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[市民公開講座]
明治栄養フォーラム vol.2

高齢者の心身の能力は時代とともに向上し、社会のニーズも変
わってきています。社会と関わり、人々とつながって前向きに
生きることが、老化予防には重要なのです。

【座長】
鈴木隆雄先生

独立行政法人 国立長寿医療研究センター
研究所長

武田英二先生
徳島大学大学院
ヘルスバイオサイエンス研究部 特命教授

主催:株式会社 明治

後援:公益社団法人 日本栄養士会
朝日新聞社広告局、
メディカル朝日広告チーム

[基調講演]
超高齢社会の実像と
健康長寿を目指して

[講演]
食べることは生きること

[講演]
90歳になっても動ける
足腰づくり
〜ロコモ予防の具体策〜

[講演]
高齢社会先進地域における
病院起点の地域健康づくり

[パネルディスカッション]
食べる、動く、集う、
で健康長寿を目指す

賞味期限・包装

その他の項目

[基調講演]
超高齢社会の実像と健康長寿を目指して

鈴木 隆雄先生

独立行政法人
国立長寿医療研究センター
研究所長

鈴木 隆雄先生

これからの高齢者は
社会と関わる意欲が大事

高齢社会となり、65歳以上の人が総人口に占める割合は1/4になりました。しかし、同じ高齢者でも、前期高齢者(65~74歳)は健康度・活力・就労意欲ともに高く、後期高齢者(75歳以上)は心身機能が低下しがちと、大きく異なるので、分けて考えることが必要です。

現在、前期と後期の人数はほぼ1対1ですが、2030 年、2055 年には後期高齢者が前期の2倍になると予測されています。そのため、後期になってもいかに心身の衰えを防いで元気に生きるかが、大きな課題となっています。

高齢者の心身の能力は時代とともに向上し、社会のニーズも変わってきています。そこで、2014年に「新活動能力指標JST版」を作成しました。町内会などの地域参加や社会活動をしているか、携帯電話やATMなどの利用はできるか、外国のニュースなどに関心はあるか、病人や孫の世話、詐欺被害対策などはできるか、などを問うものです。社会と関わり、人々とつながって前向きに生きることが、老化予防には重要なのです。

頭を使う運動で認知症を予防

後期高齢者の健康を保つうえで、もう1つ重要なのは認知症予防と運動です。国内の大規模な研究から、65歳以上の15%、約460万人が認知症であり、400万人がその予備軍とみられています。認知症と運動量の関係をみると、1日の歩数が1万歩以上の人々は、歩数が6000歩未満の人々に比べて脳の萎縮度が30%以上少ない、ということが報告されています。また、認知症予備軍でも、頭を使いながら有酸素運動をすると、発症を遅らせることができることもわかってきました。

そこで、認知症予防のための頭を使って行う運動「コグニサイズ」を考案し、勧めています。ステップ運動などですが、これを行うと頭の働きが活性化し、脳の萎縮も抑えられることがわかり、全国に広がってきています。認知症予備軍の症状進行を2年遅らせられれば33万人の発症を減らすことができ、9700億円の医療費・介護費の節約にもなります。

筋肉強化に大切なロイシンとビタミンD

体の健康も大事です。加齢とともに筋肉が弱くなった状態をサルコペニアといいますが、女性は特に筋肉が衰えやすく、日常生活にも支障が出てきます。予防には運動と栄養が重要です。

栄養面では、特にたんぱく質が筋肉作りに重要で、特にその構成成分であるアミノ酸の中の一つ、ロイシンが筋肉作りに大事なことがわかってきました。75歳以上のサルコペニアの女性300名を対象にした試験で、アミノ酸(ロイシンを多く配合)を摂って運動した群は、運動のみの群、アミノ酸摂取だけの群、なにもしない群に比べ、足の筋肉量や筋力、歩行速度が最もよい成績でした。また、最近は、ビタミンD が骨の強化だけでなく筋肉の強化にも役立ち、転倒予防にも重要なことが知られています。認知症予防にも関与するといわれており、高齢期に特に大事なビタミンといえるでしょう。

社会や人々とつながり、運動し、栄養をとることで、健康長寿を保ちましょう。

[講演]
食べることは生きること

迫 和子先生

公益社団法人 日本栄養士会
専務理事

迫 和子先生

低栄養になると歩くのも大変に

皆さんは一生の間に何回食事を摂ると思いますか? 365日×3食で1年におよそ1100食、10年では……。今まで食べたもので皆さんの体は作られており、これから食べるものが今後の健康に影響します。高齢になるほど、1食1食が大事です。

高齢者の栄養の問題で大きいのは低栄養です。体に必要な栄養が不足すると、日常生活動作も低下し、脱水症や免疫力低下、気力低下、寝たきりの人では褥じょく瘡そう(床ずれ)も生じやすくなります。

低栄養は早期発見、早期改善が大事です。第一の兆候は食欲の低下です。なにを食べても味けない、おいしくない……。そんな日が続くと食事量が減り、体重が減って低栄養になり、筋力、体力、抵抗力が落ちる。すると転倒や骨折、感染症などを起こしやすくなり、さらに体が弱ってしまいます。私は2年ほど前にある病気で体重が10㎏減り、結果的に低栄養状態となったことがありますが、箸が持てない、噛めない、髪をとかせない、ボタンをはめられない、5m歩くこともやっと……という状態でした。しかし、食事と運動で回復しました。

加齢による低栄養も、栄養と運動で改善できます。

噛む力や味覚の低下、
ストレスなども要注意

食欲低下や低栄養を招く要因の一つに口の中の問題があります。歯がなくなる、義歯が合わない、唾液が減る、むせるなど。在宅療養中の高齢者を対象としたある調査では、栄養状態が良好な人は27.3%のみでしたが、普通のかたさの食事が摂れる人の栄養状態は比較的良好でした。また、味覚を感じる舌の味み 蕾らいは加齢によって年に1%ずつ壊れていくといわれ、味覚低下から食欲が落ちることもあります。ほかに、消化機能の低下、運動不足、気力減退、ストレスなど多くの問題があります。

あるケースをご紹介します。Aさんは夏風邪をひいて以来3~4㎏やせてしまい、楽しみだった旅行も行けませんでした。家のリフォームなども重なり、食事量減少→低栄養→体力・免疫力低下→風邪が治らず食欲がない、という悪循環に陥ったのです。改善策として3食を必ず食べる、牛乳かヨーグルトを毎日とる、栄養教室に休まず参加する、などの計画を本人が立てて実行しました。食事だけでなく、教室に通って仲間と集うことも心身を上向きにさせます。やがて体重も増え、筋肉もつき、「風が吹いてもふらつかなくなった」そうです。

そこで、認知症予防のための頭を使って行う運動「コグニサイズ」を考案し、勧めています。ステップ運動などですが、これを行うと頭の働きが活性化し、脳の萎縮も抑えられることがわかり、全国に広がってきています。認知症予備軍の症状進行を2年遅らせられれば33万人の発症を減らすことができ、9700億円の医療費・介護費の節約にもなります。

肉や魚をしっかり食べ、
体重を計る習慣を

低栄養予防には、毎日3食を必ず摂ること、毎食「主食(穀物)、主菜(肉や魚、卵、大豆製品などたんぱく質源)、副菜(野菜類)」を揃えることがカギ。特にたんぱく質が重要です。「健康のために野菜を努めて摂る」という人が多いのですが、高齢になったら主菜と主食でたんぱく質とエネルギーを確保することが第一です。70代で小食でやせ型なのに、コレステロールを気にして卵は一切摂らないという人もいますが、栄養価の高い卵は毎日1個は食べたいものです。食欲がないときや具合が悪いときは、好きな物で食欲の回復をはかりましょう。栄養調整食品で栄養を補給するのも一法です。

栄養面では、特にたんぱく質が筋肉作りに重要で、特にその構成成分であるアミノ酸の中の一つ、ロイシンが筋肉作りに大事なことがわかってきました。75歳以上のサルコペニアの女性300名を対象にした試験で、アミノ酸(ロイシンを多く配合)を摂って運動した群は、運動のみの群、アミノ酸摂取だけの群、なにもしない群に比べ、足の筋肉量や筋力、歩行速度が最もよい成績でした。また、最近は、ビタミンD が骨の強化だけでなく筋肉の強化にも役立ち、転倒予防にも重要なことが知られています。認知症予防にも関与するといわれており、高齢期に特に大事なビタミンといえるでしょう。

ぜひお願いしたいのは、「体重を週に1回は計る」習慣をつけること。体重が減ってきたらすぐに原因と対策を考えましょう。気になるときは医師や栄養士に相談を。「やせている人がやせてきたら、命にかかわる大事件」ということも覚えておいてください。

[講演]
90歳になっても動ける足腰づくり

~ロコモ予防の具体策~

石橋 英明先生

公益社団法人 日本栄養士会
 専務理事

石橋 英明先生

歩くのが遅くなったらロコモに注意

日本人は長生きになり、平均余命から推計すると、中高年の人々は90歳前後まで生きる見込みが大きいようです。ならば、それまで元気に生きたいものです。

介護保険の「要支援・要介護」になる原因の第1位は骨・関節疾患で25%、2位は脳卒中で18.5%、3位は認知症で15.8%です(厚生労働省「国民生活基礎調査」2013年)。骨・関節疾患は女性に多く、男性はメタボなどから脳卒中を起こす人が多くいます。

ロコモ(ロコモティブシンドローム)とは、体を支える骨、関節軟骨、椎間板、神経、筋肉などの運動器が障害されて、歩く、立つ、座るなどの移動機能が低下してしまう状態をいい、進行すると要介護のリスクが高くなります。2007年に日本整形外科学会がこの名称を考え、予防を提唱しています。運動器は加齢に加え、運動量の不足、不適切な栄養摂取などで弱くなります。弱ると骨粗鬆症、変形性関節症、脊せき柱ちゅう管かん狭きょう窄さく症しょう、筋肉減少などを招き、転倒や骨折を生じやすく、ひどくなると動けなくなります。しかし、適度な運動をし、適切な栄養を摂ると、高齢になっても進行にブレーキをかけられます。メタボや認知症の予防にもなります。

7つのロコチェック

出典

ロコモチャレンジ!ホームページ

https://www.locomo-joa.jp

(公益社団法人 日本整形外科学会/ロコモチャレンジ!推進協議会)

ロコモの兆候の一つは、歩行が遅くなることです。筋力が弱ると、片足ずつ前に出すときのバランス力が低下します。友人と歩くとき、遅れぎみになっていませんか。右のロコチェックで1つでも不安がある人も要注意です。また、「ロコモチャレンジ!」のホームページを見て立ち上がりテストも試してみてください。食卓のいすから片足で立てない人も心配です。

筋肉を強くすると
関節や骨が安定する

筋力が弱くなると足腰の骨や関節にも支 障が生じ、痛みから歩かなくなってなお筋力が弱るという悪循環に陥ります。筋肉は関節や骨を安定させる役割があります。膝関節は大腿四頭筋(だいたいしとうきん、太ももの前面の筋肉)によって伸展し、立ち上がるときもジャンプするときも四頭筋に力が入ることで膝への衝撃をやわらげています。変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減るのが特徴の一つですが、四頭筋が弱ると関節がぐらついて軟骨が余計にすり減り、痛みも増します。逆に筋肉を強化すれば、関節も安定して痛みも減るのです。大腿四頭筋と、膝を曲げるときや股関節の動きに重要なハムストリング(太ももの裏側の筋肉)を鍛えれば、足腰が安定し、転倒や大腿骨骨折も予防できます。

スクワットや片脚立ちで筋肉強化を

ロコモ予防には適度な運動を続けることが大事です。運動習慣がない人は、スクワットをしましょう。膝を曲げるとき、前傾姿勢でよいので腰を後ろに引いて落とし、膝がつま先より前に出ないようにするのが、膝を痛めないコツです。5秒で腰を落とし、5 秒で立ち上がる。ゆっくり行う方が筋肉強化に有効です。大変なら、いすから立つ・座るをゆっくり行う方法でもかまいません。また、片脚立ち(片脚1分)、姿勢よくスタスタ速めに歩くことなども有効です。運動はできれば毎日、最低でも週に2回行いましょう。「ロコモチャレンジ!」ホームページに各種運動が紹介されているので、参考にしてください。

栄養は、カルシウム、たんぱく質、ビタミンD、Kなどが大事で、ビタミンDは日光に当たることでも合成されます。早めの気づきと運動習慣、栄養で、100歳まで自分の足で歩きましょう。

[講演]
高齢社会先進地域における
病院起点の地域健康づくり

早川 富博先生

JA 愛知厚生連 足助病院 院長

早川 富博先生

ICTでは伝わらないものを
コミュニケーションで

足助(あすけ)病院は、愛知県豊田市に合併された足助地区にあります。診療圏の人口は約1万5000人、高齢化率は40%と高く、中山間地域で過疎と医療介護サービス不足という問題を抱えるなかで、地域住民をどう守るかが課題となっています。対策として1990年代の後半から、ICT(情報通信技術)を利用した医療福祉関連の共有カルテの構築、寝たきりの患者さん宅と病院などをテレビ電話や自動血圧計などでつなぐ在宅療養支援システム、電子カルテ化などに取り組んできました。

しかし、どうも気持ちが伝わりきらないのです。模索する中で、人と人との連携に大事なのは相互の信頼関係であり、それを築くには日常的なコミュニケーション、人の和が欠かせないことに気づきました。そこで、2010年から「三河中山間地域で安心して暮らし続けるための健康ネットワーク研究会」を立ち上げました。会員は住民、保健・医療・福祉・介護サービス提供者、行政、各種団体など。病院主導ではなく、みんなで知恵を絞ろうという会です。

誘い合っての乗り合いタクシー
活用も交流の一助に

並行して地域住民アンケートを実施したところ、「半数は高齢者で独居や夫婦世帯が多い、男性は85歳以上でも50%以上が車を運転している、困っていることは猪の被害・バス停が遠い・バス停まで歩けない」等の状況がわかりました。そこから、移動手段対策、配食サービス、ロコモ予防、栄養調査、買い物支援などの対策をみなで考え、とりかかりました。

通院の移動手段は、マイクロバスかタクシーを病院が借りてデマンドで運行しましたが、乗客は常に3~4人で大赤字です。そこで、一地区で人数が集まったら運行し、経費は自己負担としました。人数が多いほど割安になるので、誘い合ってもらい、診察時間や担当医の調整をしたり、帰りの運行時間待ち対策に花の手入れをしてもらったり、ロコモ予防教室に参加してもらったりしています。配食サービスは夕食を500 円程度で、山あいの高齢者を中心に届けています。

病院を集いの場として、
安心して暮らせる社会作りを

認知症やうつも重要な問題です。これに関してもアンケートをとったところ、人と集う、地域と関わる、田畑仕事がある、愚痴を話せる相手がいる、などの人はうつになりにくいことがわかってきました。そこで、病院のホールを集いの場として、ロコモ予防教室、ゲームやモノ作りを楽しむ脳イキイキ教室、栄養教室、みんなでおしゃべりする院長サロン、歌謡教室などを開き、一部は地域への出張もしています。ホールは、午後になると高校生も集ってきます。

また、自然との共生と“贈与の精神”も大事だと考えています。それを形にする試みとして、ホールの一角に「畑と贈与の広場」を作ってみました。住民手作りの農作物を無償で置いてもらい、ほしい人がただで持ち帰るというものです。すると、農業の達人ぞろいの地区だけあって山ほどの農作物が置かれ、持ち帰る人はノートにお礼の言葉を綴り、作り手と受け手の交流の場ともなっています。

10年後に目指すのは「老人社会だが安心して暮らせる」地域です。自然と共生・贈与の精神をベースに、「元気な老人が虚弱な老人を支える、食と運動が健康を作る、エネルギーと食の自給」などを実現させていきたいと考えています。そのために、住民が集い、地域コミュニティの中心となるような、開かれた病院でありたいと考えています。

[パネルディスカッション]
食べる、動く、集う、で健康長寿を目指す

[パネリスト]

鈴木 隆雄先生 武田 英二先生

独立行政法人国立

長寿医療研究センター研究所長

鈴木 隆雄先生

徳島大学大学院

ヘルスバイオサイエンス研究部

特命教授

武田 英二先生

[コーディネーター]

迫 和子先生 石橋 英明先生 早川 富博先生

公益社団法人 日本栄養士会 専務理事

迫 和子先生

伊奈病院 整形外科部長

NPO 法人 高齢者運動器疾患研究所 代表理事

石橋 英明先生

JA 愛知厚生連 足助病院 院長

早川 富博先生

高齢になったら、しっかり食べる

武田:いつまでも元気を保つには食事も運動も大事ですが、石橋先生がロコモの誘因として挙げておられた「不適切な栄養」とは、どういうことを意味するのでしょうか。

石橋:栄養は大事ですが、多すぎても少なすぎても問題があるということです。たとえば、野菜中心の粗食では筋肉が弱くなる心配があります。60代あたりまでは、過食によって脂質異常症、高血圧、心臓病などを招く危険が大きいので、たんぱく質は十分摂りつつ総エネルギーは摂りすぎないよう注意が必要です。しかし70代半ばごろからは、エネルギーがやや多めでもたんぱく質をしっかり摂ることが大事です。

武田:BMI(体格指数)は一般には22が理想とされていますが、昨今は、高齢者では25前後のややふっくらした人のほうが元気で長生きするなどの報告が出ています。それとも通じる話ですね。迫先生はどうお考えですか。

迫:私も、70~75歳より前は肥満に注意し、それ以降は低栄養に注意する必要があると思います。人が1食で食べる分量は500gくらいが限界といわれています。この中でまず主食とたんぱく質源、次に野菜と、量を配分して摂ることが大事です。ところで、具合が悪いとお粥ですませる高齢者は多いのですが、茶碗1杯のごはんと同じエネルギーをお粥で摂るには、丼1杯必要です。お粥が続くと低栄養になりやすいので、注意してください。

武田:心臓病、腎臓病などでたんぱく質や食塩を制限されている人への注意点は?

迫:医師の指示に従うことが第一ですが、加齢によって食事量が減っている場合は、制限に気をとられすぎず、良質のたんぱく質やエネルギーをきちんと摂ることが大事です。

鈴木:生活習慣病予防をいつまで重視するか、という問題でもありますが、70歳を過ぎて病気予防に努めても死亡率はあまり変わらないというデータもあります。私も高齢期は生活習慣病予防から介護予防へシフトしていく時期だと思います。早川先生の地域の高齢者は、栄養や食生活はどのようですか。

早川:高齢者を中心とした約800 人の栄養調査では、全国平均より栄養摂取量は多いほうでした。カルシウム、食塩の摂取量も多めで、手作りの漬物をよく食べます。菓子の摂取量も多い。農作業をする人が多く、よく働き、集つどってお茶を飲むせいかもしれません。ただ、心不全になる人もいますし、齢をとると腎機能も低下するので、減塩は大事だと伝えています。80歳になってもメタボの人もいますから、年齢より一人ひとりの体や生活を見て指導をする必要があると思います。

ビタミンD は転倒予防に重要な役割

鈴木:最近、血中のビタミンD量が少ない人が多く、問題になっています。ビタミンDは魚などから摂取するほか、日光に当たると皮下でも合成されますが、不足すると、子どもでは足の骨などが変形するクル病の要因となります。最近、岡山大学の小児科外来でクル病患者が多いとの報告があり、外遊びの減少や母親の過度の紫外線カットの影響が指摘されています。若い女性は血中ビタミンD が最も少なく、更年期以降への影響が深刻です。高齢者も不足しやすく、65歳以上の女性の約20%は不足しているとの報告もあります。ただ、紫外線による皮膚がんのリスクを心配する人もいますが、石橋先生、どのような日光の浴び方が適当でしょうか。

石橋:ビタミンDが不足するとカルシウムが骨にうまくとり込まれず、骨が弱くなります。また、筋肉にも重要で、不足すると、素早く動くときに使われる筋線維が減り、転倒・骨折をしやすくなります。紫外線と皮膚がんとの関連は、紫外線が非常に強い地域で発がんリスクが若干増えたというデータがある程度です。一般的な外出などで日光を浴びるくらいはまず問題なく、過剰なUV ケアは逆にマイナスです。1日に15分ほど顔や手に日光を浴びる程度でも、ビタミンDは合成されます。

武田:私は以前小児科医をしており、クル病の患者も診察しました。ビタミンD が不足すると、成人では骨軟化症の要因にもなります。最近は、ビタミンD は筋肉を強くして転倒予防に役立つことに加え、アレルギーや大腸がんの予防にもよいという報告もみられます。食品ではサケ、マグロのトロなどの魚に多く含まれています。

認知症もうつも
地域みんなで支え合って

鈴木:認知症は避けて通れず、90歳くらいになると6~7割の人は発症するといわれています。早川先生が実施されたアンケートから見える住民の意識は、どのようなものでしょうか。

早川:過疎地で何事も人頼みにはできないので、住民の意識を把握しておきたいと考えました。調査の結果、認知症に関する知識も予防の知識も十分にあり、相談する先も適切でした。驚いたのは「自分や家族が認知症になったら地域に知らせるか」という問いに対して、半数以上が賛同だったことです。おそらく60 ~70 代の人々は認知症の親の世話をした経験があるからではないかと思います。また、地域の一員としてできるサポートを問うと、男性は徘徊者の捜索、女性は話し相手、が多数でした。地域で支え合う意識はあると感じました。

武田:徳島県の海陽町は日本の中でもダントツに自殺率が低いまちです。その理由の一つに、自分の悩みや弱みを周囲に相談できるということがあるようです。早川先生の住民アンケート報告でも、うつになりにくい条件の一つに「愚痴を話せる相手がいる」ことが挙がっていましたが、大事なポイントだと思います。

鈴木:今回のシンポジウムで、健康長寿のためには、「運動をすること、しっかり栄養を摂ること、そして集うこと」がいかに大事であるかがわかってきました。ぜひこれを明日から実践し、地域の人々にも伝えて、みんなで元気で長生きをしようではありませんか。

[明治栄養フォーラム vol.2]

  • 超高齢社会の実像と健康長寿を目指して 超高齢社会の実像と健康長寿を目指して
  • 食べることは生きること 食べることは生きること
  • 90歳になっても動ける足腰づくり 90歳になっても動ける足腰づくり
  • 高齢社会先進地域における病院起点の地域健康づくり 高齢社会先進地域における病院起点の地域健康づくり
  • パネルディスカッション パネルディスカッション

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