食を知る

12月 いろいろ、まんべんなく、食べよう!

「最近、忙しくて食生活が乱れてるかも」。普段は健康に気を配っている人にも、そんなときってありますよね。栄養のバランス、朝・昼・晩の配分バランス、時間のバランス…。食生活のいろんなバランスを点検しながら、ベストなバランスに近づけるヒントを探ってみましょう。

「食べる=咀嚼する」ことって大切

「夕食は塾の前にコンビニに寄って好きなものを買って食べる」そんな子どもたちが増えています。夕食はお菓子や菓子パンで済ますことが多い。そんな極端な傾向も出てきています。時間がないから、めんどうくさいから、という理由で、好きなものばかり食べる“ばっかり食べ”。子どもだけでなく、大人にもその傾向が増えているようです。
忙しい季節。いつもはちゃんと栄養バランスを考える人も、ご馳走、あるいはインスタント“ばっかり食べ”で、食事が偏っていませんか?「栄養食品がこんなにあるんだもの、好きなものを食べて、あとはサプリメントでもいいんじゃないの?」そんな声もあります。でも、サプリメントはあくまでも栄養補助のための健康食品。“健康食品”とは一般に、健康の保持増進を目的として、販売や利用される食品の総称として使われ、法令上で定義されているものではありません。むやみに摂取すると健康を害することだってあるのです。特に子どもの摂取には注意が必要。まずはバランスの取れた食生活を第一に考えることが大切です。
「食べる」ことには自分の体で咀嚼して、消化して、吸収する、という大きな役割があります。消化器官を使って栄養を吸収することで、さまざまな内臓の機能が活性化されて、健康を保つことにもつながります。これは、高齢者や病気の方にもいえること。栄養素を取り入れるだけなら、毎日必要な栄養分を点滴すればいいのですが、流動食としてでも、なるべく口から取り入れる方が良いのです。自分の力で飲み込むことで嚥下の機能を保ち、消化器を使うことで、内臓の健康を保つ、という大切な意味があるのです。

多品目を、少しずつ食べる日本人の知恵

「いろんなものを少しずつ」これは、日本人にはもともと馴染みのある食べ方です。まず、「一汁三菜」。ご飯の主食に、主菜1品、副菜2品を交互に食べる、というのが日常的な日本人の食事でした。また、お茶の世界で始まり400年以上の歴史を持つ懐石料理は、ご飯や魚、野菜料理などが様々に楽しめ、その季節に最もおいしい旬のものを、最もおいしい状態で、おいしいと感じる量を提供するものです。
おせち料理もそうですね。魚や肉、野菜、卵、海草、豆、お芋と一日に摂取したい食品群がバランスよく美しくお重に納まっています。平安時代に年初めの朝廷行事で神様にお供えする料理から始まったのですが、神様をお迎えする三ヶ日、女たちが煮炊きをする必要がないように作る保存食としての意味合いが大きくなっていきました。今でも、家族が顔を合わせて新しい年の幸せを祈っていただく大切な食習慣です。
幕の内弁当に代表されるお弁当も、「いろんなものを少しずつ」の代表といえます。文字通り芝居の幕間に食べやすいように、さまざまな素材、味つけ、食感のものを彩りよく詰めたお弁当には、多品目をバランスよく、という知恵とともに、日本人ならではの繊細な美意識も受け継いできたのではないでしょうか。
家庭でも、子どもや家族の毎朝のお弁当づくりはたいへん。でも、毎日のことだからこそ、バランスに気を配りたいものです。「今日は何が入っているかな」、「ちゃんと食べてくれたかな」、そんな無言のやりとり。お弁当を開けたときのうれしさ、きれいにたいらげられたお弁当箱を洗う歓び・・・。お弁当は家族の食のコミュニケーションツールでもあります。

食事はバランスが大切

どんなおかずのときも、野菜が主役のもうひと皿があると理想的です。具だくさんのみそ汁やおひたしなど、茹でたり蒸したりは、サラダよりたっぷり野菜が摂れます。また、冬といえば鍋ですが、鍋は野菜はもちろん、いろんな栄養がまんべんなくおいしく、しかも簡単に摂れる優秀メニューです。

同じカロリーなら、好きなものを選んだっていいのでは?という声もあります。例えばケーキを食べ過ぎたときはご飯を減らせば…。これはダイエット中の女性にはよくあること。でも、ほんとうにそうでしょうか?ケーキやあんこの糖質は吸収が早く、食べた後すぐに血糖値が下がってしまい、あっという間にお腹が空きます。それに比べてご飯の糖質は吸収に時間がかかるので、食べた後、血糖値がゆっくり上がってゆっくり下がります。同じ糖質でも吸収の時間に差があるので、食べた後の腹持ちや満足感が違います。ご飯代わりにお菓子を食べると、なかなか満腹感が得られずつい食べ過ぎてしまうもの。子どもの生活習慣病が増えていることの原因のひとつはこんなところにあるのかもしれません。
また、食べた物を効率よくエネルギーに変えるためには、ビタミン、ミネラルなど、さまざまな栄養素をとらなければなりません。トータルのカロリーは同じでも、いろんな種類の食品をとっていないと、脂肪をため込んでしまったり、痩せにくい体になってしまったりするのです。いろいろな種類の食品からビタミンやミネラルを摂って効率よくエネルギーを消費させる、腹持ちや満足感を考えるなど、多品目をバランスよく食べることはダイエットのためにも賢い選択です。
主食をきちんと食べて、肉や魚を食べたら野菜もたっぷり。いろんなおかずを組み合せることも大切です。さまざまな栄養素がまんべんなく摂れるのはもちろん、風味や食感にも変化がついて、食べることそのものが楽しくなります。

食べることも習慣。だから気になる「生活習慣病」

お話ししてきたように、「食べること」は単なる栄養補給の手段ではありません。体をつくったり、健康を維持したりする一方で、味や香り、彩りや食感を楽しんだり、食べながら会話を楽しんだり・・・。生きるためのエネルギーを補給する以外にもたくさんの意味をもっています。たとえば、以前お伝えした「噛むこと」もそのひとつ。脳を刺激したり、消化酵素を出やすくしたり、精神的に安定させたり、よく噛むことには「咀嚼」以外にもたくさんの効能があります。消化器を使うということにもちゃんと意味があります。
日本で毎年約9万人が診断され、現在患者数が最も多い胃がんを抜いて10年以内にはトップになると予想されている「大腸がん」。その発生には、遺伝的因子よりも環境的因子の比重が大きく関わっていると考えられています。食生活の急激な欧米化、つまり動物性脂肪やたんぱく質の摂取量が増えたのに対し、炭水化物や食物繊維の摂取量が減っていることで、発がん物質を含む便が大腸粘膜に長い時間接しているためであると考えられています。こんなふうに、食事の習慣は、さまざまな病気の原因もつくるのです。
また、食事はコミュニケーションの場でもあります。家族で同じ食卓を囲んで、同じ物を食べながら、今日1日あったことを話すかけがえのない時間。あるいは、「いただきます」「ごちそうさま」の意味、食べものへの感謝など、一緒に食事を摂る時間がなければ伝えられないこともたくさんあります。食事は、ほんとうにおろそかにできない大切な時間なのです。

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