ミルクプロテインのチカラ!

たんぱく質で健康な生活

たんぱく質の摂取量と筋肉増加の相関関係を
メタアナリシスで初めて解明!

監修者:医薬基盤・健康・栄養研究所
身体活動研究部 部長博士(体育科学)

宮地 元彦(みやち もとひこ)部長

鹿屋体育大学スポーツ課程卒業後、川崎医療福祉大学助教授、米国コロラド大学客員研究員を経て、2003年より国立健康・栄養研究所(2015より医薬基盤・健康・栄養研究所)に勤務。日本学術会議の会員を勤め、研究テーマは「健康づくりのための身体活動」。厚生労働省の『エクササイズガイド』や『健康日本21(第2次)』の策定などに関わるほか、テレビや雑誌、各地の講演会など多方面で活躍。任天堂『Wii Fit Plus』の開発にもアドバイザーとして携わる。

105の文献、5402人を対象に大規模メタアナリシスを実施

たんぱく質は筋肉を作る材料となる栄養素ですが、ではどれだけの量を摂れば、どのくらい筋肉が増えるでしょうか。
医薬基盤・健康・栄養研究所国立健康・栄養研究所身体活動研究部の宮地元彦部長らは株式会社 明治との共同研究で、総たんぱく質摂取量と筋肉増加との相関関係を、メタアナリシスを用いて明らかにしました。
メタアナリシスとは、過去に行われた複数の研究結果を統合し、統計的手法を用いて総合的に再解析する方法のこと。医学や健康などの研究には、試験管での研究や動物を使った研究、症例報告、コホート研究、無作為臨床試験などがありますが、その中で最もエビデンス(科学的根拠)レベルが高い研究手法と位置付けられています。
宮地部長らがメタアナリシスの対象にしたのは、たんぱく質摂取量と筋肉の増減に関する信頼性の高い105の文献。
被験者は合計で5420人に上ります。研究結果は2020年11月4日、栄養学分野の世界的トップジャーナルの一つである「Nutrition Reviews」ウェブ版に掲載されました*。

*Dose–response relationship between protein intake and muscle mass increase: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials(たんぱく質摂取量と筋肉量増加との用量反応関係:無作為化対照試験のシステマティックレビューおよびメタアナリシス)
https://academic.oup.com/nutritionreviews/advance-article/doi/10.1093/nutrit/nuaa104/5936522

誰でも今の食生活にたんぱく質をプラスするだけで筋肉が増える

今回の研究で判明したことは、大きく4つあります。1つめは、「たんぱく質の総摂取量が増えると筋肉量の増加につながる」という事実。宮地部長は次のように話します。
「日頃から、たんぱく質を多く摂っている人でも、少ししか摂っていない人でも、たんぱく質の摂取量を増やせば筋肉量が増えていくこと、体重減少などに伴う筋肉量の減少を抑制できることが明らかになりました。これは年齢や性別、運動習慣の有無に関わらず言えることです」。
たんぱく質摂取量と筋肉量の増加については、これまでにも筋トレなどの運動と組み合わせた研究報告がありましたが、日々のたんぱく質摂取量と筋肉量増加との量反応関係を大規模なメタアナリシスで定量的に解明したのは、これが世界で初めてです。
2つめは、「1日に体重1kg当たり0.1gという少量のたんぱく質を現在の食事にプラスするだけでも、筋肉量の増加につながる」という結果です。下のグラフは、1日の総たんぱく質摂取量と筋肉量増加の相関関係を示したものですが、たんぱく質摂取量が増えるのに比例して、筋肉量が右肩上がりで増加しているのがわかります。
体重1kg当たり0.1gというのは、仮に体重50kgの女性なら5gに相当します。たとえば牛乳コップ1杯(200ml)には6.8g*、ゆで卵1個(60g)には7.7gのたんぱく質が含まれていますから、誰でも無理なく補える量と言えるでしょう。もちろん、もっと多く摂れば、そのぶん筋肉の増加量を増すことも期待できます。
3つめは、「1日の総たんぱく質摂取量が少ない人ほど、筋肉量の増加度合いが大きい」ということ。研究結果では、1日の総たんぱく質摂取量が体重1kg当たり1.3g(体重50kgの人なら65g)未満の人が、体重1kg当たり0.1gのたんぱく質(体重50kgの人なら5g)を毎日プラスすると、2~3カ月で筋肉量が平均390g増加することがわかりました。
「一方、総たんぱく質摂取量がそれより多い人では、筋肉増加量は平均で120gでした。つまり、1日の総摂取量が少ない人ほど筋肉増加の“伸びしろ"が大きいというわけです」。
そして4つめは、「たんぱく質の摂取量増加と筋トレを組み合わせると、さらに筋肉増量効果がアップする」ということ。「筋トレをしていない人でもたんぱく質の摂取量を増やせば筋肉量が増加しますが、筋トレも組み合わせれば、もっと効率よく筋肉を増やすことが可能になるということです」。
*たんぱく質量に関しては「日本食品標準成分表2015年版(七訂)より算出

出典 Dose‒response relationship between protein intake and muscle mass increase:a systematicreview and meta-analysis of randomized controlled trials(たんぱく質摂取量と筋肉量増加との用量反応関係:無作為化対照試験のシステマティックレビューおよびメタアナリシス)
https://academic.oup.com/nutritionreviews/advancearticle/doi/10.1093/nutrit/nuaa104/5936522

“たんぱく質プラス”の習慣が、筋肉不足解決の切り札に!

今回の研究では、今の食事にたんぱく質を少量プラスするだけで、筋肉量の確実な増加を期待できることが判明しました。これは筋肉不足の解決策として、まさに朗報。宮地部長は次のようにアドバイスします。
「筋肉不足は、若い女性や高齢者で特に深刻です。放置していると将来、サルコペニアやフレイルにつながり、介護が必要な状態にもなりかねません。現在、多くの人は『日本人の食事摂取基準(2020年版)』のたんぱく質推奨量を満たしていますが、目標量には10g程度足りない状況です。この不足分を補うつもりで、たんぱく質の摂取をもう少し増やすように心がけましょう。

日本人はたんぱく質摂取が足りないかも!?
「かくれ筋肉不足」リスクチェック

普段のたんぱく質摂取量が少ない人、あなたの筋肉は足りていますか?チャート図で、毎日の食事や身体活動、運動習慣、ふくらはぎの太さ、椅子からの片足立ち動作から、筋肉不足のリスクをチェックしてみましょう。黄色や赤色に該当した方はたんぱく質の摂取量が不十分で、筋肉が衰えている可能性が高い方です。たんぱく質を普段の食事に、小腹が空いたときに、間食として、1日10gを目安に多く摂取してみましょう。1日に摂るたんぱく質の量を+10g、それをぜひ習慣化してください。