元々フランス文學や詩の先生でいらつしやるさうですがね、先生のお作りになる唄は童謡も流行歌も、有名な唄ばかりです。殊に、作曲家の中山晋平先生とお二人でお作りになつた銀座の唄は、どれほど私達を樂しませてくれていることでせう。「當世銀座節」「東京行進曲」「新東京行進曲」「戀の銀座」「銀座の柳」「東京戀しや」「女給・君代の唄」「東京音頭」「銀座音頭」……。お二人コンビではなく、お一人づつ作詞や作曲をなさつた銀座の唄も澤山あります。擧げれば切りがございませんよ。「ジヤズで踊つてリキユルで更けて、明けりやダンサーの涙雨」(「東京行進曲」)なんてね、モダン銀座の雰囲氣その儘です。
西條先生は余りカフエーなど好まれないやうですが、交詢社ビルにあるサロン春にはちよくちよくいらしているやうですね。
金鶏亭でも時々レコードをかけますが、この曲は大變な人氣ですよ。何せ菊池寛先生が「キング」で連載なさつた小説を映画にして、その主題歌だつていふじやあないですか。レコードは二十五萬枚も賣れたさうですよ。
西條先生は余りカフエーなど好まれないやうですが、交詢社ビルにあるサロン春にはちよくちよくいらしているやうですね。