Buongiorno!皆様こんにちは!
本日はアモーレ(愛)の国イタリアより、トリノの街発祥のビチェリンという美味しいエスプレッソコーヒーとチョコレートとミルクのハーモニーが抜群の人気ドリンクのご紹介です!
イタリアは地中海の気候と自然に恵まれ、世界遺産の宝庫であり、明るく元気なラテン系気質など、その魅力は山ほどありますが、この国で胃袋を幸せにして貰った旅行者は少なくないはずです。(いやそれを目的で来る人の方が多いかもしれません。) イタリア各地甲乙つけ難いほどどこに行っても美味しいものがありますが、舌の肥えたイタリア人が食のレベルの高さで意見が一致する地方の一つが、本日ご紹介致しますビチェリンが生まれたトリノのあるピエモンテ州です。
トリノはイタリアの北西、すぐお隣はスイスとフランスに国境を接したピエモンテ州の州都、そしてイタリアが統一(当時は王国)された時の最初に首都になった歴史上大切な街でもあります。街中には広い通りと美しい広場が多く、洗練されたフランスの雰囲気が漂うお洒落な街並みです。
観光地としても、キリストの遺体を包んだと言われる聖骸布が保存される大聖堂や、カイロに次ぐ収集を誇るエジプト博物館など見所も多く人気があります。サッカー好きにはイタリアでNO1の人気を誇るユベントスの本拠地として、車マニアにはフィアット社(現在はステランティス社と合併)始め自動車産業都市として有名などイタリアの都市の中でもビジネスとしての大事な要素を持っている魅力的な街です。2006年には冬季オリンピックが開かれ、フィギュアスケートの荒川静香さんが金メダルと獲った場所として御記憶にある方もいらっしゃると思います。
更に何といってもトリノ(ピエモンテ)は食のレベルが圧倒的に高く、質にこだわった食材の大型スーパーイータリーはトリノ生まれ、近くのブラという町ではスローフード運動が発祥し、赤ワインの王様と呼ばれるバローロやバルバレスコなど高級ワインの産地があり、白トリュフで有名なアルバが近く、かつて日本に上陸していたグロム(自然素材を使ったジェラート)もトリノのメーカーです。
数ある美味しい食材の中でもトリノはイタリアの【チョコレートの都】と呼ばれており、特に良質のヘーゼルナッツの産地でもある地の利を生かし、ヘーゼルナッツをペースト、もしくは丸ごとや砕いたものがたくさん入ったチョコレートはその美味しさで絶大な人気を誇っています。
トリノのチョコレートについて
街には確かにスイーツを売るお店、特にチョコレート屋さんが多いことに気が付きます。それだけトリノの人もチョコレートが好きで、その質も高く(パッケージまでお洒落)そしてチョコレートをお目当てにトリノに来る人も多い、ということです。
中でも有名なトリノのチョコレートは、ジャンドゥーヤチョコレートです。ピエモンテ州産の高品質ヘーゼルナッツのペーストが練り込まれた柔らかい食感のチョコレートで、ナッツの含有率は40%前後のものもあり、口に入れずともナッツの香りが漂うほどの風味の高さです。
大きな塊のジャンドゥーヤを一口サイズで売り出したのが、カファエルという会社で、イタリア語で小さいという意味のオットを語尾につけて、ジャンドゥイオットと名付けられ、一つ一つ個装されました。
今でも個装されたお菓子が少ないイタリアではとても画期的なことでしたがその理由というのが、それまでのチョコレートはその光沢を愛でるために包まずに裸で売られていましたが、ジャンドゥーヤはヘーゼルナッツが沢山含まれているので艶やかではないため(くすんだ茶色)つまり見た目が美しくないので包んで隠してしまおう、どうせなら輝く金色の包装紙にすればこのチョコにも光沢がでる!というアイデアだったそうです。
ですので今でも一口サイズのジャンドゥイオットの個装紙は金色(若しくは光沢のある色紙)なのです。
イタリア人でも知っている人が少ないトリノの名物チョコレートに"Cri-Cri"(クリ、クリ)があります。丸ごとのヘーゼルナッツがチョコレートでコーティングされ、表面にグラニュー糖がまぶしてあります。オリジナルのクリクリは必ず色付きの包装紙で個装されています。
この可愛い名前がついた由来は19世紀に遡るのですが、その前にイタリアでは名前を省略して呼び合うことを御説明しておく必要があります。
例えばガブリエラはガブ、フランチェスカはフラ、など長い名前の場合、親しい間では頭の2文字で呼ぶのです、クリスティーナはクリになります。
当時トリノの若い男子学生がクリスティーナというガールフレンドに夢中で、来る日も来る日もお菓子屋さんで必ずこのチョコレートを買ってプレゼントしていたそうです。
余りにも毎回同じチョコレートを買うので、店員さんが店員"クリ?" (クリの為?) と聞くと、彼氏"クリ!"(クリの為!) と答えるだけでこのチョコレートが出てくるようになったので、クリクリという名前になったそうです。ガールフレンドはよっぽどこのチョコレートが好きだったのですね。(ガールフレンドの名前によっては、ガブガブとかフラフラになったかも?) 今でもトリノの名物ですが、その個装紙の華やかさから現在ではクリスマスの時期に食べるのが、トリノでの伝統になっているそうです。
ピエモンテ州のヘーゼルナッツ
ピエモンテ州産のヘーゼルナッツには、IGP(Indicazione Geografica Protetta)というEUが認める農産物のレベルの高さを証明する肩書が付いています。
定められた厳しい基準(生産場所、生産量、質など多項目)をクリアする必要があり、生産国のみならずEUから認定されないといけないので、その品質の高さが認められているということです。
寒さが厳しい北イタリアのピエモンテ州で育てられるヘーゼルナッツは、まん丸で皮が薄く実が引き締まっていて、風味がとてもデリケートなのが特徴です。ピエモンテではチョコレートやケーキなど甘いものだけではなく、お料理にも頻繁に使われます。
牛乳に浸してふやかした食パン(耳は切り落として白い部分のみ)と、たっぷりのヘーゼルナッツ、リコッタチーズ、オリーブオイルをミキサーにかけてクリーム状にしたものを茹でたパスタに和えたり、もしくは詰め物パスタの中にいれた料理は大変人気があります。/p>
トリノのお洒落なカフェ
チョコレートに並んでトリノでレベルが高いのは、コーヒーショップです。
フランス出身のサヴォイア家に統治されていたトリノは、イタリアの中でも最もフランスの影響を強く受けており、コーヒーが好きだった王侯貴族をはじめ、政治家や著名人に愛された多くのカフェが、18~19世紀当時の面影や雰囲気をそのままに残しています。
シャンデリアや大理石のテーブル、布張りの椅子など優雅なコーヒータイムが楽しめるのもトリノのカフェの魅力の一つです。
トリノ生まれのビチェリン
18世紀にトリノで生まれたビチェリンは、現在でもトリノ以外の街ではほとんど見かけません。最初にビチェリンをサーブしたのは、1763年に開店したAL BICERINというカフェテリアで、既に存在していたbavareisa(ババレイザ)という名前のコーヒ-、チョコレート、ミルクを全て混ぜ合わせたドリンクの3つの材料を別々にサーブして、お好みで2,3種を混ぜ合わせて飲む形になり、19世紀に現在のような一つのグラスに3層に入れて出したのが、ビチェリンの始まりでした。
ビチェリンというのはトリノの方言で、【小さなグラス】という意味で、コーヒーカップではなく、正確には中の層が見える透明の持ち手がないグラスに入っています。(逆に言うとグラスが違うだけでビチェリン失格ということになります。)/p>
一番上の白い層はスチームミルク(生クリームではなく、あくまでもクリーム状のミルク)、真ん中はカフェ、エスプレッソコーヒーですが実は本物のビチェリン用の豆、挽き具合、圧縮法があるそうです。そして一番下には溶かし具合に拘ったチョコレート(多くはガーナ、カメルーン、ブラジルやインドネシア産など此方もビチェリンに適したチョコレートの厳選があるそうです)で、3つの素材それぞれの濃厚さ、温度、風味をベストに引き出さないと完璧なビチェリンにはなりません。(もはや化学です。)
そして大切なのはその飲み方。決して混ぜてはいけません!まずは一番上のミルクをそっとそそり、次に熱くてほろ苦いコーヒーの風味を楽しみ、最後に甘いチョコレートを食べるように味わうのが正しいビチェリンの作法です。(イタリア人飲食には煩い。笑) 混ぜて飲んでしまったら、それは前述のババレイザでビチェリンとは呼べなくなります。
1913年までビチェリンはなんとたったの15セント(20円前後)でした。値上げ後は20セント。現在はカプチーノより高くなってしまいましたが、それもそのはず、2001年にはピエモンテ州の伝統的な飲み物として認定され、世界中に知られるようになりましたのでその功績は凄いものです。 オリジナルはAL BICERINですが、トリノのカフェであればほとんどのお店のメニューにあります。(繰り返しますが他都市では飲めません。)
ホットチョコレートとは呼べない3つの素材の完璧なハーモニーとその飲み方が特別なビチェリン、チョコレートの都トリノにいらしたときには、是非とも本物のビチェリンをお楽しみくださいませ!
このコラムは私が書きました。
ガイド名:FURUKAWA/ SACHIE
大学で経済学部を卒業したにも拘らず、接客業に目覚め国内線客室乗務員として働くが、人生一つでも多くの国を見たいという好奇心から、再び英語留学。しかし英語は役に立たないイタリアでバスガイドという仕事に就くこととなり渡伊。 知識も語学力もないまま辿り着いたイタリアという国に、魂を奪われ在住24年となりました。イタリア人以上にイタリアを愛し、ほっぺたが落ちるイタ飯と、自然と芸術に囲まれたこの国の尽きない魅力をお伝えしたいと思っています。