑にせず、引き算を意識した構成にしています。余計な要素を足さず、メキシコホワイトカカオ本来のやさしさや余韻が、食べ手の記憶に静かに残るような仕上がりを目指しました。
まとめ
メキシコホワイトカカオのチョコレートを、これだけバリエーション豊富なショコラやスイーツで味わえるのはとても魅力的!生菓子や焼き菓子などチョコレートの使い方はそのシェフごとに異なりますが、お話を伺う中で、ホワイトカカオの魅力を最大限引き出し、それを様々な手法で表現していることがわかりました。販売場所や期間が限られている商品もありますが、メキシコホワイトカカオが持つ独特の味わいや香りなどをぜひ体験してみてください。

管理栄養士、スイーツプランナー、ショコラコンシェルジュ®
大学卒業後、洋菓子関連の会社に入社し販売や商品開発に携わる。
その後2007年に独立、商品企画開発や店舗開発等のマーケティング、経営面でのアドバイスなど、スイーツやチョコレートのコンサルタントとして幅広く活動。2008年以降、サロン・デュ・ショコラ・パリをはじめ、世界各国のスイーツやチョコレート市場の調査を行うほか、カカオ産地も訪問。
ウイスキーとチョコレートが好きで、カルチャースクー等でショコラとウイスキーのマリアージュセミナーを多数実施。ウイスキー専門誌「ウイスキーガロア」のテイスターを務めるほか、日本で初となるスピリッツのコンペティションTWSC(東京ウイスキー&スピリッツコンペティション)の審査員も務める。
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