食を知る

3月 おいしく食べるひと工夫 食事マナーについて考えてみよう

食事のマナーってとても大切なもの。食べ方を見ればその人がわかる、というくらい、その人となりが出るのです。どんな家庭環境で育ってきたか、ちゃんと自立できているか、はたまた一緒に食べる人の気持ちを考えているか…など、食べる姿からはいろんなことが見えてきます。正しいマナーを身につけて毎日の食事をもっと楽しく、おいしく味わいましょう。

家族の食卓の風景が変わった?

食べ方の基本や食事のマナーは、誰かと一緒に食卓を囲んで初めて学べること。でも、一昔前には当たり前だった家族みんなで食卓を囲む風景が最近では少なくなりつつあります。
ひとりで食事をとる様子を指して「孤食」という言葉が使われだしたのは1980年代の初め頃。その頃、ひとりで朝ごはんを食べる子どもの姿はまだ衝撃的でした。お父さんはもう会社、お母さんはまだベッドの中…。ひとりの食卓はいかにもさびしそうで孤独のイメージだったのです。
それから20数年、家族の生活時間が多様化するにつれ、「孤食」の風景は珍しいものではなくなってきました。また、家族で食卓を囲みながらも、それぞれがてんでばらばらに好きなものを食べる「個食」なども進んでいるといわれています。
このような家族の食事のあり方が変化したことの弊害はさまざまな形で出てきています。「いただきます」や「ごちそうさま」などのあいさつがきちんと言えない子どもや、箸の使い方をはじめとするマナーの基本が欠如している子どもたちが増えていたり、大人になっても人と一緒に食べられない人が増えているそうなのです。自分ひとりでは食べられるのに、家族や知人とも一緒に食事をすることができない「会食不能症」という症状も増えてきているといいます。
家族のコミュニケーション、さらには食材や栄養の知識など、子どもたちが毎日数々のことを自然に身につけていった「食卓」という場は、今大きな危機を迎えているのです。

食事は対話の場所、そしてマナーを学ぶ場所。

「いただきます」は食事を作ってくれた人だけじゃなく、お米や野菜を育ててくれた人、自然の恵み、いただく命への感謝の気持ちを言葉にすることでもあります。

食事マナーは子どもが大人になっていくなかで覚えていかなければならないもの。そしてその学びの場の中心はほかでもない、食卓という場にあります。
例えば、和食では左手前にご飯、右手前に汁物、真ん中に主菜を置くというような配膳の仕方から始まって、正しい箸の使い方、茶碗の持ち方といったごくごく基本の食事作法、あるいは迷い箸、たぐり箸、なみだ箸などの箸の使い方や、口にものを入れたままおしゃべりをするといった食事のうえでのタブー…。こういった食事のマナーは、家庭の食卓で日々繰り返される食事の中で自然に身についていくものです。そして、食卓はマナーを学ぶ以上に、大切な家族のコミュニケーションの場でもあるのです。
大人も子どもも年々忙しくなっていく現代、「家族の食卓」を取り戻すためには、ちょっとした工夫が必要なのでは。たとえば、子どもが食べている時間には、テレビを消す。一緒に食べられなくても大人は同じテーブルに座り、子どもの話を聞いてあげる。食卓では小言や成績の話はしない。また、家族にこだわらず、ご近所の方や友人家族など一緒に食べる機会をつくる、などなど。とにかく「誰かと一緒に食べるって楽しい!」子どものそんな気持ちを積み重ねていくことが大切です。食は自立の基本。「食べることは楽しいこと」そう実感することから子どもの自立は始まります。

礼儀作法だけじゃない、食事のマナー

マナーには毎日の食卓で学べる基本的なもの以外にも、各国の食文化ごとに決まっている礼儀作法がいくつかあります。 日本には席の座り方から配膳の仕方、箸の使い方から茶碗の持ち方など、細かい作法がたくさんあります。これらは懐石料理など、茶の湯の世界からきているものも多く、一見堅苦しいイメージですが、根底に流れているのは、おもてなしをする人、される人が互いに気持ちよく、おいしくいただくためのマナーです。そこには、長い年月の間に研ぎすまされた用の美ともいえる美しさがあります。
また西洋料理、中国料理にも、それぞれマナーがあります。席への着き方から、フォークとナイフの使い方、中華料理のターンテーブルの回し方、料理の取り分け方など、覚えるのはたいへんそう。でも、ひとつひとつのマナーには、美しく見えること、相手に失礼にならないことなど、一緒に食べる人への思いやりや礼儀に基づくちゃんとした理由があるのです。それを理解するとマナーってどれもとても合理的。少なくなったスープを器を手前にすくうのがフランス流、向こう側へ傾けてすくうのがイギリス流などといった国民性の違いなども見えてきて、意外に奥深いものです。
一方で「感謝して食べること」も大切なマナーのひとつです。食べ物をつくる人、育んでくれる自然、料理をつくる人、おいしくいただける健康など、食にまつわるさまざまな人やものへの感謝の気持ちを持つこと、その上で食べ物を粗末にしないこと、これも立派なマナーなのです。

時代とともにマナーも変わります。

マナーは作法としてすでに決まっているものだけではありません。新しい習慣ができるに伴って、新しいマナーも生まれてきています。今までにない機会にどう対応してよいか迷うこともあるかもしれません。
例えば、食事中の携帯電話の使い方。レストランでこんな光景をよく見ませんか。向かい合いながら、無心に携帯電話の画面を見つめるふたり。あるいは、かかってきた携帯とともに出て行ったまま帰って来ない相手を、料理を前にぽつねんと待つもうひとりの相手。これってマナーとしてどうでしょう?
これはどれも×。携帯電話はレストランに入る前に切っておきましょう。「忙しいんだから、マナーモードくらい…」。そんな人は食事の前に相手にちゃんと断っておきましょう。楽しい会話や食事の途中に、そこにいる人を置いてけぼりにして電話に出たりメールを打ったりしていい理由はありません。
また、レストランなどでおいしい食事やきれいな盛り付けのお皿に出会った際に、デジタルカメラなどで撮影したいと思う機会もあるかもしれません。そんなときは黙って撮るではなく、お店の人に撮影する旨を一声かけたり、フラッシュをたかないようにするなどしたいもの。また時とその場の雰囲気によっては、周りの人が楽しく食事ができるよう配慮し、撮影を我慢するなどの気遣いも必要かもしれません。
マナーって実は簡単なこと。自分がされたらどんな気持ちになるか、それを考えればたいてい答えが見つかります。「相手の身になって考える」、これはフォークの順番や美しいメロンの食べ方を知っているよりも、大切なことかもしれませんね。

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