食を知る

4月 春の畑だより

栽培技術の発達や海外からの輸入によって、食卓からも旬を感じることが少なくなってきています。でも旬の食材にはいいことがいっぱい。緑鮮やかな春の野菜をたっぷり食べて、それが生まれる畑のこと、それをつくる人のことに思いを寄せてみましょう。

食卓から、想像力を広げてみよう。

春の味覚、と聞いて思い浮かべるのはどんなものですか?たけのこ、グリンピース、春キャベツ…。春には香りや甘みをたっぷりたたえた野菜たちが旬を迎えます。春の味覚を求めて山菜狩りやたけのこ掘り、いちご狩りなどに出かける方も多いのでは。自分の手で取ったものを食べるのは、旬を知るためにも、その食べ物がどんなふうに存在しているかを知るためにもいい機会です。でも、いちごのなり方を知っていても、キャベツやグリンピースが畑でどんなふうにできているかを知っている子どもは少ないのではないでしょうか。都会で生活していると、大人でも、普段よく食べている野菜がどこでどんなふうに作られているのか、知らないことの方が多いのでは。
毎日食べているものに興味をもつこと、それは「食育」のスタート地点です。今日、食卓に並んだ料理の食材について、お子さんと話してみてください。どこからきたもの?誰が作っているの?どんなふうに作っているの?そんなふうに、想像力の翼を広げてみてください。きっとそこからいろんなものが見えてくるはずです。ほとんどが海外で作られたものだった! そんな日もあるかもしれません。それはどうして?とそんな日は食品の自給率についての話題へ。旬の食材がある日は、畑に思いを巡らせてください。春の畑は、やわらかな緑にあふれて、うれしい気分がいっぱいのようです。

春の畑では、いろんなものが生まれています。

啓蟄、穀雨など、日本の暦には農にまつわるものが多くあります。春から数えて88日の「八十八夜」もそのひとつ。新茶の茶摘みが始まる日、また、この日に種まきをするとよいという日です。

春は、目覚めの季節。冬の寒さで縮こまっていた虫たちも冬眠から覚めて、元気に活動を始めます。畑にも、3月に植えたじゃがいもたちがどんどん芽を出し、春キャベツがまるで大輪の緑のバラのようにふっくらと実を結んでいます。春キャベツのまわりにはたくさんのモンシロチョウやモンキチョウがひらひら。やわらかなキャベツの葉っぱは蝶の幼虫にも魅力的に違いありません。向こうではえんどう豆が、スウィートピーにそっくりなかわいい白い花を咲かせています。花の形を見て、改めて同じ豆科なんだ、と納得。そして、水をたたえた田んぼは静かに田植えの季節を待っています。温室の中では稲の苗をはじめ、春夏野菜の種がいっせいに芽吹いて出動準備完了です。肥料を撒いて耕して、定植の準備が済んだ畑からは、甘い土の匂いが漂ってきます。トマト、きゅうり、かぼちゃ、なす、すいか・・・。南北に長い日本列島、もちろん気候によって異なりますが、ほとんどの夏野菜が4月〜5月に種まきや定植の季節を迎えます。農家の方にとって春は忙しいけれど楽しい季節。すべての景色がこれからぐんぐん伸びて実るぞ〜といううれしい予感に満ちています。
季節の野菜を知るためには、畑に出かけてみるのがいちばんです。近所に畑がある人は、今の季節、なにができているかな?これはいったい何の野菜?とたまにはじっくり眺めてみてください。いつも同じだと思っていた土の色や雑草の種類も、季節によって変化していることに気がつくはずです。自分の食卓とつなげてみると、いつもなにげなく通り過ぎている風景が違って見えてきます。近くに畑のない人も想像力のチカラで、食卓の春キャベツのサラダやグリンピースごはんから、春の畑にバーチャル・トリップしてみませんか。

農村へでかけよう。畑を体験してみよう。

想像力も大切ですが、食べ物のことを知るためには、それが生まれる場所に出かけてみるのがやっぱりいちばん。近くに畑も田んぼもないし、とあきらめずに、機会を作ってちょっと遠くまで足を伸ばしてみましょう。最近では、さまざまな地域に農業を体験できる場所があります。授業の一環として学年単位で農業を体験する機会なども少しずつ増えてきています。また、農作業に限らず、農山漁村に滞在して、さまざまな体験をすることで、農村漁村と都会の生活を結ぼうという活動も盛んです。さらに、自然体験、農業体験のできるツアーも増えています。これらは「グリーンツーリズム」という、農山漁村地域において自然、文化、人々との交流を楽しむ、滞在型の余暇活動です。イタリアではアグリツーリズモ、英国ではルーラルツーリズム、グリーンツーリズム、フランスではツーリズムベール(緑の旅行)と呼ばれ、欧州では以前から農村に滞在しバカンスを過ごすという余暇の過ごし方が普及しています。
まずは田植えや稲刈り、芋掘りといった楽しい農作業1日体験からトライしてみるのもいいかもしれません。「クラインガルデン」と呼ばれる滞在型市民農園、市民農園などを利用した週末農園、雑草とりや、林の下草狩りといったボランティアから、援農、伝統文化を学ぶ、祭りを体験する、などなど、田舎との関わり方のバリエーションもさまざま。あなたにぴったりのスタイルを見つけて、機会があったらぜひチャレンジしてみてください。
今年は夏休みを利用して、お子さんと一緒に農村体験の旅はいかがですか?今まで何気なく食べていた野菜やお米への意識がきっと変わるはずです。そして「いただきます」の意味も。

食卓から畑、畑から食卓へ。食から日本の“今”が見えてくる。

安いから買う、ではなくまずどうして安いかを考える必要があるでしょう。食べたいものがなんでも手に入る日本だからこそ、選ぶことが大切です。

野菜づくりや農作業を少しでも体験してみると、いろんなことが見えてきます。たとえばそれは「キャベツってこんなふうにできるんだ!」「とうもろこしってこんなふうになるんだ!」といった、毎日口にしている食材への知識。あるいは「キュウリやトマトは夏の野菜なんだ!」「雑草ってこんなに生えるの!?」「土を耕すってこんなにたいへんなの!?」そんなふうに単純だけれど、ほんとはすごいたくさんの発見。あるいは「ひとつの野菜を育てるのに、こんなに肥料や農薬が使われているんだ!」という驚き。また、旬の野菜の種類は、それほど多くないことにも気づきます。「これ以外の野菜はどこで誰が作っているの?」そんなふうに、興味はトレーサビリティや海外で作られている野菜へと広がるかもしれません。食に関する「なぜ?」「どうして?」の「?」が生まれたら、まずは家族みんなで、それについて話してみましょう。それが食育のはじめの一歩。みんなで考えることからいろんなことが始まります。
みんなで話し合うことで、レストランで食事をするとき、お弁当を食べるとき、スーパーに買い物に行ったとき、あらゆる場面で、これまで無意識に選んでいた食材を、意識的に選ぶようになります。ひとりひとりのそんな小さな変化から、日本の食は少しずつ変わっていくのかもしれませんね。

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