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カカオハスクとは? カカオハスクに関してやアップサイクルについても解説

カカオハスクとは? カカオハスクに関してやアップサイクルについても解説

チョコレートの原料となるのがカカオ豆。しかし、「カカオハスク」という言葉は聞いたことがない方も多いかもしれません。この記事では、カカオハスクについての詳しい説明や、最近の傾向などを紹介します。

カカオハスクとは?

カカオハスクとはカカオ豆の種皮のことで、シェルとも呼ばれています。カカオハスクは繊維質で固く、チョコレートに加えると口当たりや風味が悪くなるため、カカオ豆のカカオハスク(種皮)はチョコレート製造の途中で取り除かれます。カカオハスクを取り除いたカカオニブと呼ばれる胚乳部が、チョコレートの原料となります。

チョコレートの製造工程とカカオハスクの分離

チョコレートの製造工程には、ロースト、磨砕、混合、微粒化、精練・・・などがあります。カカオ豆をそのままローストする「豆ロースト」では、カカオ豆をローストした後にカカオハスクを分離します。一方「ニブロースト」は、カカオニブとカカオハスクを分離してからローストします。分離は、ウィノワという機械で風と振動ふるいによりカカオハスクとカカオニブは分離されます。

カカオハスクの使い道は?

カカオ豆の種皮であるカカオハスクは、チョコレートに入ると雑味になるとされており、製造工程においてはカカオニブになるべくカカオハスクが混入しないよう、選別作業が行われます。取り除かれたカカオハスクは、メーカーによっては、飼料や肥料、燃料に使用することもあります。

最近の傾向、カカオハスクの利用例

チョコレートに加えると風味や食感が悪くなるため、これまでは積極的に活用されることが少なかったカカオハスク。しかし近年、カカオの生産を持続可能なものにする取り組みや、本来活用されてこなかったものを資源として有効活用する取り組みの一環として、カカオハスクを利用する動きが出てきています。ここでは、カカオハスクを使ったアップサイクルの例をご紹介します。

カカオハスクのアップサイクル

「アップサイクル」とは、持続可能なモノ作りの方法のひとつです。リサイクル(再資源化)とは異なり、元の製品よりも価値が高いものを生み出すことを目的とします。今まで積極的な活用がされてこなかったカカオハスクを利用し、新たな価値を持つ別の製品に生み出す動きもアップサイクルと言えるでしょう。株式会社 明治では、チョコレートとは異なるカカオ素材を開発し、チョコレートの原料として使用してこなかった部位も含めてカカオをまるごと活用する、ホールカカオの取組みを始めています。そのひとつがカカオハスクを使った雑貨へのアップサイクルです。

カカオハスクが雑貨に!?

株式会社 明治は、カカオハスクを新しい価値のあるものにアップサイクルすることで、カカオの価値を高め、カカオ農家の負担を増やさずカカオ産地に還元していきたいという思いから、他社との協業を進め、カカオハスクを利用したコースターや皿が誕生しました。一緒に取り組んだのは、食品廃棄物などを原料とし、100%天然由来の新素材を作る技術を保有しているfabula 株式会社。同社は「ゴミから感動をつくる」をステイトメントに、雑貨から建築材料まで幅広い製品を展開しています。そしてもう一社が株式会社 漆琳堂で、創業1793年(寛政5年)以来、福井県鯖江市で代々漆業に携わってきた漆器メーカーです。この2社と株式会社 明治のコラボレーションにより、明治のチョコレート製造で取り除かれるカカオハスクを使用した100%天然由来のコースターや平椀などが誕生しました。自然由来のもので作られているため生分解性があり、本当に不要になった際は土に還すことができるので、地球に優しい製品になっています。平椀はアクセサリーや小物入れ、チョコレートを入れる器としても利用できます。これらの雑貨からカカオの香りが楽しめるというのは何ともユニークですね。

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カカオハスクから生まれたタンブラー

アサヒユウアス株式会社がチョコレートデザイン株式会社と共創して商品化したのが、「カカオハスクの森のタンブラー」です。「森のタンブラー」シリーズは"使い捨て"という消費行動自体を変革することを目標とした、リユースできるエコカップ。さとうきびの搾りかすを使ったタンブラーや、折れたバットを使用したタンブラーを展開する中、カカオハスクが年間約12トン排出されることに着目し、「カカオハスクの森のタンブラー」が誕生。このタンブラーはポリプロピレン(45%)、カカオハスク(30%)、ヒノキ間伐材(25%)で構成されており、カカオ由来の甘い香りを楽しむことができます。

販売場所:バニラビーンズ みなとみらい本店(横浜市中区海岸通5-25-2 シャレール海岸通1F)

カカオハスクで染めた布製品

近年、カカオハスクを染色に利用する「カカオ染め」も出てきています。パティスリー「FORTISSIMO H(フォルテシモ アッシュ)」のオーナー、辻口シェフが所有するペルーの自社農園で栽培されたカカオ豆の種皮(カカオハスク)から抽出した色で染めた生地を使用したエコバッグと巾着が、2023年のバレンタイン期間限定で販売されました。また、BEAN to BARブランドの「ショコラティエ パレ ド オール」では、チョコレート製造時に出るカカオハスクを提供し、青森県のブランド「ハンサムリネンKOMO」がリネンストールに仕上げました。カカオの香りはありませんが、カカオらしい茶色から淡いベージュまで4色の色合いで展開しています。
※ショコラティエ パレ ド オール:オンラインショップのみの取扱い

「ひらけ、カカオ。」の取り組み

株式会社 明治は、2022年3月に「ひらけ、カカオ。」という新しいアクションを発表しました。カカオを"豆"ではなく"フルーツ"として捉え、カカオが持つ可能性をさらに広げていくことで、カカオ生産の持続可能性を向上させていく取り組みです。具体的には、従来のチョコレートとは異なるカカオの新素材の開発をするほか、外部との協業によりカカオをまるごと使い切る取組みなどをバリューチェーン全体で実現することを目指します。また、IoTを活用した情報発信を進化させるなど、農家の負担を増やさずに明治の知恵でカカオの価値を増大させるアクションです。
先ほど記載したカカオハスクのアップサイクルのほか、カカオフラバノール(カカオポリフェノールの一群)を抽出したエキスを、ドリンクやソルベに利用するなど、これまでになかった新しいカカオ素材の開発を続けています。

カカオハスクの広がりに今後も注目

これまでチョコレートの原料として使われることがなかったカカオハスク。近年、SDGsへの関心の高まりもあり、有効活用されてこなかった素材や廃棄する素材から新しい価値を持つものに生まれ変わらせる動きが、いろいろと出てきています。私たちの日常生活において、カカオハスクはあまり身近ではありませんが、今後はカカオハスクを生かした雑貨や衣類などを見かける機会が出てくるかもしれません。有効活用されてこなかったカカオハスクをアップサイクルすることで、カカオ農園への支援などに繋がったりするのは、チョコレート好きにとっては嬉しい限り。そのような商品を見かけたら手に取ってみてくださいね。