カカオの文化

メキシコ(9)カカオドリンク

Hola! こんにちは!オアハカのHirokoです。今回から数回にわたってオアハカのカカオドリンクについてご紹介します。

オアハカ州自体はあまり大々的なカカオ生産地ではないものの、標高が低いところではかなり古くから栽培してきた地域もあります。また、スペイン人が到来する以前から、カカオ産地であるチアパス州やメキシコ湾岸のマヤ地域とメキシコ中央高原の間の交易路であり、トウモロコシや唐辛子をはじめとする数々の食材の供給地でもあったという地理的要因、また様々な先住民グループがそれぞれに重要な儀式などにカカオを用いていたという文化的要因から、オアハカはカカオドリンクが多様な形で発展・継承される土壌が培われてきたのです。

オアハカのBIJC(フアン・デ・コルドバ研究図書室)の調査によりますと、オアハカ州内だけで類似したものも含め、少なくとも19種のカカオドリンクが現存することがわかっており、実際にはさらに分化したバリエーションもあると言われています。

そのカカオドリンクの多くで、『泡』がとても重要な要素となっています。ドリンクによっては泡立ち部分と液体部分を分けて作り、飲むときに一緒にするものもあります。カカオはだいたい泡立ち部分の材料として使われることが多いようです。
また、トウモロコシも多くのカカオドリンクには不可欠な材料です。古代メキシコの伝説では、神様はトウモロコシから人間を作り、人間はカカオを神々の食べ物として捧げています。カカオとトウモロコシが入っていれば、飲み物であってもカロリーたっぷりで腹持ちバッチリというわけです。トウモロコシはカカオと一緒に磨り潰して作る場合もありますが、アトーレというトウモロコシ主体の飲み物にして、あとからカカオ主体の泡部分と混ぜたりすることもありますので、まずはベースとなるアトーレを紹介します。
トウモロコシを磨り潰してできた生地をマサといいます。アトーレはこのマサを水や牛乳に溶いて加熱してつくる重湯のようなとろみのある飲み物で、何も味付けしていないプレーン味のアトーレを『アトーレ・ブランコ』(白いアトーレ、『白米』的な感じですね。)といいます。カカオドリンクのベースにこのアトーレ・ブランコを使うこともあります。

近所のメルカドのアトーレ屋さんのアトーレ・ブランコ。作り方を尋ねたら、一晩トウモロコシを水につけてふやかした後、固い皮を取り除いてから磨り潰して水に溶き、それを木綿布で漉したものをとろみが出るまで加熱するそうです。それに別で煮ておいて粗く砕いたトウモロコシの粒(グラニージョ:黄色の容器に入ってるもの)をトッピングしてくれます。他にミルク味、チョコラテ味と黒糖味があります。
ミルク味はほのかな甘みと粒の残る食感やとろみが甘酒みたいです。

アトーレ・ブランコに黒糖や果物やチョコラテなどで甘くして飲む場合も多く、朝食をアトーレで済ます人も結構います。
現在では色々な味がつけてあるインスタントのアトーレもスーパーなどで市販されています。

すみません!今回はカカオドリンクの前説だけに終始してしまいました...。次回からオアハカ各地方に伝わる色々なドリンクについて、個別にご紹介していきますので、乞うご期待?!

このコラムは私が書きました。

ガイド名:Hiroko Sato
出身地:東京

オアハカ在住14年目。世界遺産検定1級。大学時代からメキシコについて専攻し、卒業後旅行会社に勤務。移住後はオアハカを中心にメキシコ全般のガイド、テレビ番組や出張のコーディネーターなど多く経験あり。