3月(弥生/March)『寿司』

春、ひな祭りのお節句や卒業・入学などのお祝いには、おすしがよく作られます。おすしには伝統的なものから現代風のものまでいろいろあり、世界中で親しまれています。

昔は魚の漬物のようだったおすし

甘酸あまずっぱいごはんで作るおすしは、日本を代表する料理の1つですが、奈良時代のころに中国から作り方が伝わってきたものです。といっても、その当時は、生の魚に塩とごはんをまぶし、長い間んで発酵はっこうさせる、魚の漬物つけもののような保存食でした。今も滋賀県に伝わるふなずしは、その原型とされています。
やがて時代とともに作り方が変わり、江戸えど時代になるとで味をつけたごはん(すしめし酢飯すめし)が使われるようになり、すしめしに魚などをのせたにぎりずしが江戸えどの町の屋台で売られるようになったといわれています。

ふなずし

ふなずし

琵琶湖びわこでとれるふなを塩でけてごはんをまぶし、重しをして長くんだもので、独特の発酵はっこうしたにおいが特徴とくちょうです。子持ちぶなは卵が色あざやかです。

にぎりずし

にぎりずし

江戸えど時代はすしめしが今より大きく、のせる具(すしだね)も限られていましたが、今はすしめしが小ぶりになり、まぐろをはじめ新鮮しんせん魚介ぎょかいがいろいろ楽しめます。

種類もさまざま。保存の工夫と知恵から生まれた味も

にぎりずしのほかにも、具をすしめしに混ぜたりのせたりするちらしずし、のり巻きのような巻きずし、いなりずし、すしめしと具を重ねてして味をなじませるしずしなど、おすしにはいろいろな種類があります。
冷蔵庫のなかった昔は、日持ちをよくするため、塩やでしめた魚や、甘辛あまからた野菜などが具によく使われました。関西や中国地方でよく作られるさばずしは、若狭湾わかさわんや島根など日本海でとれたさばに塩をまぶして徒歩で運んだものを利用したおすしで、保存の工夫くふう知恵ちえが生み出した味の1つです。
また、中国地方には、具とすしめしを何段にも重ねたはなやかなおすしがあり、お祭りでよく作られます。大勢で分けあえるおすしは、地域の人々がつどうときの食事にはうってつけです。

ちらしずし

ちらしずし

いろどりもはなやかなちらしずしはお祭りやお祝いにぴったりです。五目ずし、ばらずしともいいます。ちらしずしには生の魚介ぎょかいをのせるものもあります。

のり巻きといなりずし

のり巻きといなりずし

のり巻きには細巻きと太巻きがあります。節分によく食べられる恵方えほう巻きは太巻きずしです。甘辛あまから油揚あぶらあげにすしめしめたいなりずしは、「おいなりさん」の名でも親しまれています。すしめしに具を混ぜたり、油揚あぶらあげを裏返したりと、味や姿はさまざまです。

さばずし

さばずし

塩とでしめたさばをすしめしにのせてなじませた、しずしです。

植物の葉で包むものもある

各地にはその地の魚介ぎょかいや野菜などを使った郷土ずしも数々あります。具とすしめしを、ほおの葉やかきの葉、ささの葉などで包んだおすしも各地に見られます。植物の葉で包むと、おすしにその葉の香りがつき、日持ちがよくなり、持ち運びにも便利で、手をよごさずに食べられるなどのよさがあります。昔は農作業や山仕事のお弁当や、行事のときなどによく作られました。

朴葉ずし

朴葉ほおばずし

岐阜や長野などの郷土食で、た野菜や川魚、漬物つけものなどをすしめしにのせて朴葉ほおば(ホオノキの葉)で包みます。朴葉ほおばは大きく、殺菌さっきん効果があるとされ、食器がわりにしたり、ごはんやあんもちを包んだり、葉の上でみそを焼いたりと、さまざまに使われています。

自由な発想で世界に広がるおすし

海外でもおすしはヘルシーでおいしいと人気です。のりを内側にしてサーモンなどを巻いたカリフォルニアロールは、アメリカ人の口に合うように日本人が考案したもので、世界中に広まっています。今では、巻いたり、すしめしにのせたりする具も、魚のほか肉のソテーやフライ、チーズ、生野菜、果物などさまざまなものが使われ、形も味つけもユニークなおすしが各国で生まれ、楽しまれています。
甘酸あまずっぱいすしめしにはどんな具もよく合い、形も自由にアレンジできます。そこがおすしの魅力みりょくであり、世界の人々に愛されている理由といえるでしょう。

見た目も楽しい創作ずし

見た目も楽しい創作ずし

カリフォルニアロールの例。思いがけない具を巻いたりのせたり、自由な発想から新しい味が生まれます。

愛らしい姿が、ひな人形のよう。具は好きなもので。 手まり寿司

手まり寿司

スライスチーズや生ハムなどの具とすしめしをラップで形よく包みます。だれでも簡単にできます。