体内時計と朝食の関係とは?
朝食をしっかりと摂って体内時計をリセット
ヒトを含めた地球上の生物は体内時計を有しており、これが1日の睡眠の周期などの活動のリズムを生み出していることは広く知られています。さらに最近では、朝食が体内時計の調節に重要であることが明らかになりました。
近年、健康寿命の延伸につなげる栄養学の新たな切り口として、「時間栄養学」が注目されています。時間栄養学とは、栄養学を時間生物学の観点から研究する学問です。時間生物学は生物の周期的現象を研究領域としています。季節や月などを単位とする生物のリズムもありますが、時間栄養学では主に、覚醒睡眠などで広く知られている日周リズムを研究対象としています。全ての生物は時計遺伝子などで昼夜を予測して生活しています。
脳には視神経が交差している視交叉上核と呼ばれる神経核があり、その中に中枢の時計遺伝子があることが広く知られています。さらに、脳内の他の部位や、末梢の臓器である肺、肝臓、腎臓、心臓、筋肉などにも時計遺伝子が発現していることがわかっています。
これらの時計遺伝子は自律的に約25時間周期の概日リズムを作って、細胞の多くの活動を変動させています。生物は地球上の昼夜に応じて生活をするために、体内時計を日々微調整する必要があります。前述したように視交叉上核には体内時計の中心があります。朝の光を刺激として受容すると、網膜を通して光刺激が視交叉上核に達し、体内時計にリセット作用(24時間の日周リズムに、時計の針を合わせる作用)を及ぼします。中枢時計が調節されると、その作用は末梢組織にも及びます。
また、末梢組織の体内時計は、中枢時計を介した調節だけでなく、朝食などの摂食活動でも調節されることが近年明らかになっています。すなわち、規則正しいリズムで繰り返し食事をとると、それが刺激となって、時計を調節することができます。また、食事の中でも朝食が体内時計の調節にもっとも重要であることがわかっています。すなわち、朝食をしっかりと摂取することが体内時計のリセットに重要です。
出典 香川ら, 時間栄養学, 女子栄養大学出版部