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バレンタインデーの起源と世界のバレンタイン事情をご紹介

2021/12/24

バレンタインデーの起源と世界のバレンタイン事情をご紹介

2月が近づいてくるとパティスリー、ショコラトリーの店頭にバレンタイン向けのチョコレートが並び、フードライターをしている私はワクワクしてきます。日本のバレンタインデーは、女性から男性にチョコレートを渡す日というイメージが強いかと思います。しかし、海外では男性から女性へ花束を渡したり、恋人同士でプレゼントを贈り合ったりとさまざまな風習があります。本記事ではバレンタインデーの起源、日本と海外の風習の違いを紹介。バレンタインデーに贈るお菓子に込められた意味、おすすめのチョコレートも解説します。

バレンタインデーの起源とは

2月14日は、もともとは聖人の殉教日を悼む日でした。ここでは、諸説あるバレンタインデーの起源となった話の一部を紹介します。

かつてのバレンタインデーは聖人の死を悼む日だった

キリスト教には「聖人暦」というものがあり、365日すべての日に聖人の名前がつけられています。2月14日はかつて「聖ヴァレンティノ」の日でした(現在は聖人暦から除外されています)。聖人ヴァレンティノの話は同時期にいくつかあり、伝えられている内容には諸説あります。ローマ帝国最盛期の175年ごろイタリアのテルニという町に、のちに司教となるヴァレンティノ(ヴァレンタインは英語読み)が生まれました。
当時の皇帝クラウディウス2世は強兵策を講じており、兵士の結婚を禁止していましたが、ヴァレンティノは若い恋人たちの願いを聞いて多くのカップルを結婚させました。そのことが皇帝の不興を買い、処刑されます。その処刑の日がヴァレンティノの殉教日・2月14日です。処刑されたのは269年とも、273年とも言われ正確な殉教年はわかっていません。

愛の告白をする日になったのは20世紀になってから

ヴァレンティノが生きた当時は異教とされていたキリスト教ですが、313年にはローマでも認められます。そして、2月14日にはヴァレンティノの死を悼む行事が行われるようになりました。14世紀頃になると、愛に尽くしたヴァレンティノにちなみ、愛を告白する風習が生まれたとされます。1644年にはローマ教会で聖人の称号が与えられ、テルニの街の守護聖人になりました。その後、彼にまつわる逸話や、親子が愛の教訓と感謝を記したノートを交換する習慣などが混じり合い、20世紀になると男女が愛を告白する日になったようです。

日本で親しまれるバレンタインデー

日本人におなじみのバレンタインデーはどのようにして始まり、今に至っているのでしょうか。ここでは、日本のバレンタインデーの成り立ちと変遷についてお伝えします。諸説ありますので、ここではそのひとつを紹介します。

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日本のバレンタイン発祥は神戸

バレンタインデーにチョコレートを贈る習慣は、兵庫県の洋菓子メーカー「モロゾフ」の創業者、葛野友太郎氏が始めたといいます。葛野氏はイタリア・テルニの司祭だったヴァレンティノの話からヒントを得て、日本で贈り物をファッション化し、新しい生活習慣を育てたいと思っていました。そこで昭和11年(1936年)、当時の英字新聞に「バレンタインデーにチョコレートを贈ろう」と、ボックス入りのチョコレートの広告を載せました。

この提案は戦争で一度は中断するものの、戦後は他の菓子メーカーの協力も得て、バレンタインデーにチョコレートを贈る文化を根づかせようとする活動は続きました。そうした働きかけにより、現代の日本ではすっかり「バレンタインデーにはチョコレート」という習慣が定着しました。

バレンタインが盛んになった理由とは

1950年代に赤いハート型の箱入りチョコレートを販売するなど、モロゾフのバレンタイン戦略は業界から一目を置かれます。70年代になると、モロゾフに刺激された洋菓子メーカーや百貨店がバレンタインチョコレートの販売に力を入れるようになりました。洋菓子業界が、バレンタインデーは若い女性が男性にチョコレートを贈る日、1ヶ月後の3月14日は男性が女性に白いお菓子(マシュマロなど)でお返しする日と決めて宣伝すると、多くの若者に受け入れられるようになりました。

ところ変われば...海外のバレンタインデー物語

日本のバレンタインデーは、女性から男性にチョコレートを贈るというのが一般的ですが、海外のバレンタインデーはさまざま。各国のバレンタインデー事情を現地の友人たちに聞いてみました。

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【フランス】恋人との甘い夜を過ごす日

日本に住む、フランス人男性にバレンタインの過ごし方を聞いてみると、「日本のようにバレンタイン=チョコレートを贈る日ではないけれど、バラの花束とディナーは2月14日の恋人たちの定番だと思います」とのこと。フランスでは、2月14日に花屋さんが男性でいっぱいになると聞きましたが、さすが愛の国ですね。

【韓国】女性から男性へチョコレートやプレゼントを贈る

日本にも住んでいたことがあり、韓国に行くと地元のおいしいお店に連れて行ってくれる友人は、「韓国のバレンタインは日本と同じで女性から男性にチョコレートを贈ります」と教えてくれました。「最近は日本のように欧米の有名店のものや高級感のあるものを贈る人もいますが、よく見るのは、大衆的なお菓子をたくさん詰めて派手にラッピングしたカゴですね」。2月14日には、大きなカゴを抱えた男性の姿をたくさん見ると言います。

【アメリカ】男性から女性へ花やプレゼントを贈る

「バレンタインデーが近づくと、お店がバレンタインモードになる」と話してくれたのは結婚してアメリカでの生活も10年になる日本人女性。彼女の夫はときどき忘れてしまうそうですが、一般的には男性が恋人や妻に花束やスイーツ、ジュエリーなどをカードとともに贈るそうです。ハート型のバルーンも定番だとか。子供たちも学校でカードや小さなプレゼント(小袋のお菓子や鉛筆)を贈り合うそうです。この時期はsnickersやskittleといったおなじみのチョコレートキャンディーもピンクのバレンタイン仕様のパッケージになります。

【イタリア】アモーレの国では男性から女性にプレゼント

聖ヴァレンティノの母国・イタリアではどうでしょうか。ローマに20年近く住み、食品輸入業をしている女性に聞きました。「男女のカップルの場合は、やはり男性が女性にチョコレートやプレゼントを贈り、バレンタインデーを祝います」とこちらも日本とは反対。チョコレート店では赤いボックスなどが特別に用意されると言います。

【スペイン】バレンタインはまだ舶来のイベントというイメージ。少しずつ浸透中

長年、一緒に仕事をしてきたスペインの雑誌編集者の男性は、「スペインはまだまだバレンタインデーを祝うのは一般的じゃないかな。ハロウィーンと同じで"外国のお祭り"というかんじでとらえられていると思う。まあ、この10年くらいでバレンタインデーを祝うカップルも増えているには増えているよ。僕は一時的な流行と思っていたけど、スペインの南部などでは定着してきているみたい」と言っています。自分は特段、妻に贈りものはしていないそう。ちなみに南スペインは陽気で情熱的、バルセロナなど北スペインはおとなしめというイメージがあります。
バルセロナを中心としたカタルーニャ地方には、バレンタインデーに近いイベントとして、「本の日」というのがあります。カタルーニャの聖人サン・ジョルディを祝う4月23日で、別名"愛の日"です。昔は男性が家族や恋人など周囲の女性全員にバラを贈っていましたが、今は大事な人と本を贈り合うことが一般的だと言います。

バレンタインデーの知識を深め、チョコレートを贈ろう

バレンタインデーは世界中の人にとって特別な一日。バレンタインデーの起源や海外の風習を知ることで、よりバレンタインデーを楽しめるでしょう。大切な人に伝えたい気持ちとともに、また日頃お世話になっている人に感謝のしるしとして、お気に入りのチョコレートを見つけて贈る、そんな1日にしてくださいね。

このコラムは私が書きました。

ガイド名:松野玲子

フードライター歴25年。国内外の製菓・料理専門誌の執筆を仕事にするかたわら、プライベートでは国内外の食べ歩きや、パンやお菓子を焼くことを楽しむ食いしん坊。ショコラティエとフランス・ベルギーのチョコレート店を巡った仕事は一生の思い出。