涼しくなってくると、インフルエンザの流行が気になりはじめます。特に小さなお子さんやお年寄りがいるご家庭、持病をお持ちのかたや呼吸器が弱いかたは、うがいや手洗いなどの対策をとり始めていらっしゃるかもしれませんね。
インフルエンザというと「風邪の親玉」という印象をお持ちになるかたが多いかと思いますが、実は風邪とはいろいろな面でかなり異なる病気です。 今回は、主にインフルエンザと通常の風邪との症状の違いや、インフルエンザの一般的な症状についてお話ししたいと思います。
通常の「風邪」の症状
通常「風邪」と呼ばれているのは、急性の上気道の炎症です。
様々な菌やウイルス(ライノウイルスやコロナウイルスなど)によって起こります。よほど健康に自信のあるかたでなければ、通常の風邪は一年に数回程度かかってもおかしくありません。流行する時期は冬がピークになりますが、夏風邪など気候の変化や冷えをきっかけに、一年を通して風邪をひく可能性があります。
風邪を引き起こす菌やウイルスは多くの種類があるので、症状は病原菌によって異なります。ただ多くの場合、発症はインフルエンザに比べて穏やか、熱の上がり方も緩やかで、だいたい37℃から38℃台の前半くらいまでにとどまることが多いようです。
【風邪の主な症状】
・鼻水
・のどの痛み
・咳
・発熱
・頭痛
・消化器症状
など
インフルエンザの症状
インフルエンザはインフルエンザウイルスによって感染する病気です。
【インフルエンザの病状の進行】
1.インフルエンザウイルスに感染
2.約1~2日間の潜伏期間
3.突然、38℃を超える高熱や関節痛、全身の筋肉痛などの重い症状があらわれる
【インフルエンザの主な症状】
・いきなり高熱が出る
・悪寒や倦怠感が強い
・呼吸器の症状
・咳が出て痰がからむ(重い場合は呼吸困難などに陥る)
・下痢や腹痛
・食欲不振
・関節痛、筋肉痛
余談ですが、紛らわしいことに、インフルエンザと名のつくものにはインフルエンザウイルスのほかに、インフルエンザ菌と呼ばれるものもあります。こちらは、中耳や呼吸器系に感染しやすいものです。ヒブ(Hib)と呼ばれるインフルエンザb型菌などが有名ですが、インフルエンザの原因にはなりません。
インフルエンザウイルスの強大な感染力
インフルエンザウイルスはとても感染力が強く、爆発的な流行が見られることがあります。日本では例年12月から3月の間の流行が多くなります。
インフルエンザの流行は、健康状態や年齢、地域を問わずどこにでも起こり、特に保育園や学校、病院など、多くの人が集団生活をする場では、一人がインフルエンザにかかると次々に感染し、発症することがあります。
インフルエンザウイルスの感染経路は主に2つで、「飛沫感染」と「接触感染」があります。「飛沫感染」では、感染者のくしゃみや咳などの飛沫と一緒にウイルスが放出され、それを別の人が吸い込むことで感染します。「接触感染」は、ウイルスが付いたドアやスイッチ、つり革などを触り、その手で自分の口や鼻などを触ることで感染します。
学校ではインフルエンザのさらなる流行を防ぐため「学級閉鎖」「学年閉鎖」といった措置がとられることもあります。
インフルエンザの怖い点は、症状が重篤になりやすく、気管支炎や肺炎、さらには脳症まで発症する可能性が高いという点です。
健康な成人の方であれば、通常、発症から一週間程度で症状が軽減・治癒するとされていますが、子どもやお年寄りなど、あまり体力のないかた、呼吸器系や糖尿病などに基礎疾患のあるかたにとっては、命取りになる場合もあります。インフルエンザには十分な注意が必要です。
2002年医師免許取得、2012年医学博士号(甲)取得。
日本内科学会認定内科医、日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、インフェクションコントロールドクター、日本感染症学会感染症専門医、日本化学療法学会化学療法認定医・指導医、日本結核病学会抗酸菌認定医・指導医、日本アレルギー学会専門医、肺がんCT検診認定医。