4月(卯月/April)『桜』

春、だれもが心はずませて待ちわびる桜。日本人は古くから桜をいとおしみ、食生活の中にも取り入れてきました。

千年以上も前から愛され続けてきた桜

日差しが日一日ひいちにちと暖かくなるころ、桜前線の話が毎日ニュースで聞かれるようになります。
花といえば桜を意味するほど、日本人は桜が大好きです。昔は、桜のき方でその年の農作物の出来をうらなうなど、農業や神事にとって大切な花だったともいわれます。
花の美しさは、古くから人々の心をとらえてきました。千年以上前の平安時代前期に作られた古今こきん和歌集」にも、桜の和歌がたくさんのっています。そして今も、桜をテーマにした歌はさまざまあり、多くの人に愛されています。長い冬を乗りえて、空をはなやかに染めるように花開く桜には、昔も今も、人々の心を魅了みりょうする力が秘められているのでしょう。

「桜」と名のつく食べ物もいろいろ

桜のく時期や色にちなんで、桜と名のつく食べ物もあります。たとえば、春にとれる真鯛まだい桜鯛さくらだいとも呼ばれます。駿河湾するがわんで春や秋によくとれる「桜えび」は、まさにあざやかな桜色が特徴とくちょうです。また、たこをんだごはんは、その色合いから「桜飯さくらめし」ともいいます。たい「めでたい」、えびは「こしが曲がるまで長生き」、たこは「多幸」など、縁起えんぎのよい食材でもあり、卒業や入学、進級、結婚けっこんなどのお祝いの食事にもよく出されます。

花も葉も塩漬けにして食べる先人の知恵

私たちの祖先は、桜をながめて楽しむだけでなく、花や葉を食べ物にして味わう知恵ちえも生み出しました。桜もちに巻いてある葉は、桜の葉を塩けにしたものです。桜の花も塩けにされ、飲み物やお菓子かし、あんパンなどに使われています。花も葉も、生ではほとんど香りがしませんが、塩けにするとクマリンという独特の香りが生まれます。塩けにされた桜の花は、お湯を注ぐと水中花のようにきれいに花開きます。これを桜湯といい、結婚けっこんが決まった時に行う結納ゆいのうなどのおめでたい席で出されます。

桜の花の塩漬け

桜の花の塩

八重桜やえざくらという種類の桜の花を塩と白梅酢しろうめず(梅の実を塩でけるとしみ出すしる)にけたものです。使う時は表面の塩を落として水の中でふり洗いし、使い道に合った塩加減になるまで水につけて塩出しをします。

桜湯

桜湯

けの桜1~2輪の塩をはらい、水で洗って軽く塩を出して湯のみに入れ、お湯を注ぐと、香り高くほんのり塩味の桜湯ができます。

桜の葉の塩漬け

桜の葉の塩

主に大島桜おおしまざくらという種類の桜の葉を、塩と白梅酢しろうめずなどでけたものです。

桜もち

桜もち

けの葉の香りとほのかな塩気しおけは桜もちには欠かせません。葉はいっしょに食べて味わうこともできます。

桜の花の塩漬けを、料理やお菓子に

桜の花の塩けは、いろいろな料理やお菓子かしに使えます。みごはんやおすし、吸い物、スパゲティ、チーズと合わせてカナッペなどにも合います。お菓子かしでは、クッキーやしパンの生地きじにのせて焼いたり、寒天やゼリーの中に入れて固めたり、市販しはんのおはぎに花を1つのせても、春の香りと色が楽しめます。

お花見弁当にも春のパーティーにもおすすめ! 桜ごはん

桜ごはん

桜の花の塩け15gの塩を落として1カップほどの水の中でよくふり洗いし、水気みずけを軽く絞ります。洗った米2合を炊飯器すいはんきに入れ、桜の花をのせます。ふり洗いした水の上澄うわずみに真水を足して米2合分の水加減にし、酒やみりんを適量加えてきます。食紅しょくべにあわい色をつけても。