10月(神無月/October)『米』

田んぼの稲穂いなほ黄金こがね色に色づく秋は、新米の季節です。米は大昔から日本人の食生活の中心にあり、お祭りなどの伝統文化とも結びついています。

縄文時代から作られている米

米は、日本人にとって大切な主食です。雨が多くて温暖な気候の日本は米作り(稲作いなさく)に向いており、今から3000年ほど前、縄文じょうもん時代の後半から作られ始め、今に続いています。熱や力のもとになる栄養が豊富で味がよく、保存のきく米は、昔は税金(年貢ねんぐ)代わりにも使われました。江戸えど時代のころからは、米の収穫しゅうかく量を「こく」という単位で表し(1石は、当時のおとな1人が1年間に食べるくらいの量)、「百万ごくの大名」というように、大名などが支配する土地の広さや生産力を示す物差しにもなりました。

1年かけての米作り、豊作祈願のお祭りも

米はほぼ全国でさまざまな品種が作られています。
米作りは1年近くかかります。春にかわいた田んぼの土を耕し、種籾たねもみもみからに包まれた米)からなえを育て、5月ごろに田んぼに水を張ってなえを植えます。夏になるといねが青々と育ってを出し、花をつけ、もみができます。秋になってもみが大きくなり、黄金こがね色に色づいたら、いねり取ってもみをはずし、籾殻もみがらを除くとようやく米がとれます。その年にとれた新米はつやがあってみずみずしく、香りがよいと、多くの人が心待ちにしています。
いねが病害虫や台風などに負けずに無事育つよう、古くから人々は神にいのってきました。今も各地で初夏から秋に行われるお祭りの多くは、米を主とした穀物の豊作を願い、実りに感謝する祭礼がもとになっています。米作りは、日本の伝統文化や自然環境かんきょうとも深くつながっています。

米作りの様子

米作りの様子(1)
5月ごろ、その少し前に耕した田んぼに水を張ってかき混ぜ、水田にします。しろかきといいます。
米作りの様子(2)
田んぼになえを植えます(田植え)。今は機械で行う農家が大半ですが、手で植える風景も見られます。
米作りの様子(3)
田の水を減らしたり加えたり、除草したりしていねを育てると、8月ごろが出て花がき、もみ(実)をつけます。
米作りの様子(4)
9~10月ごろもみが大きくなり、黄金こがね色に色づいてこうべを垂れると、収穫しゅうかくむかえます。

日本の米、ジャポニカ米は粘りや甘みが特徴

籾殻もみがらを除いただけの米は玄米げんまいといい、ぬかや胚芽はいががついています。精米といってぬかや胚芽はいがを除くと、おなじみの白い米になりますが、ぬかや胚芽はいがにも栄養があり、一部分だけを除いたづき米、玄米げんまいを少し発芽させた発芽玄米げんまい胚芽はいがだけを残した胚芽はいが精米などもあります。なお、お赤飯にする米は、ねばりの強いもち米という種類の米で、おもちの原料にもなります。
米は日本だけでなくアジアの他の国々でも多く作られ、食べられています。日本の米はジャポニカ米といい、ねばりやあまみがあるのが特徴とくちょうですが、他の国では、細長くてねばりの少ないインディカ米が主に作られています。インディカ米のごはんは、カレーなどといっしょに食べたり、ピラフのように調理して食べる方が適しているようです。

ジャポニカ米 インディカ米

おかずとごはんを交互に食べるとおいしい

ごはんは、よくかむと米のあまみと香りが口の中に広がり、どんな料理にも合います。ごはんを主食にしておかず数品とみそしるなどのしる物を組み合わせた伝統的な献立こんだての形は、栄養面でも味の面でもおすすめです。おかずやしる物を一口食べてはごはんを一口食べると、料理の味が混ざらずに1品1品をおいしく味わうことができます。

日本の伝統的な献立の形

日本の伝統的な献立こんだての形

ごはんを主食に、主菜(肉や魚の料理)、副菜数品としる物(どちらも野菜や海藻かいそう豆腐とうふなどの料理)を組み合わせた献立こんだては、栄養も味のバランスも整いやすい形です。

香ばしい香りでごはんのおいしさが倍増 チーズ入り焼きおにぎり

チーズ入り焼きおにぎり

ごはんにけずり節やしょうゆを混ぜ、チーズをしんにしておにぎりにしてさっと焼きます。ごはんをにぎる前に、ごはん茶碗ぢゃわんに入れて軽くゆすると、ふわっとまとまります。