- 代表取締役:
- 後 健二
- 事業本部住所:
- 〒726-0002
広島県府中市鵜飼町624-1
- 電話番号:
- 0847-45-1797
日本には唯一、同一市名の地域がある。一か所は東京都の府中市、そしてもう1か所は今回訪問した広島県の南東部に位置し、福山市や尾道市に隣接する府中市。そこで3代にわたって明治の宅配店を営まれている「明治宅配センター府中」に伺った。
広島県府中市といえば、江戸時代から伝わる「府中家具」が有名。今でも多くの木材加工業者が集積し、桐の高級家具として全国に知られる。また、400年の歴史を誇る「府中味噌」は中国山地の豊かな自然の代表的食文化として親しまれている。
この日はあいにくの小雨交じりのお天気だったが、宅配店に伺うと日焼けした笑顔いっぱいの元気な社長の勢いにそんな天候など全く感じないインタビューとなった。
「明治宅配センター府中」の創業は、現社長の後健二(うしろ けんじ)さんのお父さんが開業された事業かと思いきや、奥様のお父さんが始められた販売店だという。それまでは、全くの畑違いの金融マン。21年の銀行員生活からこの宅配ビジネスに転身したという異色の経歴の持ち主。銀行員といえば数字に強い、経営のプロ、マネジメント知識が豊富といったイメージがあるが、果たして宅配店でそのキャリアがどのように活かされているのかぜひお聞きしたいところだ。
「今日はうちのお店のことだけじゃなくて、府中のこともホームページで紹介してよ!」 こちらから切り出す間もなく、後社長より府中市の特徴についての話から始まった。宅配店は地元に密着したうえに成り立っているサービスだからこそ、地元府中市に対する思い入れを強く感じる。
「後社長は銀行マンだったとお聞きしましたが?」
私は39歳まで21年間銀行に勤めていました。融資をはじめ、ひと通りの銀行業務も経験してマネジメントの責任も重要になってくる時期でした。やりがいのある仕事でしたが新しいことにチャレンジするには、この時しかないと家内の実家が営む明治の宅配店を手伝うことにしたんです。と現在に至る背景をお話しいただいた。
「そりゃ牛乳配達の仕事をするので辞めます、と言った時には周囲からは大変驚かれましたよ」
エピソードのユニークさもあるが、後社長と話し始めてまだ間もないにも拘らず初対面とは思えない不思議な魅力を感じる。どんな話も、一生懸命に話してくださる熱意に聞き入ってしまうのだ。ときには満面の笑みを湛えながら、そして時には身振り手振りでと、その表情豊かな話し方についついこちらもインタビューを忘れて聞き入ってしまうほど。
おそらく銀行時代にも人望があったに違いない。その銀行勤めの経験がこの宅配店経営にどのように影響しているかは大いに気になるところ。
しかし、期待するような経営手法やマネジメント論などではなく意外なほどシンプルな言葉だった。「人は仲良しになることが大切なんです、人とのつながりを仕事の基本と考えています」続けて、人とのつながりを大切にしていくことでそれが最終的には、結果として表れてくるものだという。
銀行時代の経験から融資をするお客さんと、表面的なコミュニケーションを繰り返しても、また様々な数字の資料だけの判断だけでは、経営の実態や本質は見えにくかったという。相手と親しくなるくらいの人間関係が出来ることで、腹を割って本音の話や経営の様子が見えて融資の判断にも役立ってきた。そんな実体験をこの宅配の業務に活かしていきたいという。
後社長のそうした姿勢を裏付けるエピソードがある。
銀行を退職後、まず行ったことは長年の銀行勤めでお世話になった多くの取引先や関係者に転職のあいさつ回りをされたという。ところが、これまでのお礼と転職挨拶のつもりが行く先々で「後さんが牛乳の宅配をされるんだったら」とその場で次々と契約が取れて行ったという。
まさに、人のつながりを大切にしている後社長ならではのエピソードだ。