カカオって、こんなにお料理にあうなんて!カカオが持つ新たな可能性を探求したスペシャルなイベントが、4月28日、銀座のホテルモントレで開催されました。その名も【一流シェフたちによる一夜限り のスペシャルディナー】CacaoismDiscoverers charity dinner produced by meiji. 収益の一部をカカオ農家の支援に役立てる、というチャリティーディナーでもあります。チョコレートジャーナリストの私、市川歩美が参加してきましたので、その様子をレポートしますね。
ディナーが始まる前には、ウェルカムドリンクとして、カカオパルプジュース(カカオの果肉のジュース)などが参加者にふるまわれ、ディナー会場の入り口には、参加した有名シェフの写真が展示されていました。
豪華シェフによるディナー
ディナーの料理を作ってくださったのは、8人の有名シェフです。
実は、みなさん、折に触れ、集まって料理の情報交換をしあうお仲間だそうで、とにかく終始和やかで、トークの息もぴったり。ご多忙なため、スケジュールを調整して、全員集合するのが難しかったそうですが、この日は全員が揃ったばかりか、お料理を作り、ご自身の料理の解説のため、各テーブルをまわってくださるという贅沢さ。時には、ご自身でお料理をサービスまでしていただけたりと、まさにスペシャルディナー!
カカオの無限の可能性を料理で開く!
ディナーが始まる前のテーブルには、メニュー表、カカオハスクを素材の一部に使った特製のコースターが並んでいました。
ここからは、「え?カカオをこんな風につかうの?」「こんなところにカカオ!」の連続。ほとんどのシェフが「カカオを使った料理は初」だったそうですが、カカオパルプやカカオニブ、ホワイトカカオといった新素材に出会うと、あらゆるアイディアが浮かんできたそうです。中華、イタリアン、日本料理、スペイン料理、寿司、フレンチに落とし込まれ、カカオのポテンシャルが引き出されていました。
ディナーに登場したお料理を、順番に写真とともに、解説しますね。
笠原 将弘さん(賛否両論)
<笠原風たけのこの里とカカオふき味噌カステラ揚げ>
カカオニブがサックサクで、タケノコが香ばしくて美味しいんです。一皿目から美味しさにワクワクしてしまいました。
「笠原風たけのこの里」は、タケノコにカカオニブと柿の種を半々の分量つけた衣で揚げたもの。
「カカオふき味噌カステラ揚げ」は、じゃがいもをベースにチョコレート効果カカオ95%を練り込み、蒸して固めて、カステラ風に揚げています。ふきのとうみその苦味とカカオの苦味が調和して食感もよく、笠原さんによると、シャンパンとの相性もぴったり、とのこと。シュワっとした泡との相性も抜群でした。
平尾 光司さん(Bistro YEBISU)
<ショコラ白レバームースカカオ、カカオパルプといちごのブラータチーズ>
うわあ、きれい、とまわりの人から声があがりました。
「カカオパルプといちごのブラータチーズ」は、カカオパルプジュースがソースに使われています。ブラータチーズの塩気と、フレッシュいちご、レーズン入りのレバームースのコクがマッチ。カカオパルプといちごの甘酸っぱさが、みずみずしいのです。
「ショコラ白レバームースカカオ」は、ほろほろ鳥の白レバームースに、メキシコホワイトカカオのチョコレートをすりおろしてトッピング。平尾シェフによると会場では「レバーは苦手ですがこれなら食べられます」というお声があがったそうです。
後藤 祐司さん(Melograno)
<生ウニとカカオのリングイネレモン風味>
一口で心は南イタリアへ!
後藤シェフはイタリアンなのでパスタを、と考えたそうです。南イタリアでの修行当時、よく味わったというウニのパスタにカカオをあわせてくれました。
ウニのほろ苦さと甘みに、カカオパルプの甘みが調和。チョコレート効果カカオ95%の苦味と、レモンの酸味、ハーブの香りが爽やか。
「カカオを、煮込み肉に使ったことはあっても、魚介に使うのは初です」と後藤シェフ。新しいカカオを使ったイタリアン、でした。
佐々木 泰広さん(ARMONICO)
<金華豚のサルシッチャ 95%カカオエスプレッソの香り、金華豚のサルシッチャ 72%カカオラズベリーソース>
カカオを使った2種類のサルシッチャを、2種食べ比べできました。
「カカオは今まで、コクだしや、ジビエの臭い消し、チョコレートジェラートにしか使ったことがありませんでした」と佐々木シェフ。
「サルシッチャは通常、ハーブやスパイスを入れますが、チョコレートだけを入れてみたら、それだけでスパイスのような香りを感じました」。チョコレートは、豚の油と相性がよいのもメリットだそう。
95%カカオの方は、チョコレート効果カカオ95%とエスプレッソを煮詰めたソースを塗り、カカオの香りも深め。
72%カカオの方は、ラズベリーを合わせてフルーティに。カカオ分によって表情を変えるサルシッチャ。カカオの力強さを感じました。
小野 淳平さん(鮨屋小野)
<平目の昆布締め~白正油マリネ~、中トロのカカオの正油漬け、焼穴子スイートカカオソース パルプジュースガリ添え>
お次はなんと、お寿司です。お寿司にカカオ?ということでとても楽しみにしていました。味わってびっくり、とっても美味しい!
「平目の昆布締め~白正油マリネ~」は、シャリにカカオパルプを使用。平目は、日本酒、みりんを煮切って、たまねぎの絞り汁、パルプジュースでマリネ。
「中トロのカカオの正油漬け」は日本酒、みりんを煮切った中に、チョコレート効果カカオ95%のチョコレートを溶かして漬け込んでいます。
「焼穴子」は、煮汁はチョコレート効果カカオ72%を使用、甘酸っぱくておいしいガリにはなんとカカオパルプを使ったのだそう。
カカオがお寿司に調和するなんて、新発見。小野さんは「今後もカカオを使っていきたい」と話していました。
亀井 真一郎さん(ホテルモントレ銀座)
<高カカオタルトとフォワグラ レンズ豆のヴルーテとカカオニブのチュイル>
ホテルモントレ銀座の亀井シェフは、フォワグラを使った、麗しいフランス料理を届けてくれました。
「甘いものという認識があり、デザートで使うことが多かった」というカカオを、しっかりと取り入れています。
「高カカオタルトとフォワグラ」は、チョコレート効果カカオ86%を使った深いカカオ感のあるキッシュと、フォアグラの濃厚なコクがマッチ。
レンズ豆のヴルーテとカカオニブのチュイルは、カカオニブを効果的に使ったサクッとした食感、そしてお菓子のような可愛らしいヴィジュアル。
赤と白のアリッサム(エディブルフラワー)が添えられ、その風味と食感の対比も楽しかったです。
田村 亮介さん(慈華)
<伊勢海老で白いエビチリ!?>
思いがけず白いエビチリが登場しました。カカオパルプと卵白を使っているそうです。カカオパルプの風味がしっかりきいたふわふわの卵白が伊勢海老と出会うなんて!
「パルプジュースを初めて知った」という田村シェフは、定番の赤いエビチリを、白くしては、と考えたのだそうです。右側はカカオニブを使った「食べるラー油」を添えて。ぴりっと辛い唐辛子とカカオニブの香ばしさが活きていました。その対比からカカオの多面性を感じました。
山田チカラさん(BCNgroc)
<パルプジュースで炊いた蛍イカのアロスネグロ、イカ墨とカカオのエスプーマ>
巨大なパエリアパンにのせて会場に運ばれてきました。ダイナミックな山田シェフの料理です。
トマトとホタルイカにカカオパルプを入れて炊いたご飯に、チョコレート効果カカオ95%のチョコレートとカカオパルプジュースを配合したイカ墨のエスプーマを添えて。
山田シェフによると、チョコレートとイカ墨の組み合わせは、ときどきスペインにあるそうです。さすが、チョコレートが初めて伝わったヨーロッパの国、ですね。
「パルプジュースは甘味と酸味があるので、玉ねぎの代わりに入れるイメージ」とも。カカオとスペインの繋がりを感じた、伝統と革新を感じるお料理でした。
終わりに
18時半にスタートして、あっという間の約3時間。
シェフのみなさんのユーモアとカカオ愛があふれ、司会の望月理恵さんの軽快な進行とともに、おしゃべりもおいしいディナーでした。
楽しいと、お食事って何倍も美味しくなりますね。誰もが笑顔だったのが、印象に残っています。
なにも難しく考えなくても「カカオってこんなにおいしくなるんですね」と感じることができたのは、きっとシェフのみなさんご自身が楽しんでくださったからでしょう。カカオはチョコレートになるだけでなく、お料理に活かせること、そしてフルーツだということ。カカオがまだまだ料理の可能性を広げられることを、五感で感じました。
企画してくださった明治のみなさん、シェフのみなさん、ありがとうございました。
カカオの未来につながるという意味でも、全く新しいスペシャルディナーでした。
テキスト:チョコレートジャーナリスト 市川歩美
写真:千々岩友美
チョコレートジャーナリスト ショコラコーディネーター
チョコレートを主なテーマとするジャーナリストとして、日本国内、カカオ生産地をはじめ各国を取材し、多数のメディアで情報を発信している。チョコレートの魅力を広く伝える、ショコラコーディネーターとしても活動。