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[市民公開講座]
明治栄養フォーラム vol.1

食べ物が豊かにあふれる時代ですが、食事量が足りずに低栄養になってしまう高齢者が増えています。 また、誤嚥[ごえん]性肺炎も高齢者がかかりやすい病気です。 その要因は、また、予防策や健康を保つポイントはなにか、 専門医の方々にお話しいただきました。

主催:株式会社 明治
後援:朝日新聞社広告局
   メディカル朝日広告チーム
企画・制作:朝日新聞社広告局

[講座]
50歳を過ぎたら
『粗食』はやめなさい!
〜低栄養が老化を早める〜

[講座]
いつまでも元気に
口から食べるために
〜肺炎予防と嚥下[えんげ]のしくみ〜

その他の項目

[講座]50歳を過ぎたら『粗食』はやめなさい!
〜低栄養が老化を早める〜

新開 省二先生

東京都健康長寿医療センター研究所
社会参加と地域保健研究
チームリーダー(研究部長)
医学博士
新開 省二先生

やせた人や低栄養の人は
寿命を縮めやすい

「中高年になったら、野菜中心の粗食が健康によい」と思っている人が少なくないようです。しかし、元気に生きるには多くの栄養素が必要です。高齢になると体の機能が衰え筋肉量も減ってくるので、若いとき以上に毎日の栄養摂取が大事なのです。

平成15~21年の国民健康・栄養調査を見ると、65歳以上の人の約17%はBMI(*1)20 以下の「やせ・やせぎみ」です。また、私たちが低栄養の警戒指標の1つと考えている血中アルブミン値(*2)4.0g / dl以下の割合が増えています。高齢者の2~3割は低栄養の可能性が高いと見られています。国内のある長期研究では、「やせ、やせぎみ」の人、血中アルブミン値4.0g / dl以下の人は死亡率が高いと報告されています。最も死亡率が低いのはやや小太り(BMI25 前後)の人でした(図1)。

グラフ1

私たちが行った65 歳以上対象の長期研究でも、BMI、血中アルブミン値などを見ると、いずれも数値が最も低い群は生存率が一番低かったのです。また、調査中に亡くなった人の栄養状態を見ると、低栄養の人は栄養状態がよい人より脳卒中や心臓病などの心血管病による死亡率が2.5 倍も高く(図2)、他の病気の死亡率も高めでした。

*1)BMI は、体重(㎏)÷(身長(m)× 身長(m))
で算出する、体格を示す指数。一般に22 前後を標準とみなす。

*2)アルブミンは血液中で2 番目に多いたんぱく質で、その数値は栄養状態の指標となる。

グラフ1

栄養状態は体力や筋力、認知機能にも影響

栄養状態は、体力や筋力とも関連しています。歩く速度や握力などの調査では、栄養状態がよい人ほど成績がよいという結果が出ています。また、低栄養は認知症を促進する要因になることも明らかになってきました。

健康長寿の達成には、栄養・体力・社会参加がカギとなります。低栄養を予防するには、「しっかり食べよう」という意識を持つことが大切です。下に挙げた10 の食品をなるべく毎日、特にたんぱく質源は必ず摂りましょう。高齢者は低栄養になると回復が遅れるので、食事が十分に摂れないときは、栄養調整食品を活用して早めに回復をはかるとよいでしょう。

低栄養予防に、毎日10種類の食品を。最低9つ以上を目指そう!低栄養予防に、毎日10種類の食品を。最低9つ以上を目指そう!

長寿を支えるのは豊かな食生活

肥満やメタボリック症候群は動脈硬化の要因となり、エネルギーを摂りすぎないことが予防に有効という研究報告もあります。しかし、65 歳以上の日本人は栄養不良の人のほうが心血管病や認知症になりやすく、死亡率も高いことが、長期研究でわかってきました。100 歳を超えた元気な高齢者は、肉や魚、牛乳、野菜を十分に摂っていると報告されています。日本人は体重1㎏あたり30~35kcal(体重60㎏の人なら1800~2100kcal)を多種類の食品から摂り、世界に誇る長寿を保っています。高齢者の低栄養予防の点で、注目したいところです。

武田 英二先生

武田 英二先生
徳島大学大学院
ヘルスバイオサイエンス
研究部 教授
医学博士

いつまでも元気に 口から食べるために

藤谷 順子先生

国立国際医療研究センター病院
リハビリテーション科医長
医学博士
医学博士
藤谷 順子先生


「食べる」ことは
体の多くの器官・筋肉を使う仕事

肺炎はウイルスや細菌によっておこるもの、と考えていませんか。実は、高齢者では肺炎の多くが、食べ物や唾液が気管に入る「誤嚥[ごえん]」をきっかけに発症することがわかっています。肺炎は日本人の死因の第3位です。

誤嚥[ごえん]性肺炎は、加齢や疾患による咀そ 嚼しゃく・嚥下[えんげ]機能(かむ・飲み込む機能) の低下、それに体力低下や低栄養が加わると発症しやすく、治りも悪くなります。

私たちが自然に行っている「食べる」という行為には、下記に示すように、脳の認知機能から顔面・口の中・のど周辺・消化器官など多くの機能が複合的に用いられています。頭を支える首や体幹の力、呼吸や咳の筋力も必要です。低栄養や脱水症状があると、筋力低下、唾液分泌の低下、
痰が出せないなどの症状が出やすくなります。

「食べる」メカニズムと、
関連する主な身体機能

  • 先行期 食べ物を脳で認識し、口に運ぶ 認知機能、五感、腕、(食欲)
  • 準備期 食べ物を唇でとらえ、口腔内全体で
    餅つきのように砕き、こね、まとめる
    歯、歯茎、唇、舌、ほお、あご
  • 口腔期 食べ物をのどの奥に移動させる 唇、舌、ほお、あご、咽頭
  • 咽頭期 ごっくんと飲み込む 唇、舌、ほお、あご、咽頭、
    喉頭、鼻腔
  • 食道期 食道から胃へ食べ物を送り込む 食道、胃

*頭や体を支える筋力、唾液分泌、呼吸力、咳をする力なども重要!

私たちの体は、のどのところで食べ物の通り道(口から食道へ)と、空気の通り道(鼻や口から気道へ)が交差しているため、嚥下[えんげ]機能が低下すると誤嚥[ごえん]の可能性が高まります。食事のときだけでなく、日中や夜間(睡眠中)も唾液を嚥下[えんげ]しているので、誤嚥[ごえん]が増えると肺炎になる確率も高くなります。

肺炎予防には栄養や体力が大事

誤嚥[ごえん]および誤嚥[ごえん]性肺炎の予防にはいろいろな対策が必要です。まずは前述の食べる行為に必要なさまざまな機能を高める(維持する) ことです。誤嚥[ごえん]をしたときに咳反射(むせ) がちゃんと起きて、誤嚥[ごえん]したものや痰を外に出せることも重要です。それには、機能を落とさないために栄養を摂り、体力をつけることが大事です。また、安定した椅子などの環境を整えることも必要です。

高齢者は若い人より機能が弱まるのはやむを得ません。しかし、口の中を清潔にし、唾液中の細菌を減らしておけば、誤嚥[ごえん]しても肺に入る細菌の量が少なくなり、肺炎を起こす確率を低くできます。

嚥下[えんげ]機能は複合的な機能ですから、肺炎予防も複合的な対策が必要になります。高齢者であっても予防のためにできることはいろいろあります。食べる力を保ち、食べ方にも気をつけて誤嚥[ごえん]も肺炎も防ぎ、いつまでも元気に口から食べる生活を楽しんでいただきたいと思います。

口の手入れも
誤嚥[ごえん]性肺炎に重要

誤嚥[ごえん]性肺炎を予防するには、口腔の衛生管理を心がけることも大切です。歯垢1g中のばい菌数は直腸内の糞便とほぼ同じで、これが誤嚥[ごえん]によって肺に入れば、肺炎の要因になります。歯みがきと舌の表面の掃除は毎日、できれば食後だけでなく食前にも行うのが望ましいでしょう。歯周病や虫歯の治療、入れ歯の調整なども大事です。不具合を放置したままでいると食事内容が偏り、かむ力や嚥下[えんげ]力が低下し、栄養不足・体力低下の要因にもなります。健康なときから手入れの行き届いた清潔な口で食べる力を保つことが、肺炎予防につながります。

舘村 卓先生

舘村 卓先生
大阪大学大学院
歯学研究科
高次脳口腔機能学講座
准教授
歯学博士

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