カカオの文化

メキシコ(7)モリニージョ(Molinillo)について〈前編〉

Hola! こんにちは!オアハカのHirokoです。今回と次回の2回にわたり、チョコラテを飲む際になくてはならない秘密兵器モリニージョ*についてご紹介します。(*Molinillo:モリニーヨ、モリニーニョ、モリニーリョなど、さまざまな日本語表記が存在します。)今回は前編です!

オアハカではチョコラテを飲む際に必ずよく泡立ててから器に注ぎます。泡立てるのは古代メキシコの神様へのお供えだった頃からとっても重要な条件だったようで、器からモコモコと泡がはみ出しているような絵や、古代の泡立て方の図などが絵文書などにも残っています。

当時は温めて飲む習慣はなかったので、この絵のように、高いところから別の器に流し落とすようなやり方でわざわざ泡を作っていたようです。

スペイン人が来てから、チョコラテを温めて、砂糖やバニラを加えたりすることで、味わい方も変化していきました。(ちなみにバニラもメキシコ原産ですよ!)そんな変化を経たあとでも泡立てて飲むという条件は踏襲され続け、木の棒を使った泡だて器が考案されました。それがモリニージョ(molinillo)です。

メルカドで売られているモリニージョ達。使い方を知らないと一緒に置いてあるおもちゃと混同しちゃいそうですね。

征服以前にもチコリ(chicoli)と呼ばれたかき混ぜ棒は存在していたようですが、モリニージョは1787年に編纂されたスペイン語の辞書※にも『動かしてチョコラテを泡立てるための穴をあけた木製の棒』と定義されており、1700年代にはモリニージョが泡だて器として一般的に使われていたことがわかっています。

※Terreros y Pando, Esteban (1787). Diccionario castellano con las voces de ciencias y artes y sus correspondientes en las tres lenguas francesa, latina é italiana

写真は我が家のモリニージョ達。ボールペンは大きさ比較のため置いてますが、実際にモリニージョの柄の先っぽがボールペンになっているお土産物もあるんですよ。房付きはペンダント、右端の極小ふたつはピアスです。(もちろん泡立てには使ってません。)モリニージョのフォルムが好きで、こうしたアクセサリーを見つけるとついつい財布の紐が緩んでしまいます。このアクセサリーを付けていたら、友人からは『モリニー女(じょ)』なんて呼ばれちゃいました。

綺麗に彩色したモリニージョを写真のように天井からぶら下げると素敵なインテリアのオブジェにもなりますね!

モリニージョ愛が泡のように溢れ出て一回では終わりそうもありません。次回も引き続きモリニージョについてお話します。飽きずにお付き合いいただけますように。

このコラムは私が書きました。

ガイド名:Hiroko Sato
出身地:東京

オアハカ在住14年目。世界遺産検定1級。大学時代からメキシコについて専攻し、卒業後旅行会社に勤務。移住後はオアハカを中心にメキシコ全般のガイド、テレビ番組や出張のコーディネーターなど多く経験あり。