赤ちゃんの健康は、毎日のうんちを観察すればわかるかもしれません。
色、硬さ、頻度、におい、それぞれに大切なメッセージが含まれています。
しかし、「うんちをどう見たらよいかわからない」「何が正常なの?」と
悩む保護者も少なくないでしょう。
そこで今回は、KIDSNAアンバサダーへアンケートを実施し、
子どものうんちに対するお悩みを募集。
それに対し、小児科医の工藤先生と専門知識をもとに、赤ちゃんのうんちを徹底解析!
授乳方法や離乳食の影響、年齢による変化まで、知っておきたい情報が満載です。
このマニュアルを読めば、あなたも赤ちゃんのうんち博士に!
赤ちゃんの健康的な毎日のために、うんちを知ることから始めてみませんか。
工藤紀子
小児科医・医学博士・保育士/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/こころ新橋保育園嘱託医/東京インターナショナルスクール中目黒キンダーガーデン嘱託医
二児の母でもあり、育児や子育てに関するアドバイスも行っている。
山本さん
大隅さん
うんちは、健康のバロメーターです。調子がいいときは快便だし、風邪を引いてるときは便がゆるくなったり、水分が足りていないとコロコロの硬いうんちになったりしますよね。
保護者は、子どもの便を観察することによって、子どもの健康状態をチェックすることができます。赤ちゃんがなんとなく機嫌が悪いとき、考えてみたら3日もうんちが出ていないとか、うんちが出たらスッキリして機嫌もよくなったり、そんな経験をしたことがある保護者も多いのではないでしょうか。
普段の子どものうんちの状態を知っておけば、体調の異変に早く気が付くことができるかもしれませんね。子どもの健康状態を知るためには、日ごろから子どものうんちを観察しておくことが大切です。
今回、KIDSNAアンバサダー143名にアンケートを実施。
「うんちに関して最も気になる点は何ですか?」と質問をしたところ一番多かったのは、
うんちが硬い、柔らかいなど硬さに関すること。
次いで、頻度、色の変化が気になっているという結果となりました。
うちの子は、なかなか出ないこともあれば、ゆるくてオムツから漏れちゃう日もあって、日によって全然違うのが悩みです。病院に行って相談したこともありますが、相談したからといってすぐに解決するわけではないし、どう対処したらよいのかわからないことがあります。
うちの子はうんちの回数が少なく、2~3日に1回くらいの頻度なので、気になるときは綿棒浣腸をしています。ただ、綿棒浣腸もあまり効かず、次の日とかに数日分のうんちがまとまって出るので、オムツから漏れてしまったりします。
まずは健康で正常なうんちがどのようなものかお話しますね。赤ちゃんのうんちの色、硬さ、回数が主な判断材料です。
まず、色についてですが、母子手帳にもあるように黄色から茶褐色(4番から7番)が正常です。うんちに茶色っぽい色がついているのは、「胆のう」から出る色素によるものです。食べたものは、食道→胃→十二指腸→小腸→大腸と進み、最終的にうんちとなって出ますが、十二指腸に「胆のう」から色素が放出されます。
白いうんちが病気の場合があるというのはそのためで、胆のうから色素が放出できない状態にある、つまりその放出されるための管が詰まっていたり出にくくなっていたりする病気の可能性があるからです。他に色で気をつけたほうがいいのは、血が全体に混ざったような赤い色のうんちで、食中毒や腸重積(ちょうじゅうせきしょう)の可能性があります。赤色と言っても、全体的には黄色や茶色で、その表面に粘液混じりの赤いうんちが少しついている程度のものは大きな心配がないことがほとんどです。心配な時はうんちを持って小児科を受診しましょう。
その他にオレンジ色や緑色のうんちが出たと心配して小児科を受診される保護者が多いですが、いつもと違う色のうんちが出た場合、まずは食べたものを思い出してみましょう。離乳食開始後のうんちは特に、食べ物の色に影響されます。色に関しては、血便や白いうんち以外はそこまで気にしなくても大丈夫かもしれません。
うんちの形に関しては、バナナの形がよいなど聞いたことありますが、それは合ってますか?
そうですね。バナナの形というより、熟したバナナくらいの硬さが、いいうんちの指標のひとつです。私は、歯磨き粉とか、ハンバーグを焼く前のタネくらいの硬さがよいと説明することがありますが、オムツの上から赤ちゃんのうんちを軽く触ってみて、つぶれるくらいの硬さが目安です。
回数はどのくらいが正常なのでしょうか?
うんちの回数は月齢や体質にもよるので一概には言えませんが、1週間に2回より少ないことが続くと、便秘だと考えます。逆にうんちがゆるくて回数が多い場合は、他にも症状があれば小児科を受診したほうがよいですが、元気で食欲もあるのであれば、あまり心配いりません。
そうなんですね! あと、臭いについても気になります。いつもと違って変な臭いがするときは、腸内環境が悪いのかなと心配になります。
臭いも、食べたものによって変化が大きいです。たとえばロタウイルスに感染しているときのうんちの臭いは酸っぱいにおいがするなどありますが、臭いだけで判断するのは難しいです。うんちの臭いの他にも水分が取れない、機嫌が悪いなどの症状があれば、受診したほうがよいですね。
実は赤ちゃんのうんちは、母乳かミルクかで違いがありますが、おふたりはどちらで育てていますか?
うちはもう卒乳していますが、混合で育てました。
私も混合です。上の子の出産後、帝王切開だったのでおなかの傷も痛いし、寝不足だし、おっぱいはガチガチに張ってるけどなかなか出ないし、母乳が出ない自分をダメな母親だと思ってしまったんです。でも、ミルクを使ってみたらすごく気がラクになって、自分が疲れているときは使ってもいいんだと、今はうまく頼りながら子育てをしています。
いいですね! 私は小児科医の立場として、基本的には母乳を推奨していますが、ミルクもうまく活用したいですよね。私自身も、産後はミルクを使用した時もありましたし、選択肢のひとつとして持っておくと安心ですよね。
うんちの違いでいうと、完全母乳のほうが、うんちが柔らかくて回数が多い傾向があります。ある研究では、生後一カ月のときに一日に3回以上排便をする子は、母乳栄養の子の場合が76.4%、混合栄養の子では36.4%というデータがあります。
ただ、生後4カ月以上になると、母乳栄養の子で一日3回以上排便をする子は22.8%と次第に減っていき、生後7カ月になると、母乳の子よりもミルクの子のほうがうんちの回数が多くなるというデータもあります。これは、うんちの回数が多いからよいということではなく、成分の違いがあるということです。
離乳食開始前の赤ちゃんの場合、便秘対策はどのようなことができますか? 綿棒浣腸もあまり効果がなかったのですが……。
排便は、タイミングが非常に大切です。赤ちゃんがいきんでいるタイミングに合わせたり、ミルクや母乳を飲んで、げっぷをして少し落ち着いたときに、綿棒浣腸をやるのがよいですよ。大人と同じで食べた後は排便したくなる反射があるので。
また、赤ちゃんは腹筋が弱いので、うんちがうまく出せない子もいます。うまくできるようになるまでサポートしてあげましょう。たとえば、いきんでいるときに足を伸ばしている子がいますが、うんちが出しやすい体制は足を曲げた体勢です。足を持ち上げ、カエルのような足にしてあげて、おなかを少し圧迫すると、赤ちゃんはいきみ方を覚えていきますよ。
離乳食開始前の赤ちゃんは、食べ物で便秘対策をすることはできないので、運動をさせるしかないんですよね。ららら雑巾体操や、のの字マッサージで身体を動かしてあげましょう。
離乳食が始まったタイミングで便秘になりやすいとのお話でしたが、改善するための方法はありますか?
私がおすすめしているのは、主食を雑穀ごはんにすることです。雑穀には食物繊維やビタミン類、鉄分などが豊富です。便秘対策は、なにか一度の対策で改善するものではなく、継続的に行うことが大事です。主食は毎日食べるものなので、主食に栄養素を足すことで、よい状態を長く続けることができますよ。
あとは便秘には「P」がつく食べ物がよいとも言われています。桃(peach)、プルーン(prune)、すもも(apricot)、梨(pear)、リンゴ(apple)、豆類(peas)などがあるので、覚えておくとよいですよ。
ちなみに、子どもが便秘になりやすい時期は、3回あると言われています。まずは、離乳食開始の時期。次にトイトレ開始のとき。3つめに就学時。幼稚園や保育園は好きな時にトイレに行けるけど、小学校に入るとなかなか行きにくいので。まずは最初にやってくる離乳食開始の時期を、保護者が注意して見てあげたいですね。
うんちは健康のバロメーター。今日お伝えした授乳方法や離乳食の有無、月齢ごとのポイントを考慮し、忘れずに観察するようにしましょう。
赤ちゃんの健康維持のためには、ママの健康も必要不可欠。育児は「楽に楽しく安全に」をモットーに、いろいろな選択肢の中から我が家にとってのベスト、ベターな方法が見つかっていくといいですね。皆さんの育児、精一杯応援しています!