トレンド

1級フードアナリスト里井真由美さんがきく チョコレート検定上級合格者・三浦さんのチョコレートの楽しみ方

1級フードアナリスト里井真由美さんがきく チョコレート検定上級合格者・三浦さんのチョコレートの楽しみ方

株式会社 明治が2016年より実施している『チョコレート検定』。スペシャリスト(初級)、エキスパート(中級)、プロフェッショナル(上級)の3つの級に分かれており、最難関のプロフェッショナルは合格率17.8%(2022年度)の狭き門となっています。そんなレベルの高い試験に見事合格した"チョコレートプロフェッショナル"の方々に、1級フードアナリストの里井真由美さんがインタビュー。第4回となる今回は、出会ったチョコレートのすべてを「チョコ帳」に記録するという三浦さんのチョコレートライフについてうかがいました。

プロフィール

三浦麻衣さん

子どものころからのチョコレート好きが高じ、「チョコ帳」をつけ始める。自宅には数え切れないほどのチョコレートをストックしており、テイスティングはもはや毎日の習慣に。当日、身に着けていたテオブロマの分子構造を模したネックレスもお似合い。

里井真由美さん

食・食文化の専門家として、テレビや雑誌、ラジオ、Webなどのメディアを中心に活動。世界各国のレストランに着物で足を運び、グルメ誌に連載するスタイルが話題に。グルメスイーツの年間食べ歩きは1000店以上で、平均7000種以上のスイーツを食している。
里井真由美 プロフィール

今なお増えるばかり! 10年以上、21冊にも及ぶ「チョコ帳」の気になる中身

basic40_02.jpg

里井さん
早速なんですけど、「チョコ帳」について教えていただけますか?

三浦さん
テイスティングをされている方って、何かしらメモを取っていらっしゃると思います。私の「チョコ帳」も同じで、最初のころは日記に書いていたんですが、そのうちチョコレートの話ばかりになってきたので、日記と分けて「チョコ帳」にしました。

里井さん
日記は毎日つけていらっしゃるんですよね。どのくらい続けているんですか?

三浦さん
覚えていないけど、もう20年くらいですね。「チョコ帳」が独立したのは10年ぐらい前で。備忘録のような感じで、テイスティングした日付や時間帯、チョコレートの種類、口にしたときの感想などを書いています。

里井さん
すごい、どちらも長いですね! 三浦さんが書いた感想、パッケージによく記載されている解説よりも詳しい。

三浦さん
あとは、パッケージに載っている「原材料」の表示を切り取ったものや、気に入ったパッケージなんかも貼っていたりします。こうやってまとめておくと、パッケージが変わったときに比較できるんですよ。パッケージの変更と同時に味が変わったりもするので、どう変わったのかが見えるのが楽しくて。

『meiji THE Chocolate』も今のパッケージになったとき、特にベネズエラは劇的に味が変わった気がします。個包装のパッケージも開けやすくなったし。

basic40_03.jpg
三浦さんの「チョコ帳」

里井さん
明治さん、全部バレてますよ(笑)。ちなみに「チョコ帳」は何冊くらいになったんですか?

三浦さん
今、21冊目が終わろうとしています。

里井さん
21冊!

三浦さん
ここまでまとめていると、いろいろな情報を遡って調べられます。「チョコ帳」には書き始めた日と書き終えた日を書くので、「このチョコレート、前にも食べたな」ってときに調べて、「○冊目の○ページに書いてある」とチェックできるのがいいですね。

里井さん
手帳というより、もう図鑑ですね(笑)。

三浦さん
実はそれを目指しているんです。完全に自分用ですけどね。『サロン・デュ・ショコラ』などでお会いしたショコラティエさんのサインも、ここに書いていただいています。パッケージは気に入ったもの以外、残さないタイプだけど、パッケージにサインしてもらうと捨てられなくなっちゃうから、「チョコ帳」がいいんです。「ピッコラ パスティチェリア」の才村由美子さんのサインもここに。大好きなんですよね。

里井さん
素敵ですよね、才村さん。ショコラティエ同士で、憧れているというお話もよくお聞きします。

basic40_04.jpg
「ピッコラ パスティチェリア」の才村由美子さんのサイン

比較する楽しさを知ってからは日々、一人テイスティング会を開催中

basic40_05.jpg

里井さん
チョコレートが食事代わりになることもあると聞いたんですが、普段はどうやって召し上がっているんですか?

三浦さん
週末だと、起きて最初の食事がチョコレートになることは多いですね。平日は、仕事から帰ってきたら一人テイスティング会を開いています。帰りの電車の中で、「今日はあれとこれを比べよう」とか決めて。帰宅してストックを見たら「あ、これもあった」なんて感じで気が変わることもあります。

里井さん
さらっと「ストック」っておっしゃいました(笑)? ちなみに、数はどのくらい?

三浦さん
何個くらいあるのか、ちょっともうわからないですね。

里井さん
それ、多すぎて数えられないんですよ(笑)。

三浦さん
私、真空パックがつくれるバキュームを持っているんです。ホイルと紙でくるまれた板チョコなんかは、ホイルだけの状態でアルミ製保存袋に入れて、酸素を抜いてとっておいたり。オフィシャルには薦められないことだと思いますが、長持ちするんですよね。

里井さん
それって、プロの方が食品を保存するのに使ったりする道具ですよね。すごい!

三浦さん
そういう方、いませんでした? チョコレート友だちでやってる人もいるんですが。

里井さん
いないいない(笑)。それは多分、チョコレートプロフェッショナルの方だからですよ。さすが上級!そんな三浦さんが開催している、一人テイスティング会も気になります。そもそも、テイスティングをするようになったきっかけはなんだったのですか?

三浦さん
昔からチョコレートは普通に食べていて、ボンボンショコラが好きだったときも、何も考えずに味わっているだけでした。それが板チョコにハマりだすと同時に、テイスティング会にも通うようになって比べる楽しさを知ったんです。

里井さん
テイスティング会って、『サロン・デュ・ショコラ』とか?

三浦さん
そうですね。あとはチョコレートのインポーターさんが開催するものとか。チョコレートソムリエのさつたにかなこさんが開催したテイスティングイベントでは、「チョコレートも比べるんだ」ってことを初めて知りました。私はもともとコーヒーが好きなんですが、コーヒーでも比べるテイスティングがあって慣れていたので、チョコレートの方もわりとすんなり入り込めましたね。

里井さん
比べるときは、何を基準にしているんですか?

三浦さん
主に二つあって、ひとつは同じカカオ豆でつくり手が違うパターンです。もうひとつは、同じつくり手でいろんな産地のパターン。たとえば、BEAN to BARのお店は何種類も揃っているので、一通り買って比べています。同じお店で%が違うものや、ミルクのあるなしでもどう変わるかを試してみたり。

basic40_06.jpg
三浦さんが大事に保管しているチョコレートのパッケージ

里井さん
ご自宅でテイスティングするときは、どんな手順でやっていらっしゃるの?

三浦さん
中身がわからないようにホイルに包んで、シャッフルしてから食べてどのチョコレートかを当てたりしています。

里井さん
その結果がまた、「チョコ帳」に刻まれていくんですね(笑)。

三浦さん
はい(笑)。最初は食べて楽しかったけれど、近ごろは比べるのが楽しいですね。今はむしろ、舌で分析するのがチョコレートを口にする目的になっているかもしれません(笑)。

里井さん
カカオの%で比較するとのことですが、お好みは何%くらい?

三浦さん
そのときの気分にもよるんですが、食べておいしいと思うのは70%〜80%ですね。100%なら、毎日食べているカカオニブの方がおいしい。

里井さん
これまたサラッとおっしゃいましたが、カカオニブを毎日召し上がるの?(笑)

三浦さん
もっと言うと、ニブは鮮度が落ちているので、カカオの生豆を自分でローストしています(笑)。

里井さん
マニアックでいいなぁ、もう(笑)。それが朝ごはんになったり?

三浦さん
昼ですね。家でケフィアヨーグルトを作っているので、それに入れて食べています。

里井さん
ケフィアって一時期、流行りましたよね。それを続けていらっしゃるのもすごい。

三浦さん
私、一度習慣づくとしつこいんですよ(笑)。

テイスティングに活用できるものも! 三浦さんお気に入りのチョコレート

basic40_07.jpg

里井さん
最近のお気に入りは、どんなチョコレートですか?

三浦さん
国内だと、一番好きなのは島根県のラ ショコラトリ ナナイロさん。今日もパッケージをお持ちしたんですが、この春に出たばかりの新作はボリビアのカカオを使っていらっしゃいます。BIOとWILDでそれぞれ2種類ずつあるので、テイスティングのときはBIO同士、あるいはWILD同士で比較したり、組み合わせをいろいろ替えたりして楽しんでいます。

海外だと、カナダのカントゥさん。ダークチョコレートがおいしいんです。あと、イタリアのカルーナ チョコレートさんも好きですね。最近、デーツシュガーを使ったタイプが出てきて、「これ知らない!」ってなって。

里井さん
デーツ単体では和菓子などにも使われたりしますけど、シュガーは珍しいですよね。どんなお味でした?

三浦さん
私はデーツそのものを食べ慣れていないので、シュガーになったときにデーツの味わいがどう出ているのかがよくわからないんですが、きび砂糖などと比べて甘さ控えめな印象がありました。「カラダにいいもの食べてるな」って感じ。これから使う方が増えていけば、いろいろ食べ比べができそうなので楽しみです。

basic40_08.jpg
島根県の「ラ ショコラトリ ナナイロ」のパッケージ

里井さん
ナッツのチョコレートもお好きだとか?

三浦さん
ええ、特にアーモンドとヘーゼルナッツが好きですね。アーモンドのチョコレートは、いろいろ試した結果お気に入りがたくさんありますが、ナナイロさんのものがおいしいと思います。東京・自由が丘のショコラティエ ヤスヒロ セノさんのものもまた、すごい職人技でおいしい。ヘーゼルナッツを使ったチョコレートはアーモンドほど選択肢がないのですけど、やはり才村さんのものがおいしいですね。

あと、くるみやピーナッツのチョコレートも好き。ただ、ひとつ不満があって、日本のショコラティエさんには、ピーナッツをもっと使ってほしいと思っています。

里井さん
あまり使われてない理由って、三浦さんは何だと思いますか?

三浦さん
勝手な想像ですが、安いものだという思い込みがあるのかなって。でも、千葉のピーナッツが輸入アーモンドより価格が高いときもあるじゃないですか。

里井さん
そうなんですよね。日本人はピーナッツのチョコレートに親しんできた歴史が長いので、高価なものとは思いにくいのかも。外国のものの方が高いと思われがちですよね。

三浦さん
あと、ナッツのチョコレートって、ナッツは得意だけどチョコレートはこだわっていなかったり、逆にチョコレートはいいのにナッツの扱いがいまいちだったりするところもあるんですよね。......って、自分でつくりもしないのに、こんなこと言ってアレなんですけど(笑)。

里井さん
いやいや、わかります。重要ですよね。そんな三浦さんが、チョコレートと組み合わせたい素材って何かありますか?

三浦さん
そこが弱いところなんですよ。ペアリングの知識がないので、これから探っていきたいですね。

里井さんのオススメ

「PACARI」のチョコレートバー

エクアドルでカカオの木からチョコレートの製造工程までを自社で行うTree to Barがコンセプトのブランド。こちらのタブレットショコラは「こんな素材と組み合わせ!?」と多くの発見があります。

中でも、フルーティーなカカオの香りのチョコレートにドライイチジクを混ぜ込んだ「フィグ」、ダークチョコレートにピンクの塩とカカオニブを交ぜた「ソルト&ニブ」、滑らかなチョコレートに華やかな香りをあわせた「ジャスミン」、は食べやすくてオススメです!同じエクアドル産の「グアユサ茶」や中南米に咲く「リカリカ」など珍しい素材を使ったものにもチャレンジしてみたいですね。

同志に出会え、イベントにも参加できる『チョコレート検定』の魅力

basic40_09.jpg

里井さん
三浦さんが『チョコレート検定』を受けたのは、いつのことですか?

三浦さん
初級、中級、上級とも、すべて初年度に受けてきました(初級は2016年、中級は2017年、上級は2019年)。初級は公式テキストからの出題が中心とのことだったので、公式テキストをひたすら読んで。中級のときは、公式テキストの内容が前年のものと変わっていなかったので、同じテキストを覚え込みました。上級は事前に参考文献が発表されていて、テキストだけじゃ足りないと暗示していたので、それらの文献を可能な限り集めて読んでいましたね。

里井さん
「チョコ帳」を10年つけ続けてきた三浦さんでも難しかったですか?

三浦さん
それはもちろん。一番難しかったのは、工場で使われる大きな機械のことですね。工場では一般的なことでも、消費者にはわからないので。

里井さん
見たことがないと、絵も浮かびませんもんね。どのくらいの期間、勉強したんですか?

三浦さん
だいたい1か月くらいですね。1日1時間くらい、通勤電車の中で本を読んでいました。覚えているかをチェックするために、久しぶりに暗記用のペンも使いましたね(笑)。上級のときは、『meiji THE Chocolate』のテイスティングも出題されるので、ひたすら食べて味を覚え込んだり。最終的にはブラインドテストで当てられるまでになったので、この設問だけは自信がありましたね。

里井さん
仕事と勉強を両立させるコツは何でしょうか?

三浦さん
私の場合、もともとチョコレートの本を読むのは好きだったので、あまり参考にならないかも......電車の中、お昼休みなど、空いた時間に少しずつ読むことの積み重ねですね。

里井さん
ダイエットと同じですね(笑)。実際に合格して、何か変わりましたか?

三浦さん
今回の取材のような場に呼ばれるようになったことですね。明治さんの『のむチョコ研究部』など、上級取得者限定のイベントに参加できるのが一番楽しいです。

basic40_10.jpg
明治のチョコレートメーカーでつくった夏向けのチョコレートドリンクを試飲

里井さん
好きなものの話ができる仲間がいると、その世界はもっと広がりますもんね。いろんな人がいるのもわかるし。

三浦さん
たしかに、このインタビューに「チョコ帳」を持ってくるときも、夫には「オタクっぽく思われるからやめた方がいい」って言われたんですけど、チョコレートのイベントでは同じようなチョコレート好きがたくさんいて「私、意外と普通だな」って思います(笑)。

里井さん
この記事を読んで、「チョコ帳」をつける人も増えるかも!

全国で実施決定!『チョコレート検定 2023』申し込み受け付け中

basic40_11.png

三浦さんのチョコレートライフをさらに豊かにした『チョコレート検定』が、今年も全国47都道府県のテストセンター(CBT方式)で開催されます。(※上級2次試験のみ、東京・大阪会場で実施)チョコレート好きなら誰でも受検できるので、気になる方はこちらのページでご確認を。あなたのチョコレートライフも、きっと変わるかも!?

『チョコレート検定 2023』公式サイト

興味はあるけどチョコレート検定はハードルが高い...... そんな方には、参加無料で出題数10問のプレチョコ検定も。まずは気軽に試してみてはいかがでしょうか?

『プレチョコレート検定』公式ページ