聞いた話ですがね、京都三高の學生さんが、築地座京都公演の劇評を書いて好評ださうですよ。シングやアイルランド戯曲、ルナール、岸田國士を熱心に勉強しながら、三高の文藝部雜誌で戲曲や評論を發表してゐる方のやうです。學校には殆ど行つてゐないとのことで、成績は覺束ないらしいですが。
若しかするとこの方は、劇作家よりも小説家に向いてゐるやうな氣がしてなりませぬ。肺を病んでをられるのに、増して一層ご自分を傷め付けるやうな生活振り。にも拘はらずひたすら書くことに打ち込みながら、時代の趨勢には流されず放浪者のやうに生きる精神も、據り処のないこれからの時代に、共感を呼ぶのではないでせうか。