- 代表取締役:
- 成瀬雄一
- 事業本部住所:
- 〒142-0042
東京都品川区豊町1-4-11
- 電話番号:
- 03-3785-3617
今回は東京都品川区の全国的にも有名な戸越銀座商店街に店舗を構えるナルセ商店を取材させていただいた。父親からこの家業を引き継いだ2代目社長の成瀬雄一さんに、商店街での牛乳販売店の役割や1店舗のみで全国の平均顧客数を大きく上回る経営方法、明治の販売店としてお客様との関わり方など大変示唆に富むお話を伺うことが出来た。
戸越銀座駅は品川や渋谷といった大都市からわずか15分以内で移動できる距離にありながら下町情緒あるローカルな街で、改札を出るといきなりそこは商店街。
この地はその昔、江戸越えの村であったことから戸越とよばれ、関東大震災で銀座の煉瓦のがれきをこの地に運び低地を埋めたことから銀座の名前を引き継いでいる。名前ひとつとっても何とも興味深い。商店街の長さは東京一長く、1.3キロの中に様々な店舗がひしめく戸越銀座商店街(商栄会・中央街・銀六会の3つの商店街からなる)は、メディアに取り上げられる機会も多い。
全国から注目される背景には、商店街の独自ブランドの開発やイメージキャラクター(銀ちゃん)、コロッケによる町おこしなど、その要因の枚挙にいとまがない。
ナルセ商店は、父親の代にこの地で「明治牛乳戸越銀座販売所」として創業し今年で40年を迎える。長男で現社長の成瀬雄一さんが事業を引き継ぎ、有限会社ナルセ商店と法人化し、屋号を「戸越銀座の牛乳屋」としている。
牛乳宅配店の中には、牛乳以外の商品も増えていることや昔ながらの牛乳屋というイメージを脱却しようとするところもあるが、それに逆行するかのような店舗名はある意味潔の良さと新鮮さを感じる。
「うちの場合、商店街の中に店舗がありますし店売りも行っているので皆さんに親しんでもらいたいんです」と成瀬社長はおっしゃる。
この店売りを行っている、という点にこのナルセ商店の事業戦略のポイントがあった。
テレビやメディアに頻繁に取り上げられ、「戸越銀座の牛乳屋」も何度か登場したこともあるという。父親から引き継いだお客様とメディアの広告効果もあって事業も順風満帆だったのでは、という先入観もあったがまったくそれとは逆で、大変なご苦労を乗り越えてここまできたという。
成瀬社長は、20歳のころ一度は家を出て31歳で家業に戻るまで様々な職を転々とし、その10年の間にはカラオケ店やレンタルビデオ店の店長やマネージャーも行ってきたという。そろそろ、人に使われるより家業で自分の意思を反映できる仕事をしようと家に戻り、3年ほどするころには仕事の流れもつかめ、経営課題や今後の事業展開についても父親である先代社長とも意見を交わすようになっていた。まさにそんな時、その父親が交通事故で他界してしまう。それはまさに突然であり、先代社長は昔ながらのアナログな経営管理を行っていたため宅配の顧客情報もそれを把握するのに、手書きの台帳や伝票を1枚1枚たどりながら確認したという。
その当時を振り返って成瀬社長は、
「あの時はほんと大変でした。ある意味、父の代は時代がよかったんです」
「比較的新規開拓も取れやすく、離脱も少なかったから管理も簡単だったんでしょう」
しかし、外部環境は確実に変化しており人通りの多い商店街といえども気づけば大型のスーパーにとり囲まれ、コンビニの質も向上し、牛乳を飲むお客様のライフスタイルも父親の代のころとはずいぶん変わってきていた。そこで成瀬社長は、これを機に新規のお客様を獲得すべく営業の強化に大きく舵を切る。
その結果、引き継いだ時点で650軒ほどの顧客数も3倍に伸ばすという業績アップを図ることに成功した。