Meiji NPSの特徴と評価方法

Meiji NPSは、食品の栄養成分を基に食品の健康価値を評価する仕組みです。
地域や世代ごとの健康課題を考慮し設計したMeiji NPSを用いて、
私たちは、栄養に関する健康課題の解決に貢献することを目指しています。

Meiji NPSの特徴

Meiji NPS(明治栄養プロファイリングシステム)設計の背景

私たちは、栄養に関する考え方や向き合い方を「明治 栄養ステートメント」としてまとめ、その中の1つの目標に栄養に関する健康課題の解決への貢献を掲げています。この目標を達成するためには、各地域の生活者一人ひとりが抱える個別の健康課題や食環境における課題に向き合うことが重要だと考えています。これらの背景を踏まえ、明治栄養プロファイリングシステム(Meiji NPS)を、私たちなりの解決策の一つとして設計しました。

栄養プロファイリングシステム(NPS)は食品の栄養価値を科学的に評価する仕組みであり、対象に応じて適切に設計することが求められています。そのため、「明治 栄養ステートメント」の理念に基づき、地域やライフステージごとに異なる健康課題への対応を目指してMeiji NPSを構想し、まず日本での活用に向けたNPSの設計に着手しました。

明治 栄養ステートメント

Meiji NPSの概要と特徴

Meiji NPSでは、幅広いライフステージや健康課題に寄り添うことを掲げており、幼児期・小児期・成人期・高齢期それぞれに対して、幼児NPS・小児NPS・成人NPS・高齢者NPSの設計を目指しております。これまで、日本の成人・高齢者の健康課題を考慮したNPSを策定しています。※1 なお、これらは、公共機関、学術団体などが発行した公的なガイドラインやデータ※2 を参考にデザインしています。

今後、幼児や小児といったライフステージへの拡大や、商品を展開する世界各地への対応を進めていきます。

成人NPS

日本の成人の健康課題である「生活習慣病」と「若年女性のやせ」を考慮した成人向けのNPSです。なるべく摂取しないように心がける栄養素(糖類、飽和脂肪酸、食塩など)や、積極的に摂取すべき栄養素(たんぱく質、食物繊維など)を設定し、これらが含まれる量によって栄養価値をスコア化します。

高齢者NPS

日本の高齢者の健康課題である「フレイル」を考慮した高齢者向けのNPSです。成人NPSをベースに飽和脂肪酸を制限しないなど、高齢者が陥りやすいフレイルを予防するための変更を追加します。

Meiji NPSの対象と健康課題
Meiji NPSの対象と健康課題についてイラストで解説しています。幼児期・小児期は「発育·発達」、成人期は「生活習慣病」や「若年女性のやせ」、高齢期では「フレイル」など、ライフステージごとに異なる栄養課題に対応していること、また、乳児~3歳未満の乳児はNPSを設定しない予定であることなどを説明しています。 Meiji NPSの対象と健康課題についてイラストで解説しています。幼児期・小児期は「発育·発達」、成人期は「生活習慣病」や「若年女性のやせ」、高齢期では「フレイル」など、ライフステージごとに異なる栄養課題に対応していること、また、乳児~3歳未満の乳児はNPSを設定しない予定であることなどを説明しています。
  • ※1株式会社 明治|Meiji NPS 策定に関するニュースリリース(https://www.meiji.co.jp/corporate/pressrelease/2023/0630_01/index.html)(参照 2024-07-17)

  • ※2 日本人の食事摂取基準(2020年版)〈厚生労働省〉
    令和元年国民健康・栄養調査報告〈厚生労働省〉
    健康日本21〈厚生労働省〉
    Healthy diet〈世界保健機関(WHO)〉
    Planetary health diet〈EATランセット委員会(EAT-Lancet Commission)〉など

Meiji NPSで実現したいこと

私たちは、地域特性を考慮し、ライフステージ別の栄養に関する課題解決を目指して、健康的な食品評価のための尺度としてMeiji NPSを設計しました。このMeiji NPSを活用し、私たちはより栄養価値の高い商品の開発や改良につなげていきます。また、将来的にはMeiji NPSによって評価した各商品の栄養価値や食べ方に関する情報をお客さまに提供し、より良い商品選びをサポートできるよう努めてまいります。これらの取り組みを通じて、栄養に関する課題解決に向けて、お客さまや社会に貢献していきます。

栄養プロファイリングがあることで、お客さまへ栄養価値や食べ方に関する情報の提供や、明治自身の商品開発や改良に役立てることができます。こうした栄養に関する課題解決を通して、お客さまや社会に貢献していくことをイラスト図で説明しています。 栄養プロファイリングがあることで、お客さまへ栄養価値や食べ方に関する情報の提供や、明治自身の商品開発や改良に役立てることができます。こうした栄養に関する課題解決を通して、お客さまや社会に貢献していくことをイラスト図で説明しています。

Meiji NPSの評価方法

成人NPSによる栄養評価方法

成人NPSの特徴

成人NPSは、日本の成人における「生活習慣病」と「若年女性のやせ」を考慮し、食品の栄養価値を科学的に評価するものです。※3 Meiji NPSでは、1回に摂取する量(サービングサイズ)に基づき、そこに含まれる栄養成分量により評価します。具体的には、サービングサイズあたりの摂取が推奨される栄養成分(たんぱく質・食物繊維など)、食素材(野菜類・乳類など)、および控えたい栄養成分(食塩・糖類など)の量に応じて評価を行います。

その評価結果は0.5~5.0の10段階に分けられたスコアで示され、栄養価値を可視化します。スコアが高いほど、その食品の栄養価値が高いと判断できます。

  • ※3WAKAYAMA, Ryota et al. Development and Validation of the Meiji Nutritional Profiling System per Serving Size. Nutrients, 2024, 16.16: 2700.

生活習慣病とやせのイラストです。 生活習慣病とやせのイラストです。

サービングサイズでの評価

Meiji NPSでは1回に摂取する量(サービングサイズ)の栄養成分量を基にスコア化します。サービングサイズは各食品に応じて様々ですが、実際の食シーンに近づけるように考慮しています。サービングサイズは目安量、常用量※4 等を参考に設定しました。

一般的に目安量は、食品のパッケージなどに記載されており、消費者に特定の食品や成分を一日にどれくらい摂取するのが適切かを示すものです。一方で常用量は、日常的に私たちが食べている食品の標準的な摂取量を指し、栄養管理や医療現場などさまざまなシーンで活用されています。これらを基にして設定されるサービングサイズの例を右に示します。

  • ※4臨床栄養総合技術研究会, 常用量目安 食品成分早見表 第3版, 医歯薬出版株式会社, 2006

サービングサイズの例を、牛乳、チョコレート、チーズ、アイスクリームのイラストで説明しています。 サービングサイズの例を、牛乳、チョコレート、チーズ、アイスクリームのイラストで説明しています。

評価に用いる栄養成分と食素材

成人NPSでは、評価に用いる栄養成分・食素材を以下の通り設定しました。これらは、公共機関・学術団体などが発行した公的なガイドライン・データを参考にデザインしています。

推奨栄養成分の説明イラストです。推奨栄養成分は、たんぱく質、カルシウム、食物繊維、鉄、ビタミンDの5成分を、不足しがちで摂取が推奨される栄養成分として設定しています。 推奨栄養成分の説明イラストです。推奨栄養成分は、たんぱく質、カルシウム、食物繊維、鉄、ビタミンDの5成分を、不足しがちで摂取が推奨される栄養成分として設定しています。
推奨食素材の説明イラストです。推奨食素材は、果実類、種実類、乳類、野菜類、豆類の5素材で、推奨栄養成分以外の有用な栄養成分を多く含む食素材を設定しています。 推奨食素材の説明イラストです。推奨食素材は、果実類、種実類、乳類、野菜類、豆類の5素材で、推奨栄養成分以外の有用な栄養成分を多く含む食素材を設定しています。
制限栄養成分の説明イラストです。制限栄養成分は、エネルギー、飽和脂肪酸、糖類、食塩相当量の4成分で、摂り過ぎる傾向にあり、摂取を控えたい栄養成分を設定しています。 制限栄養成分の説明イラストです。制限栄養成分は、エネルギー、飽和脂肪酸、糖類、食塩相当量の4成分で、摂り過ぎる傾向にあり、摂取を控えたい栄養成分を設定しています。

成人NPSの評価結果に基づくスコア化

成人NPSの評価結果に基づくスコア化についてイラスト図で説明しています。推奨栄養成分と推奨食素材のスコアを足し合わせ、そこから制限栄養成分のスコアを引いた値が、成人NPSの評点になります。点数が高いほど健康的です。Meiji NPSではこの値を0.5から5.0までの10段階でスコア化しています。 成人NPSの評価結果に基づくスコア化についてイラスト図で説明しています。推奨栄養成分と推奨食素材のスコアを足し合わせ、そこから制限栄養成分のスコアを引いた値が、成人NPSの評点になります。点数が高いほど健康的です。Meiji NPSではこの値を0.5から5.0までの10段階でスコア化しています。

サービングサイズあたりの栄養成分や食素材の量に基づいて点数をつけます。点数は、推奨栄養成分や推奨食素材の量が多いほど、制限栄養成分の量が少ないほど、高くなります。最後に栄養価値をより捉えやすくするために、0.5~5.0の10段階にスコア化することにしました。

なお、疫学研究の結果、成人NPSを用い評価した食事指数が良くなるほど、生活習慣病に関連する指標が低下することが示されており※5 、これは成人NPSでスコアの高い商品の選択が栄養価値の観点からは推奨されることを意味しています。

  • ※5YU, Tao et al. The relationship between the dietary index based Meiji nutritional profiling system for adults and lifestyle-related diseases: A predictive validity study from the National Institute for Longevity Sciences—Longitudinal Study of Aging. Frontiers in Nutrition, 2024, 11: 1413980.

高齢者NPSの栄養評価方法

高齢者NPSの特徴

高齢者NPSは、日本の高齢者における「フレイル」を考慮し、食品の栄養価値を科学的に評価するものです。※6 成人NPSを基に設計を行い、フレイルとの関連が低い「鉄」と「飽和脂肪酸」は推奨栄養成分・制限栄養成分から除外しました。また、フレイル対策への貢献が期待される「ビタミンD」を多く含む食品は、高い評価を得られるよう設計しています。

そして、高齢者NPSも同様にサービングサイズの栄養成分量に基づき評価を行い、その評価結果は0.5~5.0の10段階に分けられたスコアで示し、栄養価値を可視化します。スコアが高いほど、その食品の栄養価値が高いと判断できます。

  • ※6WAKAYAMA, Ryota et al. Development and Validation of the Meiji Nutritional Profiling System per Serving Size. Nutrients, 2024, 16.16: 2700.

フレイルのイラストです。 フレイルのイラストです。

評価に用いる栄養成分と食素材

高齢者NPSも成人NPSと同様に、評価に用いる栄養成分・食素材を以下の通り設定しました。これらは、公共機関、学術団体などが発行した公的なガイドライン・データを参考にデザインしています。

推奨栄養成分の説明イラストです。推奨栄養成分は、たんぱく質、カルシウム、食物繊維、ビタミンDの4成分を、不足しがちで摂取が推奨される栄養成分として設定しています。 推奨栄養成分の説明イラストです。推奨栄養成分は、たんぱく質、カルシウム、食物繊維、ビタミンDの4成分を、不足しがちで摂取が推奨される栄養成分として設定しています。
推奨食素材の説明イラストです。推奨食素材は、果実類、種実類、乳類、野菜類、豆類の5素材で、推奨栄養成分以外の有用な栄養成分を多く含む食素材を設定しています。 推奨食素材の説明イラストです。推奨食素材は、果実類、種実類、乳類、野菜類、豆類の5素材で、推奨栄養成分以外の有用な栄養成分を多く含む食素材を設定しています。
制限栄養成分の説明イラストです。制限栄養成分は、エネルギー、食塩相当量、糖類の3成分で、摂り過ぎる傾向にあり、摂取を控えたい栄養成分を設定しています。 制限栄養成分の説明イラストです。制限栄養成分は、エネルギー、食塩相当量、糖類の3成分で、摂り過ぎる傾向にあり、摂取を控えたい栄養成分を設定しています。

成人NPSで採用している「鉄(推奨栄養成分)」および「飽和脂肪酸(制限栄養成分)」は高齢者NPSでは除外しています。

高齢者NPSの評価結果に基づくスコア化

高齢者NPSの評価結果に基づくスコア化についてイラスト図で説明しています。推奨栄養成分と推奨食素材のスコアを足し合わせ、そこから制限栄養成分のスコアを引いた値が、成人NPSの評点になります。点数が高いほど健康的です。Meiji NPSではこの値を0.5から5.0までの10段階でスコア化しています。 高齢者NPSの評価結果に基づくスコア化についてイラスト図で説明しています。推奨栄養成分と推奨食素材のスコアを足し合わせ、そこから制限栄養成分のスコアを引いた値が、成人NPSの評点になります。点数が高いほど健康的です。Meiji NPSではこの値を0.5から5.0までの10段階でスコア化しています。

成人NPSと同様に、サービングサイズあたりの栄養成分、食素材量に基づき点数化します。点数は推奨される栄養成分や食素材の量が多いほど、制限栄養成分の量が少ないほど、高くなります。最後に栄養価値をより捉えやすくするために、0.5~5.0の10段階にスコア化することにしました。

食品の評価事例

評価対象食品

評価事例として、牛乳とチーズの評価事例を取り上げます。評価する際に用いた食品のデータを下表に示します。また、サービングサイズはそれぞれ、牛乳は200ml、チーズは20gとしました。このような特徴を持った牛乳、チーズのMeiji NPSによる評価結果を次に示します。

牛乳・チーズに関する算出情報

食品名 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年における分類 サービング
サイズ
食素材に関する備考
食品
番号
食品群名 / 食品名
牛乳 13003 乳類 / 〈牛乳及び乳製品〉(液状乳類)普通牛乳 200ml 生乳100%とした
チーズ 13040 乳類 / 〈牛乳及び乳製品〉(チーズ類)プロセスチーズ 20g 生乳85%とした
Meiji NPSによる評価結果
Meiji NPSによる牛乳の評価結果を紹介しています。成人、高齢者ともにスコア5.0の評価です。 Meiji NPSによる牛乳の評価結果を紹介しています。成人、高齢者ともにスコア5.0の評価です。
Meiji NPSによるチーズの評価結果を紹介しています。成人では3.5、高齢者では4.5です。スコアには1.0の違いがあります。 Meiji NPSによるチーズの評価結果を紹介しています。成人では3.5、高齢者では4.5です。スコアには1.0の違いがあります。

成人、高齢者ごとに抱える健康課題の違いがスコアに反映されます。

牛乳には推奨栄養成分のたんぱく質、カルシウムが豊富に含まれ、成人、高齢者の両方でスコアが同じ5.0となります。そのため牛乳は、成人の生活習慣病対策、そして高齢者のフレイル対策の双方へ貢献が期待できる食品です。

チーズにはたんぱく質、カルシウム、ビタミンDが含まれていますが、制限栄養成分である食塩や飽和脂肪酸が含まれているため、成人NPSは3.5、高齢者NPSでは4.5となります。チーズの製造工程には水分を取り除く工程が含まれており、牛乳に含まれる栄養がチーズには凝縮されています。そのため、たんぱく質・カルシウム・ビタミンDなどのフレイル対策への貢献が期待される栄養成分を豊富に含むため、食が細くなりがちな高齢者に適した食品と考えられます。

成人NPSは成人の健康課題である「生活習慣病」と「若年女性のやせ」、高齢者NPSは高齢者の健康課題である「フレイル」を考慮しています。成人NPSと高齢者NPSという2種類の異なる“尺度”で評価をしているため、牛乳のように成人NPSと高齢者NPSで同じスコアとなる食品もあれば、チーズのように異なるスコアとなる食品もあります。

対象者に応じた適切な栄養価値の評価手法を用いることで、幅広いライフステージや健康課題に寄り添い、栄養に関する課題解決に貢献していきます。