インフルエンザにおける乳酸菌のチカラ

2018.12.21 10:00 | 竹田 和由

毎年1~2月に流行のピークを迎えるインフルエンザ。感染すると1週間ほどは学校や会社を休まなければなりません。人によっては、毎年感染してしまう人、まったくかかったことのない人がいますよね。その理由の一つには、免疫力が関わっているのです。

免疫と乳酸菌の関係

常日頃からウイルスや細菌などの外敵から身体を守る免疫細胞は、多くが腸に存在するといわれています。乳酸菌やヨーグルトには、その腸内の環境を整えるとともに、免疫細胞の働きを高めることがわかっています。

Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus OLL1073R-1について

Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus OLL1073R-1(以下OLL1073R-1乳酸菌)」は、特定のヨーグルトを作るために使用される乳酸菌のひとつで、多糖体を多く産生することが特徴です。乳酸菌などが菌体外に作り出す多糖体をEPSと呼び、EPSは生体に対して免疫機能を活性化することがわかっています。
健康な高齢者を対象とした試験では8~12週間にわたりOLL1073R-1乳酸菌で発酵したヨーグルトを摂ってもらったところ、風邪症候群への罹患リスクが半分以下になったことが明らかとなりました。

インフルエンザの予防に重要なIgA抗体を増加

免疫の一種であるIgAは、主に腸や口腔などの粘膜に存在する抗菌物質(抗体)です。粘膜面でウイルスや細菌を吸着し、体内への侵入を防ぎます。いわば、外敵が身体に入ってくる際にバリアのような役割をしてくれる存在です。このIgAの濃度が低下すると、ウイルスなどの侵入を許して、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなることがあります。

OLL1073R-1乳酸菌で発酵したヨーグルトを用いた試験では、健康な高齢者を対象に、12週間にわたりOLL1073R-1乳酸菌で発酵したヨーグルトを毎日摂取してもらったところ、他の乳酸菌で発酵したヨーグルトを摂った人と比べ、インフルエンザA(H3N2)亜型に反応する唾液中IgA濃度の増加率が有意に上昇することを確認しました。(下図)

日々の手洗い、うがいに加え、乳酸菌の摂取を毎日の習慣として、インフルエンザの流行に備えましょう!

竹田 和由

1991年東北大学大学院歯学研究科博士課程修了。1991年南カルフォルニア大学医学部微生物学教室、1995年新潟大学医学部医動物学講座助手。1996年順天堂大学医学部免疫学講座助手、1999年同講師、2007年同准教授。また、2005年豪州Peter MacCallum Cancer Centre, Cancer Immunology Program 客員准教授併任。2014年より現職。
2000年には日本癌学会奨励賞を受賞。専門は、腫瘍免疫、NK・NKT細胞の機能解析。

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