チョコレートファンなら一度は行ってみたい、世界最大規模のチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ・パリ」。フランス・パリで毎年10月末頃に開催されています。本記事では第26回目となる「サロン・デュ・ショコラ・パリ」の様子をレポートします!
世界最大規模のチョコレートイベント
例年、2万㎡強の会場に、開催期間中(5日間)約10万人以上が訪れるというビッグイベント。2020年は新型コロナウィルスの影響で中止になりましたが、2021年は2年ぶりに開催されました。入り口で衛生パスを見せ、会場内ではマスクを着用するなど前回までとは異なる対策を取ってのイベント開催。ブース出展数はこれまでの半分以下の120程度で、ブースや来場者はコロナ禍以前に比べて少ないものの、それでもチョコレート目当てに集まる人々の笑顔と熱気は健在でした。
サロン・デュ・ショコラとは
日本でも各地で実施されていて、「サロショ」と略して呼ぶ人も多いこのイベント。実はパリ発祥のチョコレートの祭典で、1995年にショコラに情熱を傾ける2人の実業家がスタートさせました。日本のサロショは、パリから一部のショコラティエが来日し、日本のショコラティエやチョコレートメーカーと共に百貨店の催事場などでブースを展開しています。一方、フランスのサロン・デュ・ショコラ・パリは、とにかく広い会場(2万㎡強)に世界各地からチョコレートメーカーやショコラティエ、パティシエ、カカオ生産者が多数集うこと、そしてセミナーやステージプログラムなど来場者が参加できるコンテンツがあり、チョコレートを買うだけではなく、さまざまな形でチョコレートやお菓子を楽しめるのが特徴です。
2021年のサロン・デュ・ショコラ・パリの傾向は?
サロン・デュ・ショコラ・パリに出展しているのは、大きく分けてチョコレートメーカー、ショコラティエ、パティシエ、カカオ生産者、その他スパイスやドリンク、アイスクリームを扱う店など、多種多様な企業や店舗。2021年はフランス国内の出展者が2/3ほどを占めていましたが、イタリア、スイス、ベルギー、ドイツなど周辺の国々からの参加もあり、また日本からは1社のみ出展していました。顕著な傾向としては、これまで出展していた著名な高級ショコラティエが年々減少していること。彼らはパリ市内にブティックを構えていることも多いため、イベントには出展せずに自店での販売をメインに考えているようです。会場で有名ショコラティエの姿を見かけないのは少し淋しいですが、パリの市内では普段は買うことのできない地方のブランドや、子供たちが喜びそうなカジュアルなチョコレートの店が例年よりも多い印象です。またセミナーや会場内で行われるコンクール等、来場者向けのプログラムが多数あり、一日かけて楽しむためのイベントへシフトしていると感じました。
山積みのチョコレートにびっくり
A3サイズくらいの大きな板チョコレートが山積みになっていて、希望の量を買えるお店。どうやって食べるの?と聞けば、適当に割って好きなように食べればいいよ、となんとも大らかな答え。また、チョコレートがけしたギモーヴ(マシュマロ)が自分の背丈より高く積まれていたり、ヌガー(砂糖菓子)の大きな塊が並んでいたりと、迫力ある陳列はこのイベントならではの風景。皆、店のスタッフと話をしたり試食をしたりしながら、嬉しそうにチョコレートを選んでいます。
BEAN to BARが拡大中
今年は、あちこちでBEAN to BAR(カカオ豆から板チョコレートまでを一貫して手掛けるスタイル)の商品を見かけました。フランスのショコラティエ「20°NORD 20°SUD」、この名前を見てアレ?と感じた方はかなりのカカオ通!これは北緯20度、南緯20度というカカオの生産地を指します。世界各国のカカオ豆を選び、板チョコレートのほか、BEAN to BARチョコレートとドライフルーツを合わせた商品なども販売、ブースにも常にお客様がたくさんいて人気の様子が窺えました。
「Hasnaâ」はボルドーに店舗を構えるショコラティエ。ボルドーワインのボンボンショコラなど華やかなコレクションと共に、BEAN to BARも数多く並んでいました。中でもアドベントカレンダーには驚き。クリスマスまで1つずつ窓を開けながら、BEAN to BARチョコレートを楽しむという何とも楽しいギフトです。
カラフルで美しいデザインのパッケージが目を引いたのは、スイス・シャモニーのブランド。こちらもBEAN to BARのタブレットを手掛けています。これまで以上に、サロン・デュ・ショコラ・パリでBEAN to BAR関連の商品を見かけるようになっていると感じました。
※関連ページ:カカオ豆選びから始まる「BEAN to BAR」とは?BEAN to BARならではのチョコレート の特徴や楽しみ方もイベントを彩るチョコレートのアートやオブジェ
歩いていると目に入ってくるのが様々なチョコレートのオブジェ。会場を華やかに演出する存在です。ピカソの壁画『ゲルニカ』の実物大(3.49m×7.77m)がチョコレートで再現された巨大な作品や、絵画『サン=ベルナール峠を越えるボナパルト』の一部がチョコレートで作られたものも展示されていました。これはチョコレートアーティストで歴史愛好家のジャン=リュック・ドゥクリュゾーによる作品(1.10m×1.65m)。100㎏以上のチョコレートを使い120時間以上かけて制作したものだそう。ナポレオンの没後200年を迎える2021年だからこその作品です。また、会期前日の前夜祭に登場したチョコレートを装飾したドレスも会場内に飾られ、間近に見ることができます。これもパリのイベントならではの雰囲気を演出しています。
欠かせないカカオ生産者との交流
サロン・デュ・ショコラ・パリで重要な要素のひとつが、カカオ生産者との交流。今回はウガンダ、サントメ・プリンシペ、ガーナ、コートジボワール、マダガスカルなどのアフリカ諸国、ベネズエラ、ハイチ、ドミニカ共和国、コロンビア、ペルーなど中南米からブース出展がありました。各国、各地域のカカオ豆から作るBEAN to BARチョコレートを試食しながら生産国の様子を聞くなど、直接交流ができるのはこの会場ならではの特徴。民族衣装や風景の写真、オブジェなど個性豊かな展示もあり、日頃は遠い現地の様子を垣間見ることができます。生産国のブースで足を止める来場者も多く、BEAN to BARに関心がある人や、フェアトレードなどカカオ産地との繋がりやサステナブルなチョコレートに関心を持つ消費者が増えているように思います。
セミナーなどプログラムも充実
サロン・デュ・ショコラ・パリでは、チョコレートを購入するだけではなく、セミナースペースやステージでのトップショコラティエやパティシエのセミナーなど様々なプログラムが用意されています。今回は会期中にパティスリーのコンクールが同じ会場内で行われるほか、ブッシュドノエルを集めて展示したコーナーなど、この場に来ないと楽しめない工夫がいろいろ。来場者が思い思いにチョコレートやスイーツを楽しむことができるイベントです。
チョコレート好きが笑顔になる場!
本当にたくさんのチョコレートが世界各国から集まる5日間。多くの人々が楽しそうに過ごしている姿を見て、チョコレートが持つ魅力、人々を幸せな気持ちにする力を改めて感じました。来年のサロン・デュ・ショコラ・パリも10月下旬の開催予定とのこと。コロナ禍が落ち着き、チョコレートが好きな人々や世界各国の作り手、カカオ生産者たちが一堂に会することを願っています。
撮影:平田早苗
このコラムは私が書きました。
プロフィール:平田早苗
大学卒業後、洋菓子関連の会社に入社し販売や商品開発に携わる。その後独立、スイーツプランナー、ショコラコンシェルジュ®として、様々なスイーツやチョコレートの商品企画開発や店舗改善などコンサルタントとして幅広く活動。10年以上、サロン・デュ・ショコラ・パリの視察をはじめ、世界各国のスイーツ、チョコレートの市場調査を行う。ウイスキーとチョコレートが好きで、カルチャースクールほか、全国各地でショコラとウイスキーのマリアージュセミナーを多数実施、ウイスキー専門誌「ウイスキーガロア」のテイスターも務める。http://www.potluck-i.com/