2023中期経営計画を支えるDX戦略

トップメッセージ

原材料価格の高騰や急激な円安の進行、デジタル化の進展などにより、経営環境の不確実性が高まっています。また、エネルギーコストも、原油などの燃料価格が上昇傾向にあり、さらにグリーンエネルギー対応のための費用も加算されます。これは、サステナブルな社会実現のために乗り越えなければならないコストです。一方で、ロシア・ウクライナ情勢の影響は予断を許さない状況が続いています。

こうした環境変化に対して、デジタル技術を活用した新事業創出や生産性向上、価格改定、商品の付加価値追及で応えていきます。

株式会社 明治 代表取締役社長 松田 克也

当社が掲げる「栄養ステートメント」について

2021年6月、明治グループはスローガンを「健康にアイデアを」に刷新しました。当社ではそれを食品領域にブレイクダウンし、「栄養ステートメント」として私たちが提供する栄養の考え方を明文化しました。

明治が考える“栄養”は、体作りに必要な「栄養素」だけではありません。明治の“栄養”は、提供する商品や情報、サービスの全てだと、私たちは考えます。「栄養素をおいしく食べる」という基本を大切にしながら、利便性や健康機能性などのさまざまな付加価値を加えた多様な“栄養”を提供します。そして、生活者一人一人の健康を実現し、人生の充実に貢献し続けます。

すこやかで充実した人生を送る喜びが多くの生活者から生まれ、身近な人、コミュニティー、そして社会全体でその喜びを分かちあえる世界を、明治は目指します。

従業員や株主の皆さま、サプライヤー、流通チェーン、公的機関、企業などのステークホルダーとのパートナーシップにより“栄養”を提供し、食と健康でともに未来を切り拓く喜びを分かちあいます。

2023中期経営計画の方向性と取り組み

「栄養ステートメント」に基づき、当社では「環境変化に対応し、高い適応力を持つ新しい明治に進化を遂げ、サステナブルな成長を実現する」をコンセプトに策定した2023中期経営計画に取り組んでおり、食品セグメントとして、「コア事業の回復」「海外展開の推進」の2つを重点課題として掲げています。

コア事業の回復

コア事業であるヨーグルト、チョコレート、栄養食品に注力すると同時に、将来の成長ドライバーとなる事業の育成を図り、さらなる事業ポートフォリオの強化を目指していきます。また、高度なIT活用や外部リソースの積極的な活用により、スピードを意識した経営スタイルへの変革・業務プロセスの刷新をし、コア事業の回復を図ります。

海外展開の推進

各地域で明治らしい、差別化された商品を展開し、独自のポジションを確立、ブランド認知を獲得し成長を加速させていきます。

2023中期経営計画を支えるDXの具体的な取り組み

2023中期経営計画の取り組みで、重点課題として挙げている「コア事業の回復」では、高度なIT活用によるスピードを意識した経営スタイルへの変革と業務プロセスの刷新を推進しています。

新事業創造・既存事業変革

データ・デジタル技術の活用によりビジネスモデルを変革し、新たな事業を創造します。また、既存事業を変革することで売り上げを向上し、顧客のLTV向上を図ります。

市乳部門の特売におけるAI需要予測

予測精度向上による製品廃棄および鮮度外在庫削減や、営業、工場需給担当者の作業生産性向上を目的に、販売予測値のAI予測モデルの実用化に成功し、販促情報システムへ組み込み、環境を構築した。さらに鮮度外在庫の処分販売対応に伴う対応工数、拡売費の削減、ブランド価値棄損防止といった効果が見込まれます。
(戦略の達成指標:製品廃棄の削減)

「ほほえみクラブ」のオンライン相談

私たちが運営する「ほほえみクラブ」は産前・産後の女性向けの育児応援サイトであり、育児支援サポートとして従来の電話相談に加え、2022年6月にLINEによるオンラインビデオ通話での相談サービスを新たに開始するなど、デジタルを活用した顧客接点の多様化を進めています。今後は一人一人のニーズに応じて不足している栄養情報や商品を提供するという、新たなビジネスモデルの構築を目指します。
(戦略の達成指標:「ほほえみクラブ」アクティブユーザー数)

アイスクリーム新商品のAI需要予測

業務効率化に向けた取り組みの一環として、今年度より販売実績や気象情報を活用した新商品の需要予測AIの実証実験を開始しました。現在は一部季節限定品のみで検証を進めていますが、一定の販売予測精度が確認できれば他の商品にも展開し、需要予測業務の効率化と販売予測精度向上による安定した収益の確保を図ってまいります。
(戦略の達成指標:需要予測による販売予測精度)

業務効率化・コスト削減

業務プロセスのデジタル化により、バリューチェーンの各機能とバックオフィスのプロセスを変革し、業務効率化とコスト削減を図ります。

経理業務プロセス改革

当社は、立替精算のみならず、請求書の受領、会計システム入力、電子保管などの経理業務の全領域をデジタル・ペーパーレス化した会計システムを導入し、運用を開始しました。請求書や入力した情報などをPDFでやりとりし、紙での管理が不要となるため、資料のファイリングなどの業務を削減できるほか、2022年1月施行の改正電子帳簿保存法にも対応しています。2023年3月末までに当社の国内グループ会社全17社についても同システムを導入しました。
(戦略の達成指標:会計関連証憑のファイリング作業時間)

顧客応対業務の高度化

お客様相談センターへの問い合わせ内容をAI音声認識によりテキスト化・要約することでオペレーターの応対を支援し、顧客満足度向上を目指します。
(戦略の達成指標:顧客応対時間)

Web会議システム導入による社内会議のオンライン化

対象の従業員にWeb会議システムを導入し、出社率の削減を目指します。
(戦略の達成指標:出社率)

DXの推進体制

2022年4月から、新しいテクノロジーを活用した新しいビジネスや生活提案、生産性向上、いわゆるDXを実現することを目的として、デジタル推進本部を発足しました。このデジタル推進本部には、これまで会社のIT関連業務を担って来た情報システム部に加え、デジタル戦略部を新設し体制を強化したことにより、DXの実現に向けてスピードアップを図ります。

また、当社のイノベーション創出および持続的成長のために、DXを実現できる人財の育成に取り組みます。DXを実現するために全従業員が身に付けるべき土台となる要素を「Meiji Digital Mind (MDM)」と定義し、さまざまなMDM活動を通じてITリテラシー向上を図ります。加えて、当社事業についての知識を有するビジネススキルと、データ分析やAIの知識を有するテクノロジースキルの両方を兼ね備えた人財(MDM人財)の育成プログラムを今後開始する予定です。
(戦略の達成指標: MDM人財の育成人数)

以上